日本大百科全書(ニッポニカ) 「カワトンボ」の意味・わかりやすい解説
カワトンボ
かわとんぼ / 川蜻蛉
[学] Mnais pruinosa
昆虫綱トンボ目カワトンボ科に属する昆虫。体長約50ミリメートル、後翅(こうし)長40ミリメートル。体は雌雄とも金属光沢のある緑色で、胸側にわずかに黄条が入る。北海道、本州、四国、九州および隠岐(おき)諸島に産する。日本特産種で次の3亜種に分けられる。ニシカワトンボは、本州中部から九州の南端部まで分布するが、雌のはねはつねに透明であるのに対し、雄では透明翅型のほかに橙黄(とうこう)色翅型があり、大分県以南では黒褐色翅型にかわる。ヒガシカワトンボは、北海道から本州中部まで分布し、雌雄とも胸部の後腹板前半には1対の黄点がみられる。この亜種の雄では透明翅型と橙黄色翅型があり、後者でははねの前縁の不透明条が広いものや狭いものなどいろいろな個体がある。オオカワトンボは、前記の2亜種より大形で、分布がニシカワトンボとほぼ重なるが、雄には透明翅型、濃橙赤色翅型、淡橙色翅型があり、雌にも透明翅型と淡橙色翅型がある。また、胸部後腹板は、初め黄紋を有するが成熟した雄では全体黒色となる。
カワトンボ類は、全体に成熟雄は体に白粉を帯びる。また、いずれも春季早くから流水のあたりに出現し、夏季には山間部のものだけが残る。幼虫は清い流水に育つが、1世代3年くらいを要する。本属の種はさらに東南アジアの大陸部に3種2亜種を認める。
[朝比奈正二郎]