ガリア戦記(読み)ガリアせんき(英語表記)De Bello Gallico

精選版 日本国語大辞典 「ガリア戦記」の意味・読み・例文・類語

ガリアせんき【ガリア戦記】

(原題Commentarii de bello Gallico) 歴史書カエサル著。紀元前五二~五一年ごろ成立。全八巻中の最後の巻だけが部下ヒルティウスの手になる。前五八~五二年にわたる対ガリア戦の経過詳述。貴重な歴史文献で、また古来ラテン文の模範ともされた。

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デジタル大辞泉 「ガリア戦記」の意味・読み・例文・類語

ガリアせんき【ガリア戦記】

《原題、〈ラテン〉Bellum Gallicum》歴史書。カエサル著。前58~前52年のガリア征服戦の経過を詳述。当時のガリアとゲルマニアを知る上の貴重な資料。全8巻で、最後の1巻は部下のヒルティウスの手になる。古来ラテン語の文章の模範とされる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガリア戦記」の意味・わかりやすい解説

ガリア戦記
がりあせんき
De Bello Gallico

ローマの政治家カエサルの作品。紀元前58年から前50年までの、地方長官としてカエサルが遂行したガリア戦争記録。全8巻。カエサル自身の筆は第1巻~第7巻(ウェルキンゲトリクスを破る前52年のアレシア決戦まで)であり、第8巻は彼の部将ヒルティウスの手になる。ガリアでの戦いを客観的で冷静な筆で描くことによりローマの戦争の正当性を示し、政治家、将軍としての自らの立場、功業を明らかにしたもの。前1世紀のガリア人社会を知るための史料として重要。第一級の歴史書であるとともにラテン文学傑作

[長谷川博隆]

『近山金次訳『ガリア戦記』(岩波文庫)』『国原吉之助訳『カエサル文集』(1981・筑摩書房)』

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百科事典マイペディア 「ガリア戦記」の意味・わかりやすい解説

ガリア戦記【ガリアせんき】

カエサル著作。前58年―前51年に彼がガリアで行った遠征の記録。全8巻。ただし第8巻はその部将ヒルティウスの作。タキトゥスの《ゲルマニア》とともに古代ゲルマン研究の最重要史料。簡潔な文体で,すぐれた文学作品としても評価されている。
→関連項目ドルイド教

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世界大百科事典 第2版 「ガリア戦記」の意味・わかりやすい解説

ガリアせんき【ガリア戦記 De bello Gallico】

前58年から前51年にかけてカエサルがガリア(ほぼ今のフランス,ベルギー)で行った遠征の記録。全8巻。うち第7巻まではカエサル自身の著作で,第8巻は彼の死後部下のヒルティウスが書き加えた。7巻までは1年ごとに1巻をあて,8巻は2年分である。年々ローマ元老院に送った報告書に手を加えてまとめたもの。いつごろ発刊用に仕上げられたかについて諸説があるが,前52年の冬から前51年の春にかけて書かれたとする説が有力である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガリア戦記」の意味・わかりやすい解説

ガリア戦記
ガリアせんき
Commentarii de Bello Gallico

ローマの政治家ガイウス・ユリウス・カエサルの記録文学,歴史書。8巻。前 58~52年のガリア総督としての軍事活動の覚え書。前 52年末から一冬で書き,前 51年刊。後世の歴史家に資料を提供する目的で,自分に対する種々の非難に対する弁明も兼ねて,簡潔明晰,客観的に記述。内容はヘルウェチア人 (スイス人) のガリアへの移動の阻止に始り,ゲルマン人の侵入の撃退,ガリアの反乱の制圧,2度にわたるブリタニア遠征など。なお第8巻は副官ヒルチウスによるそれ以後のカエサルのガリアでの行動の記録。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ガリア戦記」の解説

『ガリア戦記』(ガリアせんき)
Commentarii de Bello Gallico

カエサルの著作。ガリア遠征記で全8巻からなる。前58~前51年にガリアを征服したカエサルが,主にガリア人に対する戦争の経過を記したもの。第8巻(51年と50年の記述)はその部将ヒルティウスの手になる。ゲルマン人についての記述をも含み,ガリアの事情やゲルマン社会を知るための貴重な史料である。簡潔な文体で知られる。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ガリア戦記」の解説

ガリア戦記
ガリアせんき
Commentarii de Bello Gallico

古代ローマの政治家カエサルのガリア地方遠征の記録
全8巻。前58年より毎年1巻ずつでき上がり,7巻と8巻は部下のヒルティウスの作とされる。簡潔雄渾 (ゆうこん) な名文として名高く,史的信憑 (しんぴよう) 性も高いため,タキトゥスの『ゲルマニア』と並んで,ガリア・ゲルマニア・ブリタニアなどの原始社会に関する重要な文献となっている。

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世界大百科事典内のガリア戦記の言及

【カエサル】より

…しかし,権力・栄誉を一身に集中したため,共和政護持派のブルトゥス,カッシウスらに前44年3月15日,元老院議場で暗殺された。 雄弁家・文人としても第一級の人物であったが,演説の草稿,書簡,パンフレットは散逸し,現存するのは,簡潔な文体,的確な現実把握の点でラテン文学の傑作といわれる《ガリア戦記》《内乱記》のみである。
[評価]
 常に運命の女神と共にあることを確信したばかりか,世人に〈運命の寵児〉とみなされた一方,政敵を心から受けいれてゆく仁慈の人としても知られる。…

【ゲルマニア】より

…執筆の時期は《アグリコラ伝》と同じころ(98年)である。《ゲルマニア》は,ライン川の西,ドナウ川の北に居住していたゲルマン諸部族のようすを語る民族学の書であり,カエサルの《ガリア戦記》とともに,当時の状況を伝える重要な史料の一つである。著者自身が認めているごとく,本書はポシドニウス,カエサル,リウィウスらの記述に基づいており,タキトゥス自身はゲルマニアを訪れたことがなかったと思われる。…

【ヒルティウス】より

…カエサルの部下で前54年ころからガリア遠征中のカエサルと行動をともにし,下士官もしくは秘書長として彼に仕えた。カエサルの《ガリア戦記》のうち最後の第8巻はヒルティウスの筆になるもので,おもにこのことによって後世に名を残した。内乱勃発後もカエサルとともにスペインやギリシアに赴いた。…

【ラテン文学】より

… この時代には歴史記述も盛んに行われた。カエサルの《ガリア戦記》と《内乱記》は,覚書の形式による自己の政治活動の記録であり,宣伝と弁明を兼ねている。サルスティウスの《ユグルタ戦記》と《カティリナの陰謀》および《歴史》は,ローマ人の道徳的堕落にローマ国家崩壊の原因を求める,きわめてローマ的な史観に貫かれている。…

※「ガリア戦記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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