翻訳|goose
カモ目カモ科のうちのガン類Anserinaeの総称。カリともいう。ガン類は一般にハクチョウ類とカモ類の中間の大きさの鳥で,カモ科の中では最も陸上生活に適応している。マガン,ヒシクイ,ハイイロガン,シジュウカラガン,カササギガン,ロウバシガン,コバシガンなどの仲間があり,世界中に広く分布はしているが,アフリカとオーストラリアには種類は少ない。カモ類と異なって,多くのものは雌雄同色であるが,コバシガン類の中には雌雄異色のものがある。体は重たげで,ハクチョウ類よりもくびは短い。くちばしは三角形をしている。上くちばしの縁は鋸歯状になっており,草を引きちぎって食べるのに適している。翼は長く幅が広い。尾は短い。脚はじょうぶで,あしゆびに水かきがある。しかし,泳ぐことは比較的少ない。地上では体を水平にし,くびを立てて歩く。水上では体の前方をやや沈め,尾を上げた形で泳ぐ。しかし,カササギガンやロウバシガンなどは完全な地上生である。食べ物は水草や草の葉,実,根,穀類などである。
ガン類は一度つがいになると一夫一婦を守りとおし,一生離れることはない。巣は沼地や湿地,草原などにいろいろな草などを積んでつくるが,巣の内側には綿毛を敷いて,卵を保護する。雛は生まれたときにはすでに綿毛に包まれていて,短時間のうちに歩行や遊泳が可能である。孵化(ふか)後50~60日もたてば,自力で生活することができるが,次の年の春に繁殖地へ再び戻るころまで親とともに過ごす。群れで過ごすことも多いが,家族単位の結合も強い。外敵を寄せつけず,群れで物を食べているときも,見張役がいるほどである。渡りのときはおもに夜間に飛ぶ。
執筆者:柳沢 紀夫
雁は候鳥(こうちよう)で,秋には南に渡り春には北に帰るところから,中国では遠隔の地の消息を伝える通信の使者と考えられ,雁信,雁書の説が生まれた。仏の前生話にも雁が出る。《大方便仏報恩経》悪友品によれば,善友と悪友との兄弟が如意珠を求めて海外に赴く。弟の悪友は珠を奪い,兄善友の目を刺して帰国する。母夫人が白雁に手紙を結びつけて放す。兄これを得て返書を雁に託する。ついに兄を迎えて帰った。そのときの悪友は提婆達多(だいばたつた)で善友は仏であったという。中国で有名なのは漢の蘇武(そぶ)が匈奴(きようど)に抑留され,雁に書信を託する。この雁が上林苑で射落とされ,蘇武の消息が知れたという。同様の故事は,元の世祖の外交官の郝経(かくけい)が宋に抑留されたとき雁に帛書(はくしよ)を結んで北に飛ばせたということが《元史》に見える。旅人が雁の姿を見て望郷の思いをつのらせたのも,これらの話による。アシの茎をくわえて,いぐるみ(いとゆみともいい,矢に糸や網をつけて射放し,鳥などにからませてとらえる狩猟具)から身を守るという銜蘆(がんろ)伝説もあった。雁が海を渡るときアシを投げ捨ててその上に休むという伝承は,これに由来する。また雁の別種に鴇(とき)(野雁)があり,雌ばかりで雄がなく,無差別に他の鳥と交わるといわれるところから,娼婦,またはその斡旋をする婦女の異名とされた。
執筆者:沢田 瑞穂+植木 久行 日本では雁は中国古典の影響などから,知識層の間では季節感を強め哀れを催させる渡り鳥と見られたが,農民は水田を荒らす害鳥の一つとみなした。近世初期の《浮世物語》ではそのようすをやや誇張して記している。このような民衆の雁についての高い関心と,一方でその肉が美味なことから,灰の呪力によって多くの雁をとらえる〈雁取爺〉の昔話は,類似の〈花咲爺〉などより農村ではよく知られていた。もちろん渡来の季節と雁行(がんこう)する渡りの習性により,農民にとっても自然暦の一指標であった。その去来の時期がちょうど春秋の彼岸ころにあたるため,故郷は常世(とこよ)の国,すなわち死者の生活する土地に比定された。奥州津軽の外ヶ浜には渡来する雁がくわえてきた浮木が,春に帰る季節にはとらえられた雁の数だけ残り,浜人はこれを薪として雁の供養のため施湯を行うという〈雁風呂〉の話が,《採薬使記》その他に伝えられる。この話は事実としてよりむしろ宗教的創作とみるのが妥当であろう。
執筆者:佐々木 清光
イギリスの詩人。ケント州に生まれ,ケンブリッジ大学およびアメリカのスタンフォード大学に学ぶ。カリフォルニア大学で教えたこともあり,現在はサンフランシスコに住む。P.ラーキン,K.エーミス,J.ウェイン,D.J.エンライトなど,〈ザ・ムーブメント〉と総称されることもある1950年代詩人の一人にかぞえられる。しかし,聡明な良識と抑制を特徴とする他の詩人たちの中にあって,ガンは異色である。《戦闘用語》(1954),《運動感覚》(1957),《悲しき隊長》(1961),《モリー》(1971),《マンドラゴラ》(1974)などの詩集で,彼は暴力や不良少年といった主題を,芝居がかった文体で歌うことを恐れない。しかし彼の想像力の振幅は大きく,感傷性に堕さないやさしさや知的な複雑さも彼は示すことができる。《接触》(1967)に収められた〈人間嫌い〉の連作は,原爆後の最後の生き残りの男の姿を淡々と描いた秀作である。
執筆者:高橋 康也
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出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…ベルギー北西部,東フランドル州の州都。ワロン語(フランス語)ではガンGand,英語ではゲントGhent。人口25万2000(1980)。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
日本の上代芸能の一つ。宮廷で舞われる女舞。大歌 (おおうた) の一つの五節歌曲を伴奏に舞われる。天武天皇が神女の歌舞をみて作ったと伝えられるが,元来は農耕に関係する田舞に発するといわれる。五節の意味は...
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