キクイモ(読み)きくいも

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キクイモ」の意味・わかりやすい解説

キクイモ
きくいも / 菊芋
[学] Helianthus tuberosus L.

キク科(APG分類:キク科)の多年草。北アメリカ原産で、日本には江戸時代末に渡来した。茎は高さ2.5~3メートル、太さ3センチメートル。葉は楕円(だえん)形、先はとがり、長さ20~30センチメートル、茎下部の葉は対生し、上部では互生する。茎や葉の表面に粗い毛がある。秋、茎の上部がよく分枝して多数の頭状花をつける。花は径4~8センチメートル、中央に黄褐色の管状花が集まり、黄色の舌状花がそれを囲む。地下に、ショウガに似た形の塊茎が多数でき、これを食用とする。また、植物全体を家畜飼料にする。第二次世界大戦中および戦後、救荒作物として注目されたが、現在ではほとんど栽培されず、荒れ地などに野生化している。

[星川清親 2022年2月18日]

食品

塊茎の可食部の8割は水分で、糖質は15%、その半分以上は難消化性のイヌリンで、ほかブドウ糖とショ糖である。煮たり、サラダとしてなまのまま食べるが、特有の臭気があって風味は劣り、一般には好まれない。酢漬け、みそ漬け、粕(かす)漬けなどにする。イヌリンはほかのデンプンより酸糖化が容易なので、飴(あめ)、アルコール原料アセトンブタノール発酵の原料にもされる。

[星川清親 2022年2月18日]


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世界大百科事典 第2版 「キクイモ」の意味・わかりやすい解説

キクイモ【Jerusalem artichoke】

北アメリカ原産のキク科の多年草(イラスト)。地下茎がふくらんでできた塊茎が家畜の飼料とされる。また,イヌリンを多く含んでいるのは有名で,果糖,アルコール発酵,あめなどの原料になり,戦前に食用として日本に輸入されたものである。最近ではあまり栽培されていないが,かつては栽培を奨励されたこともあった。いもにたくさん芽があり,繁殖力が盛んで,野生化していることも多く,一度畑に植えると絶えさせることが困難なくらいである。

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百科事典マイペディア 「キクイモ」の意味・わかりやすい解説

キクイモ

北米原産のキク科の多年草。肥大した塊茎がイヌリンを含むため,果糖,アルコール製造の原料,家畜の飼料としてかつて栽培が奨励された。高さ1〜2m。葉は長卵形で茎の下部では対生,上部では互生し,あらい毛があってざらつく。9〜11月,舌状花と筒状花からなる径6〜8cmほどの黄色の頭花を開く。繁殖力が強く,いったん植えると絶やすことがむずかしく,現在は各地に帰化している。

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栄養・生化学辞典 「キクイモ」の解説

キクイモ

 [Helianthus tuberosus].キク目キク科ヒマワリ属の植物の塊茎で,食用にする.主成分はイヌリンというD-フルクトースを主成分とする多糖.

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