日本大百科全書(ニッポニカ) 「キバチ」の意味・わかりやすい解説
キバチ
きばち / 樹蜂
独脚蜂
horntails
woodwasps
昆虫綱膜翅(まくし)目広腰亜目キバチ科Siricidaeの昆虫の総称。世界に約90種、日本には7属13種が知られている。クビナガキバチ科とともにキバチ上科Siricoideaを形成し、キバチ亜科Siricinaeとヒラアシキバチ亜科Tremecinaeに分けられる。
大きさは栄養条件によって変化するが、大形種が大部分で、体長2センチメートル以上である。体形は円筒形で、腹端の節はとがっていて、雌では針状の長い産卵管をもつ。枯れ木や衰弱木に産卵し、幼虫は材中に穿孔(せんこう)して生活するので、樹木の害虫である。産卵時に腹腔(ふくこう)内にある袋に蓄えた木材腐朽菌の胞子を材に植え付けるので、樹木の損傷が激しい。幼虫はこの菌によって腐った材を食うと思われるが、真の食性は確かめられていない。普通は1世代1年かかるが、ときには2~3年かかることもある。
幼虫の食性は、キバチ亜科では針葉樹、ヒラアシキバチ亜科では広葉樹である。日本で被害のもっとも大きいものはマツ類に穿孔するニトベキバチであるが、いわゆる松くい虫の被害の陰に隠れて、その実態はよくわからない。オーストラリア、ニュージーランドでは、侵入種ノクチリオキバチが、日本の松くい虫のように、ラジアタマツに大きな被害を与えている。近年、日本でも外国から材木の輸入が増大し、外来のキバチ類が発見されることが多くなっており、ときには屋内でみつかることもある。また、山林の労務者が減少してスギやヒノキの植林地の手入れが不十分なため、ニホンキバチやオナガキバチが増え、磨き丸太などに被害が増えている。
[奥谷禎一]