キョウナ(読み)きょうな

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キョウナ」の意味・わかりやすい解説

キョウナ
きょうな / 京菜
[学] Brassica rapa L. var. nipposinica (L.H.Bailey) Kitam.
Brassica rapa L. var. laciniifolia Kitam.

アブラナ科(APG分類:アブラナ科)の越年草。関西ではミズナとよばれ、京都付近では古くから栽培されている。『雍州府志(ようしゅうふし)』(1684)や『本朝食鑑』(1697)に記録があり、畦(あぜ)間に流水を引き入れて栽培することから水菜、水入菜とよばれたことが記されている。カブの1変種であるが、根は肥大しない。葉に切れ込みがあり、群生して1株に600~1000枚の根出葉をつけ、大きい株は周囲1メートル以上になる。このため、千本菜、千筋菜(せんすじな)ともよばれる。春に花茎を出し、黄色の十字花を総状花序につける。種皮の顕微鏡的構造が、ほかの漬菜類と異なっており、日本特有の野菜と考えられる。品種は2群に大別され、キョウナとよばれるのは関東のもので、葉の切れ込みが浅く、ミズナとよばれるのは関西のもので、葉の切れ込みが深くて長い。京都市の壬生(みぶ)地方に、キョウナの変種で葉に切れ込みのないミブナが栽培されている。関東地方以北では9月に、暖地では10月に種子を播(ま)き、3か月目から収穫を始める。地際から切り取り、株が汚れないように畑に逆さに伏せておく独特の収穫風景で知られる。

[星川清親 2020年11月13日]

食品

キョウナはその90%以上が水分であるが、100グラム中にビタミンC42ミリグラム、カロチン1300マイクログラム、カルシウム150ミリグラムを含む。塩で軽くもみ、さっと熱湯をかけてから、冬季当座漬けにする。汁の実、ひたし物、肉や油揚げなどと煮物にするほか、サラダやからし和(あ)えなど和え物にもよい。カキカモなどによくあい、冬の鍋物(なべもの)の青みとして賞味される。調理には煮すぎ、漬けすぎは禁物で、歯切れのよさと美しい緑をたいせつにする。1月から3月までが旬(しゅん)である。

[星川清親 2020年11月13日]


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食の医学館 「キョウナ」の解説

キョウナ

《栄養と働き&調理のポイント》


 キョウナはアブラナ科の葉菜で、京都では「ミズナ」と呼ばれています。
 平安・室町時代から京都周辺で栽培されている、わが国独自に育った野菜です。市場では1年中出回っていますが、9~10月に種まきをし、3か月目から収穫される冬野菜です。「ミブナ」もキョウナの一種で、京都壬生(みぶ)が原産地の葉菜です。
○栄養成分としての働き
 栄養的にみると、カルシウム、ビタミンCが豊富で、100g中に含まれるカルシウムは210mgとホウレンソウの約4倍、Cは約1.5倍です。
 食物繊維も多く、大腸がん予防や便秘(べんぴ)の改善に効果があります。
 関西では冬の名物料理「はりはり鍋(なべ)」にキョウナを用います。「はりはり鍋」はかつては鯨肉を煮込んだ鍋料理ですが、キョウナが鯨肉の臭みを消し、肉本来のうまみを引き出す役割をしていたのです。
 現在でも鍋料理や煮込み料理に使われることが多いようです。
 煮込みすぎると歯触りが悪くなり、ビタミンCも減少するので、鍋料理には最後に入れて、さっと煮る程度にしましょう。
 また、葉がやわらかいので、短く切ってサラダにしても、揚げたゆばや焼いた油揚げと合わせてもおいしい和風サラダになります。

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百科事典マイペディア 「キョウナ」の意味・わかりやすい解説

キョウナ

ミズナ

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栄養・生化学辞典 「キョウナ」の解説

キョウナ

 →ミズナ

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