デジタル大辞泉 「きり」の意味・読み・例文・類語
きり[副助]
1 動作や事物に付いて、その範囲を限定する意を表す。
㋐だけ。かぎり。「ひとり
㋑ずっと…している。…のままだ。「閉めっ
2 (主に否定の表現と呼応して)これ以上動作が行われないという限度・限界を表す。…を最後として。「先月会った
3 (主に否定の表現と呼応して)特定の事物以外のものは存在しないという意を表す。しか。だけしか。「選手は一〇人
③については、和語の「きり(切)」からという説も有力であるが、一般に外来語意識があってカタカナで書く。
高さ10~15m,直径40~50cmになるゴマノハグサ科の落葉樹で,生長が速い。樹皮は灰白色で平滑。葉は長さ15~35cmの長い葉柄があって対生し,葉身は基部が心形をした直径20~45cmの広卵形で,全縁または3~5浅裂する。全面に軟毛を密生する。5月ごろ,枝端に生じた大型の円錐花序に多数の両性花を咲かせる。花冠は長さ5~6cmの筒状鐘形で,淡紫色。おしべ4本。果実は革質の蒴果(さくか)で,長さ3~4cmの広卵形,熟すと2裂して多数の小さい種子を出す。中国原産で,古く朝鮮を経て日本に渡来したと考えられるが,本州や九州の一部にも自生状態の群落がみられ,はっきりしたことは不明である。各地で栽培されるが,主産地は福島,岩手,新潟,山形,茨城,栃木など東北,関東の諸県で,四国,九州などの暖地ではてんぐ巣病のためまとまった植栽がされない。福島県の会津桐,岩手県の南部桐がとくに有名である。キリ材は散孔材的な傾向をもつ環孔材で,くすんだ白色から淡褐灰色を示す。気乾比重約0.3で,国産材の中では最も軽軟であり,加工しやすく,狂いや割れがなく,仕上がりは光沢があって美しい。吸湿,吸水性がひじょうに低いため湿気を通さず,また軽軟なわりにはもろくない。このようなすぐれた特性のため,たんすをはじめ種々の和家具,建具,天井板,細工物,彫刻,琴,下駄など用途が広く,炭は絵画用,眉墨,黒色火薬に用いられる。キリ属は約10種からなり,中国のほか台湾に2種がある。しかし種類間に明確な特徴が少なく,分類のむずかしい属である。このうちココノエギリP.fortunei Hemsl.,タイワンギリP.kawakamii Itoは,日本でも栽培されることがあるが,材質はやや劣っている。キリは19世紀中ごろ北アメリカへ移入された。また最近は南アメリカでも日本人移民によって栽培されている。1982年,日本のキリ材年間需要は約15万m3であるが,国内生産量は1960年ごろから急速に減少し,現在は約90%を中国,台湾,北アメリカ,南アメリカから輸入している。分類学上キリはノウゼンカズラ科に入れられることもある。
執筆者:緒方 健
桐は中国で鳳凰(ほうおう)の住む木としてたっとばれてきた。日本でもこの思想から天皇の袍(ほう)の模様に桐竹鳳凰をつけ,その他の調度や器物の模様にもこの模様が多く用いられた。紋章としての桐文はこうした文様が固定したものと思われ,皇室では菊花とならんで桐も紋章として用いられていた。足利氏,豊臣氏の桐の紋も皇室から与えられたといわれ,これがさらにその一族または家臣の間にひろがったので,武家のあいだにこの紋を用いる家は多い。紋の種類は三つ葉に五七または五三の花をつけた大内桐,嵯峨桐,鬼桐などのほか,これを円形に扱った割桐や桐車,桐丸の類から,桐菱(きりびし),桐蝶(きりちよう),蝙蝠(こうもり)桐などのような変わったものまで,130~140種におよんでいる。
→紋章
執筆者:山辺 知行
(1)能の用語。謡事の一種。七五調韻文体の7~11句から成る,中音域を主とした旋律のすくない楽曲。初句と終句は繰り返されるのが普通。謡のリズムは地拍子の法則に合う。能1曲の結語として最終末に置かれ,作者の総括的な感想やシテの後日談などを内容とする。なお,1曲の最終末部分をすべてキリと呼ぶ場合があるが,この広義のキリには,〈哥(うた)・中ノリ地・ノリ地〉などさまざまな謡事が含まれる。
執筆者:松本 雍(2)義太夫節の用語。義太夫節では,時代物の場合5段,世話物の場合3巻で構成される。これは能の5段組織,あるいは序・破・急の原理によるものとされる。そして,時代物,世話物を問わずに各段・各巻が〈口(くち)〉〈中(なか)〉〈切(きり)〉の3部分に分けられる。切は3部分(場(ば))に分けられた最後の部分にあたり,切場(きりば)ともいう。口,中はこれに対して端場(はば)と呼ばれる。序・破・急の原理から,5段組織の時代物では第3段(あるいは第4段)がもっとも山場となり,さらにその切場は全体の中で非常に重要なききどころといえる。したがって,3段目の切を語る太夫は最高の位の演奏家であり,一般に〈紋下(もんした)〉あるいは〈櫓下(やぐらした)〉と呼ばれる太夫がこれをうけもつ。義太夫節では長唄や他の浄瑠璃と違って,太夫1人に三味線奏者1人(相三味線(あいじやみせん))を原則とするため,1段を1人で語ることは困難であり,口・中・切と3人で分担している。切は各段のしめくくりであり,特に3段目の切(三の切)はもっとも悲劇的な個所となる。
執筆者:加納 マリ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ゴマノハグサ科(APG分類:キリ科)の落葉高木。高さ8~15メートルになる。樹皮は灰白色で皮目が多い。葉は長い柄があって対生し、広卵形、長さ20~30センチメートル、先はとがり、全縁または浅く3~5裂し、全面に粘毛を密生する。つぼみは前年にでき、5月ころ枝先の円錐(えんすい)花序に淡紫色の花を開く。花冠は筒状鐘形、長さ5~6センチメートルで、先は唇形に5裂する。外面は長い軟毛を密生し、筒内に紫点の縦条(たてすじ)が15内外ある。萼(がく)は質厚で、5中裂し、裂片は先は鈍くとがり、褐色の絨毛(じゅうもう)を密生する。雄しべは4本でうち2本は長く、雌しべは1本。果実は蒴果(さくか)で、卵形、長さ3~4センチメートルで先がとがる。10、11月に熟して2裂し、種子は扁平(へんぺい)で多数あり、膜質の翼がある。九州の宮崎および大分県、隠岐(おき)諸島、欝陵(うつりょう)島などに野生状のものが知られている。原生地はまだ明らかでないが、中国中部原産と考えられる。北海道から九州まで広く栽培されている。
一般に根伏せで殖やし、苗を定植した翌春に根元から幹を切り(台切りという)、切り株から出る新条を1本育てるとよく成長する。福島、岩手、新潟、茨城などの各県が主産地で、福島県の会津桐、岩手県の南部桐など良質のキリ材が出る。岩手県ではキリの花を県の花にしている。キリ材は日本産の材ではもっとも軽く、割れにくく、狂いが少なく、湿気を通しにくく、火に強くて燃えにくく、木目、材色が優れている。家具、器具、小箱材などに用い、1955年(昭和30)以前は下駄(げた)に多く使われたが、現在はたんす類に多く使われる。このほか、琴、胴丸火鉢、漁網用浮き、桐炭(きりずみ)(研摩用、懐炉灰、火薬の原料)、日本人形のねりしん、名札などにする桐紙などがある。
このほか、材をキリと同様に用いるタイワンウスバギリP. × taiwanensis Hu et ChangはココノエギリP. fortunei (Seem.) Hemsl.とタイワンギリP. Kawakamii Itoの中間種で、1935年(昭和10)ごろ導入され、タイワンギリ、ココノエギリなどと誤称して植栽してきたもので、成長は速いが、材質はやや劣る。キリ属は中国中・南部、インドシナ半島北部に分布し、6種知られる。
[小林義雄 2021年10月20日]
APG分類ではキリの仲間はキリ科Paulowniaceaeとして独立した科となった。この分類によるとアジアに3属20種があり、日本には中国原産のキリがみられる。
[編集部 2021年10月20日]
中国では、アブラギリやアオギリなど科の異なる葉の広い高木も桐の名で総称されたため、古書には混乱が多い。『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』(500ころ)には4種の名があがる。『斉民要術(せいみんようじゅつ)』によると、6世紀には栽培下にあって楽器が製造された。『万葉集』には、729年(天平1)に大伴旅人(おおとものたびと)が藤原房前(ふささき)に対馬(つしま)産の梧桐(ごとう)でつくらせた日本琴を贈ったとあるが、この梧桐にはキリとアオギリの2説がある。平安時代には庭で栽培されていたことが『枕草子(まくらのそうし)』や『源氏物語』からうかがえる。
[湯浅浩史 2021年10月20日]
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…日本古典音楽の種目。竹本義太夫が創始した浄瑠璃の流派。人形芝居の音楽として17世紀後半に成立し,幕末期以後は文楽人形浄瑠璃の音楽として,ひろく親しまれてきた。また,素浄瑠璃として,音楽だけを演奏する場合もある。ふつう浄瑠璃を語る太夫1人,三味線1人で演奏するが,掛合といって大勢で演じたり,箏,胡弓,八雲琴や,ツレ弾きの三味線が加わる曲もある。
[歴史]
1684年(貞享1),竹本義太夫(筑後掾)が大坂道頓堀に竹本座を創設して,独立興行に踏み出したときにはじまる。…
※「きり」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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