N-(N-γ-L-glutamyl-L-cysteinyl)glycine.C10H17N3O6S(307.33).生物の細胞内に広く分布している.トリペプチドの一つ.酵母からカドミウム,水銀,銅の複合体として単離される.融点195 ℃(分解).-21.3°(水).システインのSH基により2分子が結合してSS基を形成する.SH基の形のものを還元型グルタチオン(GSH),SS基の形のものを酸化型グルタチオン(GSSG)とよぶ.GSSGは,融点182~185 ℃.-111.0°(水).生体のなかではGSHとGSSGは可逆的に相互に変化し,細胞中の酸化還元電位を調節する役割を果たしている.グリオキシラーゼの補酵素としてはたらいており,このほか多数の酵素がグルタチオンの添加により賦活される.GSHはグルタチオンレダクターゼの存在下,デヒドロアスコルビン酸により酸化され,微量の金属の存在で空気酸化される.GSSGはグルタチオンレダクターゼの存在下,NADまたはNADPにより還元される.生体内では,グルタミン酸,システイン,グリシン,ATPからグルタチオン合成酵素(γ-L-glutamyl-L-cysteinyl-glycine ligase)のはたらきで生合成される.[CAS 70-18-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
生体内から取り出された最初の結晶性ペプチドで、動植物および微生物中に存在する主要な低分子チオール化合物。酵母、肝臓、筋肉などに多く含まれ、自然界に広く、かつ比較的大量に分布している。化学式はC10H17N3O6Sで、1921年にイギリスの生化学者ホプキンズによって酵母から単離され、グルタミン酸と硫黄(いおう)を含むところから命名された。さらに1929年ケンドルらによってグリシンなど3種のアミノ酸を含むトリペプチド、すなわちγ(ガンマ)-L-グルタミル-L-システイニル-グリシンであることが決定された。生体内では大部分が還元型で、酸化型はきわめて少ないが、酸化還元の機能に関係している。また、酵素グリオキサラーゼの補酵素として働き、カテプシンなどのSHタンパク分解酵素のSH基を保護するために役だつほか、グルタチオン抱合による解毒作用もある。
[降旗千恵]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…アミノ酸残基の数によってジペプチド(2),トリペプチド(3),テトラペプチド(4)などと呼ばれるが,数個以上をもつものは通常ポリペプチドと総称され,さらに50以上のアミノ酸残基から成るポリペプチドはタンパク質に分類する。哺乳類の組織に最も多いペプチドはグルタチオンglutathioneで三つのアミノ酸残基から成る重要な補酵素である。ペプチドホルモンも多数知られている。…
※「グルタチオン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
7/22 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新