グンバイムシ(その他表記)lacebug

改訂新版 世界大百科事典 「グンバイムシ」の意味・わかりやすい解説

グンバイムシ (軍配虫)
lacebug

半翅目異翅亜目グンバイムシ科Tingidaeの昆虫の総称。小型の扁平な陸生カメムシで,大部分の種は体長2.5~4.5mm,最大のものでも8mmに満たない。頭部は小さく,単眼を欠く。触角は4節で,第3節が最長。前胸背および前翅は細かな網目状となる。英名はこの特徴による。通常,前胸背には前方中央に帽状部,側縁に翼突起,後半に3本の縦隆起を備える。前翅は透明あるいは不透明な膜質で,革質部を欠き,水平にたたまれる。翅をたたんだ形が一見軍配に似るのでこの名がある。世界に約2000種,日本に約70種が知られる。すべて食植性で,農林業上の害虫とされるものも多い。幼虫は小さく,軟弱で,一般に体中に多数の棘状(きよくじよう)突起を備える。通常,寄主植物の葉裏群生し,葉の組織内に口吻こうふん)を差し込んで吸汁する。吸汁された部分は葉緑素を失い,白い斑点となる。幼虫は不完全変態を行い,5齢期を経て成虫となる。成虫も一般に葉裏で生活し,吸汁するが,群集性は幼虫時ほど強くない。日本では一般に成虫で越冬し,越冬後の成虫は春から活動を始め,寄主植物に産卵する。幼虫は夏の間成長を続け,秋になって新成虫の羽化するものが多い。汁液を吸収する際に,ウイルスなどの植物病原体を媒介するものもある。

 日本産の種としては,ナシ,リンゴ,サクラなどに寄生・加害するナシグンバイStephanitis nashiツツジ類につくツツジグンバイS.pyrioidesアセビカキなどに寄生するトサカグンバイS.takeyai,キク類を食害するキクグンバイGaleatus spinifronsなどが著名である。このうち,ツツジグンバイおよびトサカグンバイは苗木とともに北アメリカなどに侵入したことが知られている。著名な天敵に,メクラカメムシ科のグンバイメクラガメStethoconus japonicusがある。この種は形がグンバイムシによく似ており,その群れに紛れ込んでこれを捕食する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「グンバイムシ」の意味・わかりやすい解説

グンバイムシ
ぐんばいむし / 軍配虫
lace bugs

昆虫綱半翅(はんし)目異翅亜目グンバイムシ科Tingidaeの昆虫の総称。同じ亜目のサシガメに近縁といわれる。体長1.5~7ミリメートルと小形で、体は扁平(へんぺい)のことが多い。前胸背や半翅鞘(はんししょう)(はね)は網目構造となり、レース模様のようである。はねは横に広くなることがあり、ちょうど軍配の形となり、これが和名の由来である。熱帯、亜熱帯を中心に世界で約2000種が知られ、日本には約60種が分布する。すべて植物に寄生し、普通、葉裏から吸汁する。寄生された葉は葉緑素(クロロフィル)を吸われるので白斑(はくはん)が現れ、加害がひどいと枯れてしまう。年数回羽化し、晩夏から初秋にかけてかなり多数が発生する。寄生植物には種の特異性が多少ともみられ、ツツジの害虫とされるツツジグンバイStephanitis pyrioides、ナシなどバラ科樹木を加害するナシグンバイS. nashi、ヤマボウシにはトサカグンバイS. takeyaiなどが知られる。アザミ類にすむ日本最大種で体長7ミリメートルになるアザミグンバイTingis ampliataはおもに葉の表にみられ、群生はしない。また、スギゴケなどに寄生するマルグンバイAcalypta spp.も知られる。

[林 正美]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グンバイムシ」の意味・わかりやすい解説

グンバイムシ
Tingidae; lace-bug

半翅目異翅亜目グンバイムシ科に属する昆虫の総称。多くは体長3~4mmで,10mmをこえるものはまれである。和名は,ナシグンバイ Stephanitis nashiなどの普通種の形が昔の武将が持っていた軍配の形に似ていることからつけられた。また英名はいずれの種も翅が透明で美しい網目模様があることによる。体は扁平で,頭部に前方に突出する数本の針状突起をもつものがある。触角は4節。単眼はない。前胸背は後方に伸びて小楯板 (しょうじゅんばん) をおおう。前翅は全体が網目状になっている。肢は細長く,跗節は2節。植物の葉裏や芽,花の中などにすみ,長い口吻で吸液するので害虫になることが多い。ナシグンバイ,ツツジグンバイ S. pyrioides,クスグンバイ S. fasciicarina,キクグンバイ Galeatus spinifronsなどはいずれも軍配に似た形の有名害虫である。世界に約 2000種が知られる。 (→異翅類 , 半翅類 )

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百科事典マイペディア 「グンバイムシ」の意味・わかりやすい解説

グンバイムシ

半翅(はんし)目グンバイムシ科に属する小昆虫の総称。体長5mmを超す種類はほとんどない。著しく扁平で胸や翅の側縁が軍配状に張り出すのでこの名がある。各種植物の葉裏に群がる害虫で,ナシグンバイ,ツツジグンバイなど多くの種類がある。

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