改訂新版 世界大百科事典 の解説
ケンブリッジ・プラトン学派 (ケンブリッジプラトンがくは)
Cambridge Platonists
17世紀後半のイギリスで,プラトン主義の再興によってルネサンス的人文主義とキリスト教神学の相克を融和しようとした一群の思想家の総称。創唱者のウィッチコートBenjamin Whichcote,その弟子のカドワース,H.モア,スミスJohn Smithなどがケンブリッジ大学に拠っていたのでこの名がある。当時,道徳の起源が論争の的になっていた。カルバン派は唯一の〈神〉の意志に絶対的に従うことから道徳が成立すると説いたが,彼らはプラトン哲学を新プラトン主義的に解釈して,〈神〉の力ですら変えることのできない神的英知とそれに支えられる宇宙法則が存在し,それを認識し,それに従うことこそ,善き人間の善への希求にほかならないと論じた。キリスト教徒は教会や宗派ではなく,この神的英知に直接触れあうことを求めるべきだと考え,ピューリタニズムやアングリカン・チャーチの神学にも多大の影響を与えた。イギリス文学史における影響も無視できない。
→新プラトン主義
執筆者:大沼 忠弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報