アメリカ最大の鉄鋼企業USスチール社の第2代社長。イリノイ州に生まれ,大学で法律を修めたのち,イリノイ州の郡判事やシカゴ弁護士会会長などを務め,1890年代にはイリノイ法曹界の中心的存在となる。法律の専門家としてフェデラル製鋼社などの設立に関与,98年にはその社長に就任し,以後は実業家として活躍する。大金融家モルガンJ.P.Morganの右腕として,一大鉄鋼トラストであるUSスチールの設立(1901)に尽力し,初代社長シュワッブの後を受け,1903年から27年まで社長を務めた。この間彼は,鉄鋼価格固定化のためピッツバーグ・プライス制を定め,〈ゲーリーの晩餐会〉と呼ばれる不定期の社長会でその徹底をはかった。こうした努力によりUSスチールは価格先導者としての地位を固めたが,やがて,独占の力や価格戦略に固執するあまり,需要構造や技術の変化への対応に遅れをとり,産業界における相対的地位を低下させていった。なお,USスチールの大工場がある鉄鋼業都市ゲーリーは彼の名にちなむ。
執筆者:日高 千景
アメリカ合衆国インディアナ州北西部の工業都市。人口10万2746(2000)。もともとはミシガン湖南岸の砂丘と湿地帯であったが,1905年に,USスチール社が6000エーカー(約2500ha)の土地を購入して,製鉄所とそれに付属する工場町をつくった。ゲーリーという名は同社の社長であったE.H.ゲーリーにちなんだもの。シカゴの南東約40kmに位置し,原料,製品の運送にも便利であるという地の利を買われて建設された町であるが,工場の発展にともなって人口も増大し,インディアナ州第2,20世紀にアメリカで生まれた最大の都市となった。工場で働く黒人が人口の半数以上を占め,1967年には黒人市長を選んだ。
執筆者:岡田 泰男
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