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「コムギ(小麦)」の意味・わかりやすい解説
コムギ(小麦)【コムギ】
西アジア原産のイネ科の一〜二年草。世界各地で最も主要な食用作物として古くから栽培されてきた。西アジアでは新石器時代の農耕遺跡から栽培コムギが発見されている。現在,北緯30°〜60°,南緯27°〜40°の間で多く栽培され,主産地は南ロシア,ドナウ川流域,地中海沿岸,中欧,北米,南米パンパス地方,北西インド,華北,オーストラリア南部などであるが,収穫期は各地で異なる。 コムギは,フツウコムギ(パンコムギ),マカロニ(デュラム)コムギなど数種からなるが,フツウコムギが世界の栽培面積の80%を占め,日本のコムギもすべてこれに属する。品種も多い。緑の革命を達成したメキシコ品種は多収品種として有名。このメキシコ品種の育種には日本で育成されたコムギ農林10号が利用された。また秋に播種し初夏に収穫する秋まきコムギ(冬コムギとも)と春に播種する春コムギとがある。茎は高さ1m内外,根もとで多く分岐して束生する。穂は茎頂につき,20内外の小穂を互生。小穂には2〜4の種子がつく。 タンパク質に富んだ硬質粒からは硬質粉が得られ,製パンに用いられる。タンパク質の少ない軟質粉は菓子,めん類等の製造に用いられる。しょうゆ,みその原料としても用いられ,また,ふすまは飼料とする。国際商品としては砂糖・コーヒーと並ぶ重要なもので,主要輸出国は米国・カナダ・アルゼンチン・オーストラリアなど,主要輸入国はヨーロッパ・中近東諸国・日本・中国など。小麦の需給調節と価格安定は世界の食糧供給の面から重要な課題で,国際穀物協定によって市場の安定が図られた。
→関連項目乾燥地農業|麦|リンカン(アメリカ)
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コムギ(小麦)
コムギ
Triticum aestivum; wheat
イネ科の一年草または越年草。イネとともに世界的に最も重要な穀物の一つで,栽培の歴史も古い。小アジア地方原産と考えられ,ノハラフタツブコムギ T. dicoccoides とタルホコムギ Aegilops squarrosa との交雑により生じたと考えられている。穎果を精白し,味噌や醤油の原料に用い,また押麦にして米飯に混ぜることもあるが,大部分は製粉してパンや麺類をつくる。コムギ属には 10種以上あるが,最も広く栽培されるのがコムギで,品種も多く,アメリカ合衆国,ロシアをはじめ,カナダ,フランス,アルゼンチン,中国などでそれぞれの品種が栽培されている。またマカロニコムギ T. durum は果の形が長くグルテンに富み,マカロニやスパゲティ製造に適していて,地中海や黒海地方でつくられている。
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コムギ【コムギ(小麦) wheat】
コムギ属Triticum作物の総称。イネ科の一,二年草。最も広範な地域で栽培されて最大の生産量をあげ,イネ,トウモロコシとともに世界三大穀物の一つで,人類の主食をまかなう重要な作物。長い農耕の歴史の中でしだいに生産性の高い品種にかわってきたが,現在栽培されているのは大部分がパンコムギT.aestivumL.(英名common wheat,フツウコムギともいう)(イラスト)である。
[種と分布]
コムギは一粒系コムギ(二倍種,染色体数2n=14,ゲノムA),二粒系コムギ(四倍種,2n=28,ゲノムAB),チモフェービ系コムギ(四倍種,2n=28,ゲノムAG)および普通系コムギ(六倍種,2n=42,ゲノムABD)の4群からなる。
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世界大百科事典内のコムギ(小麦)の言及
【米】より
…イネの種実をいう。収穫された米はもみ殻をかぶっており,これを〈もみ(籾)〉という。日本では,もみ殻をはずした玄米の形で包装,集荷,貯蔵するのが多いが,最近一部ではもみのばら集荷,貯蔵が行われている。外国では米はすべてもみの形で集荷,貯蔵される。玄米を精米機にかけて,ぬか層や胚芽を取り除いたものが精米(白米)である。米は小麦とともに人類の最も重要な食糧だが,小麦がソ連やアメリカなど冷涼で比較的乾燥した地域で生産されるのに対し,米は日本をはじめアジア南部など高温で水の豊富な地域で生産される。…
【植物】より
…生物界を動物と植物に二大別するのは,常識の範囲では当然のように思えるが,厳密な区別をしようとするとさまざまな問題がでてくる。かつては生物の世界を動物界と植物界に二大別するのが常識だったが,菌類を第三の界と認識すると,それに対応するのは狭義の動物(後生動物),狭義の植物(陸上植物)ということになり,原生動物や多くの藻類などは原生生物という名でひとまとめにされ,また,これら真核生物に比して,細菌類やラン藻類は原核性で,原核生物と別の群にまとめることができる。…
【夏成】より
…中世には〈夏済〉とも書く。夏季に上納される済物,すなわち納期を夏とする年貢などを意味する語。夏成に対比されるのが〈春成〉〈秋成〉で,それぞれ春と秋を納期とするものであった。〈夏麦〉〈麦地子〉などと史料にあるように,一般的には大麦・小麦など麦地子が多かったが,銭納の場合もみられる。戦国家法の一つ《結城氏新法度》(1556)の101条に〈郷中より年貢の取様,夏年貢は五月端午の日より,六月晦日に立て切るべし。…
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