日本大百科全書(ニッポニカ) 「コラーナ」の意味・わかりやすい解説
コラーナ
こらーな
Har Gobind Khorana
(1922―2011)
アメリカの生化学・分子生物学者。パンジャーブ地方のライーブ(現、パキスタン領)に生まれ、パンジャーブ大学で修士号を得て、1945年インド政府の奨学金でイギリスのリバプール大学に留学し博士号を取得。スイスのチューリヒ工科大学で2年間の博士研究員を経て、1950~1952年イギリスのケンブリッジ大学でトッドの指導を受け、核酸とタンパク質に興味をもつ。1952年カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に移り、細胞の核酸のリン酸エステル結合の研究を続けた。1960年からアメリカのウィスコンシン大学酵素研究所教授。ヌクレオチドを化学的に、また酵素を使って縮合させ、塩基配列の決まっているポリヌクレオチド、つまりタンパク質合成の鋳型になりうる人工的なDNA(デオキシリボ核酸)およびRNA(リボ核酸)を合成することに成功した。またニーレンバーグ、オチョアとともに、アミノ酸の遺伝子コードを解読し、ポリペプチド鎖が生合成される過程を解明する重要な手掛りを与えた。1968年ホリー、ニーレンバーグとともに遺伝情報の解読とそのタンパク合成における役割の解明によりノーベル医学生理学賞を受賞。その後tRNA(転移RNA)遺伝子の人工合成にかかわり、1970年より2007年までマサチューセッツ工科大学教授。77対(つい)のヌクレオチドからなる酵母のアラニンtRNA遺伝子の合成に成功。その後もさらに長いヌクレオチド鎖を合成し、それが生体細胞中で活性をもつことを示した。
[宇佐美論]