1911年にフィンランドの約16億年前の石墨片岩から発見された、輪になっている紐(ひも)状のもので、藻類の化石と考えられてCoryciumと命名された。しかし、炭素粒子でできていて、変成作用に伴って生じた偽化石の疑いももたれた。その後、アメリカのカーネギー研究所は、この化石に含まれている硫黄(いおう)の安定同位体である分子量34と32の比や、炭素同位体の分子量12と13の比を調べて、生物起源の化石であることが確認されたとしているが、現在でもなお疑問が残されている。コリシウムが発見された当時は、貴重な最古の化石として注目されたが、現在では生命の化石の記録は38億年前までさかのぼり、藍(らん)藻の化石の記録も約30億年前にまでさかのぼり、20億年前の緑藻、褐藻などの化石も発見されている。
[大森昌衛]
J.J.ゼーダーホルムにより,フィンランドの先カンブリア時代前期とされる千枚岩(変成岩)のなかから,藻類の化石の一種として,Corycium enigmaticumの学名をつけて記載された(1911),見かけ上小さな袋の形をとる石墨の集合体。1950年代後半になって,先カンブリア時代前期のバクテリアやラン藻の化石が多数確認されるまでは,最古の化石として取り扱われたこともあったが,その種名の示すように(enigmaticumは,説明できない,不明瞭なものという意味),化石か否か当初から疑問視されていた。石墨部の安定炭素同位体比(13C/12C)の分析結果から,その生物起源を証明できたとしたこともあったが,今日では,これも生成条件よりもむしろ,その後の高温下の変成作用の記録と再考されており,形態上からも藻類化石とする根拠はまったくない。
執筆者:小西 健二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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