ゴボウ(読み)ごぼう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴボウ」の意味・わかりやすい解説

ゴボウ
ごぼう / 牛蒡
[学] Arctium lappa L.

キク科(APG分類:キク科)の二年草。ヨーロッパからアジアの温帯原産。根生葉には長さ40センチメートルの葉柄があり、葉身は心臓形裏面白色の毛がある。2年目または3年目の春に、高さ1.5メートルになる花茎を出し、淡紫色アザミに似た花を多数つける。根は直根性で灰黄色、内部は黄白色。根を食用とする目的で栽培するが、若い茎葉も食べる。

 日本には野生はなく、古く中国より渡来し平安時代に食用が始まり、江戸時代には野菜として全国に普及したらしい。いまは日本独特の野菜で、外国では食用とされていない。

 産地は全国の大きい川の近く、作土が砂質で深い地域に散在する。北海道、青森県、茨城県、宮崎県などが主産地である。栽培は春播(ま)きが普通で、2月下旬から5月に播種(はしゅ)し、7~9月(早生(わせ))、9~10月(中生(なかて))、10月から翌年2月(晩生(おくて))に収穫する。また秋播き栽培も行われる。

[星川清親 2022年2月18日]

品種

滝野川牛蒡(たきのがわごぼう)は元禄(げんろく)時代(1688~1704)から江戸の滝野川の特産として知られた。根は長く、肉質は緻密(ちみつ)で柔らかく、す入りしにくい良質種である。堀川牛蒡(ほりかわごぼう)は京都の旧葛野(かどの)郡大内村の特産。2年子として直径10センチメートル、重さ900グラム程度に育ったものを収穫する。昔から本願寺で用いられた。大浦牛蒡(おおうらごぼう)は千葉県成田市近郊の特産で、根が太く短形で、肉質は柔らかい。太い根に空洞ができ、ここに詰め物をして料理する。ほかに常盤牛蒡(ときわごぼう)などがある。

[星川清親 2022年2月18日]

食品

根の可食部100グラム中に、タンパク質2.8グラム、脂質0.1グラム、炭水化物17.6グラムを含むが、炭水化物はデンプンではなくイヌリンなので消化しにくい。また、ビタミン類も少なく、栄養的にはあまり期待できないが、繊維が多く、便通を整える効果がある。ゴボウは、あくが強いので、切ったら変色しないようにすぐ水にさらす。皮に近い部分が美味なので、皮むきは、たわしでこするか包丁の背でこそげる程度とする。金平ごぼう煮物てんぷらなどにし、また、ささがきごぼうは柳川鍋(やながわなべ)に欠かせない。関西では葉つきのままの若ゴボウは煮物のあしらいに添え、香味がよい。種子は悪実(あくじつ)とよび、腫(は)れ物の内服薬にされる。

[星川清親 2022年2月18日]


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食の医学館 「ゴボウ」の解説

ゴボウ

《栄養と働き》


 ゴボウを食用にしているのは韓国とわが国だけで、原産地のユーラシア大陸北部でも野生種を薬用にしているだけです。そういう意味では、わが国独特の野菜といえます。
〈特有の歯ごたえはイヌリン、がん細胞を抑制するのがリグニン〉
○栄養成分としての働き
 おもな成分は炭水化物で、その大部分は消化吸収されないイヌリン(水溶性)、ヘミセルロース(不溶性)などの食物繊維です。これがゴボウ特有の歯ごたえや風味をつくりだしています。イヌリンは腎機能(じんきのう)を高め、利尿効果があるともいわれています。
 最近注目されている成分は、木質素(もくしつそ)とも呼ばれるリグニン。がん予防や胆汁酸(たんじゅうさん)を吸着し、排泄(はいせつ)させる作用があります。これは、消化吸収されずに便の量をふやして腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にするので、便秘(べんぴ)を防ぐ働きもあります。また、腸内の有用細菌の繁殖を助け、有害物質を吸着して排泄する働きもあるので、大腸がん予防に役立つといわれています。
 便秘改善に効力を発揮する理由はほかにもあります。ゴボウは、水溶性と不溶性の両タイプの食物繊維が多く、便の量をふやし、乳酸菌の活動を活発にして、便秘を改善するのです。
 水溶性食物繊維には、悪玉コレステロールを排出する働きや血糖が急激に上昇するのを防ぐ働きもあるので、動脈硬化や糖尿病予防などにも効果が期待できます。
 また、悪性細菌を増殖させず、逆に有用細菌をふやす働きもあり、ビタミン合成を活発にする効果もあります。さらに男性の精子数を増加させる働きのあるアルギニンという成分も含んでいます。
○漢方的な働き
 中国でも薬用として解毒、解熱、鎮咳(ちんがい)などの治療に利用されていますが、食用にはされていません。

《調理のポイント》


 ゴボウは晩秋から初冬のものがもっともおいしい時期です。2cmくらいの太さでスッと伸びたもの、ひげ根が少ないものを選びましょう。
 リグニンは切り口に発生する性質があり、時間がたつほどふえます。切り口の表面が多くなる「ささがき」をした調理がおすすめです。ゴボウにはアントシアニン系色素が多く、アクが多いので、切ったら水にさらすことが必要です。また、皮と身のあいだにうまみ、香り、薬効成分があるので、むかずにタワシでこする程度にしましょう。

出典 小学館食の医学館について 情報

百科事典マイペディア 「ゴボウ」の意味・わかりやすい解説

ゴボウ

根,まれには葉柄を食用とするため,古くから栽培されるキク科の野菜。原種とみなされる野生種はヨーロッパ〜中国東北地方に分布し,千数百年前に中国から渡来したとされる。日本で改良され,栽培種として確立した。根出葉は長い柄があり,大きな心臓形で,長さ40cm,縁には鋸歯(きょし)がある。花はアザミに似る。直根は長く伸び,品種により1.5mにも達する。おもな品種は,細長形赤茎の滝の川系,白茎の越前系,短太の大浦系など。金平(きんぴら),煮しめなどにする。味噌漬などにする山ゴボウは本種ではなくモリアザミ(アザミ)の根である。

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栄養・生化学辞典 「ゴボウ」の解説

ゴボウ

 [Arctium lappa].キク目キク科ゴボウ属の植物で,根を食用にする.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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