ゴルフ(読み)ごるふ(その他表記)golf

翻訳|golf

デジタル大辞泉 「ゴルフ」の意味・読み・例文・類語

ゴルフ(golf)

ボールをクラブで打ち、9または18か所に設けられているホールに順次に入れ、打数の合計数が少ない者を勝ちとする球技。
[補説]多くは18ホールを1単位(ラウンド)とし、基準打数(パー)の合計は72が一般的。

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精選版 日本国語大辞典 「ゴルフ」の意味・読み・例文・類語

ゴルフ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] golf ) 球技の一つ。屋外コース上で静止した小さなボールをクラブで打ち次ぎ、定められたホールへ入れ、それに要したストローク(打数)によって優劣を争う競技。一八ホールを一ラウンドとする。定められた数のホールの総打数の多寡を競うストロークプレーと、各ホールごとの打数の多寡で優劣をきめるマッチプレーとがある。
    1. [初出の実例]「この頃凝ってゐるゴルフ遊戯から疲れて帰ると」(出典:学生時代(1918)〈久米正雄〉求婚者の話)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴルフ」の意味・わかりやすい解説

ゴルフ
ごるふ
golf

コース上に静止しているボールを杖(つえ)状のクラブで打ち継ぎ、定められたホール(球孔(きゅうこう))へ入れ、それまでに要したストローク(打数)の多寡によって優劣を競う競技。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

沿革

ゴルフの起源については、スコットランド固有のものとする説と、オランダから渡来したものとする2説があって、いまだに決定的な実証はないが、14世紀に現行の形式と方法による競技としてスコットランドの庶民間に親しまれた事実が明らかにされている。15世紀にはそれが盛んになりすぎて、国民の武道と信仰の妨げとなるものとされ、勅令による全面禁止、あるいは安息日のプレー禁止などもあったが、事実は、この競技が貴族階級にも蔓延(まんえん)し、ついには王も熱中する風潮となった。これが、この競技の「王の、そして、いにしえなる競技」Royal and Ancient Gameと称されるゆえんである。16世紀以降、身分の上下を問わない競技にまで発展し、やがてイングランドにまで波及していった。

 スコットランドの小都市セント・アンドリューズSt. Andrewsには世界最古といわれる同名のコースが現存しているが、18世紀中ごろにクラブ組織(現、全英ゴルフ協会=R & A:Royal and Ancient Golf Club of St. Andrews)ができ、いわゆる選手権競技も始められた。最初はシルバー・クラブSilver Clubと称して実物大の銀製クラブの争奪戦が催され、公式競技には公平な規約が必要とあって、13か条からなる規則がつくられた。これが現行のゴルフ総則の基盤となっている。現在はR & Aと全米ゴルフ協会(USGA:United States Golf Association)との協議のもとに、4年ごとに大幅改正が行われる。日本では、これを日本ゴルフ協会(JGA:Japan Golf Association)が翻訳してゴルフルールを普及している。

 ゴルフが盛んになるにつれて、使用するクラブやボールを専門につくる者ができ、彼らはゴルフ技にも長じていたので実技教習にも携わるようになった。やがて、プロフェッショナルとして認められ、アマチュアと合同のオープン選手権競技会も開催される機運となった。ほかのスポーツでは、オープン競技には懇親的な意義しかない場合が多いが、ゴルフでは最高の大会と認められているのは、遠く当時からの伝統による。

 ゴルフは19世紀後半にイギリス本土から大西洋を渡ってアメリカ大陸に移入された。アメリカ合衆国におけるゴルフコースの誕生は1888年のことであるが、その後わずか20年もたたないうちに、イギリスに迫るほどの実力を備えるようになった。20世紀に入るやアメリカはイギリスに追いつき、ついにその王座さえ奪った。それには第一次世界大戦が大きな役割を占めている。イギリスは大戦を勝ち抜くため国力も疲弊し、ゴルフ界も沈滞した。これに反してアメリカは大戦による被害はほとんどなく、戦時中もゴルフ大会で赤十字義援を試みたほどの余裕を示し、戦後の好景気によってゴルフの大衆化はすさまじく、あらゆる面でイギリスを圧倒するようになった。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

日本のゴルフ史

一方ゴルフ競技は世界各地のイギリス植民地を拠点として旧大陸から東洋へも浸透し、日本へは1901年(明治34)に神戸在住のイギリス人アーサー・グルームArthur H. Groom(1846―1918)によって導入された。ゴルフコースが六甲(ろっこう)山上の別荘地帯に建設(4ホール)され、神戸ゴルフ倶楽部(くらぶ)として1903年オープンの運びとなった。これに呼応して1906年には、横浜の根岸競馬場内にイギリス居留民主体のニッポン・レース・クラブ・ゴルフィング・アソシエーションが設立され、1914年(大正3)には初めて日本人を会員とする東京ゴルフ倶楽部が東京郊外駒沢(こまざわ)村に発足した。

 日本におけるゴルファーは、初め上流階級だけに限られていたが、その大衆化は1924年、武蔵野(むさしの)カントリー倶楽部が口火を切った。同年日本ゴルフ協会が設立され、1927年(昭和2)の第1回日本オープン選手権競技で、アマチュアの赤星六郎(1901―1944)が優勝した。昭和期に入ると各地に続々とゴルフ場が建設された。しかし1937年日中戦争から太平洋戦争を迎えるに及んで、ゴルフは敵性スポーツとみなされ、さらには広大なコースが軍用地として接収され、戦争激化とともに逼塞(ひっそく)状態となった。やがて終戦を迎えて、ゴルフが駐留軍のレクリエーションとして大きく浮かび上がり、軍用地に転用されたゴルフ場はふたたび初めの姿に返る機運が生まれた。同時に新設のゴルフ場が各地につくられ、日本ゴルフ界は戦前をしのぐ状態となった。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

ゴルフ史に残る名手

史上ゴルフ・プロ第一号はイギリスのアラン・ロバートソンAllan Robertson(1815―1857)である。彼はセント・アンドリューズでボール製造を業としていたが、プレー技術にも優れ、世界で初めて70台のスコアを記録し、多くの帰依(きえ)者を得た。ロバートソンの後継者トム・モリスThomas (Old Tom) Morris(1821―1908)は「プロの父」といわれ、技量・人格ともに優れ、ゴルフの発展に尽くし、息子のヤング・トムYoung Tom Morris(1851―1875)とペアを組んでは無敗の戦績をあげた。イギリスの黄金期は19世紀末から20世紀初頭にかけて最高に達するが、ハリー・バードン、ジェームス・ブレードJames Braid(1870―1950)、ヘンリー・テイラーHenry Taylor(1871―1963)の三者に負うところが大きい。1894年から第一次世界大戦の1914年までの20年間の全英オープンはほとんどこの三者のみで優勝を独占している。とくにバードンは「近代ゴルフの父」とよばれ、オーバーラッピング・グリップ(後述)を創案したことで知られる。

 20世紀を迎えてからアメリカはイギリスに肉薄し、まずウォルター・トラビスWalter Travis(1862―1927)がイギリス遠征によって1904年度イギリス・アマチュア選手権を制覇、それから9年後の1913年に、全米オープン奪取のため渡米したバードンを迎えて、無名の若きアマチュアであったフランシス・ウイメットFrancis Ouimet(1893―1967)がバードンとのプレーオフのすえ優勝した。第一次世界大戦による空白時代にアメリカ・ゴルフ界は著しく成長し、ウォルター・ヘーゲンWalter Hagen(1892―1969)が全英オープン選手権のタイトルをとることによって事実上イギリスの黄金時代は去り、アメリカの第一期の黄金時代を迎えることになる。この期を代表するのがウォルター・ヘーゲン、ジーン・サラゼンおよびボビー・ジョーンズの3名である。とくにジョーンズはアマチュアでありながら当時28歳の若さで世界の代表的競技会(全米・全英両オープンと英・米両アマチュア)の優勝を1年間で成就するという不滅の偉業(グランドスラム)によって知られている。

 第二次世界大戦後はアメリカが不動の地位を占め、バイロン・ネルソンByron Nelson(1912―2006)、サム・スニードSam Snead(1912―2002)、ベン・ホーガンの3名がそれを支えた。これまで代表的名手を3名ずつあげてきたが、いわゆるビッグ・スリーの呼称は、1960年代から1970年代にかけて活躍したアーノルド・パーマー、ジャック・ニクラウスおよびゲーリー・プレーヤーGary Player(1935― )に対して与えられたものである。そして、リー・トレビノLee Trevino(1939― )、トム・ワトソンTom Watson(1949― 。いずれもアメリカ)、セベリアーノ・バレステロスSeveriano Ballesteros(1957―2011。スペイン)、ベルンハルト・ランガーBernhard Langer(1957― 。ドイツ)、グレッグ・ノーマンGreg Norman(1955― 。オーストラリア)、ニック・ファルドNick Faldo(1957― 。イギリス)、タイガー・ウッズEldrick(Tiger)Woods(1975― 。アメリカ)らがその後の名手として名を連ねた。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

 日本では昭和初期に入って多くのプロを輩出しているが、宮本留吉(とめきち)(1902―1985)、安田幸吉(こうきち)(1905―2003)、浅見緑蔵(あさみろくぞう)(1908―1984)、中村兼吉(かねきち)(1911―1974)、戸田藤一郎(とういちろう)(1914―1984)らの相次ぐ渡米遠征の善戦によってその実力が十分に認められ、また、技術向上の助けともなった。さらに、1957年(昭和32)日本の霞ヶ関(かすみがせき)カンツリー倶楽部(2020年オリンピック東京大会<2021年に延期>のゴルフ会場でもある)で開催された国際競技であるカナダカップ(現、ワールドカップ)で、中村寅吉(とらきち)(1915―2008)が小野光一(1919―2000)とペアで団体優勝するとともに個人優勝するに至って、日本のゴルフが世界水準に達していることを証明し、沸き起こったのが第一次ゴルフブームである。1960年には日本初の民間ゴルフトーナメントが開催され、杉本英世(ひでよ)(1938― )、河野高明(1940―2010)、安田春雄(1943― )らが活躍し、青木功(いさお)や尾崎将司(まさし)(1947― 、別名ジャンボ尾崎)、中島常幸(つねゆき)(1954― )、倉本昌弘(まさひろ)(1955― )らの活躍で日本のゴルフトーナメントは1980年代後半に全盛期を迎えた。その後、丸山茂樹(しげき)(1969― )、田中秀道(ひでみち)(1971― )、石川遼(りょう)(1991― )、松山英樹(ひでき)(1992― )らがPGAツアー(アメリカ男子プロゴルフツアー)を主戦場とし活躍している。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

ゴルフコース

golf course ゴルフがゲームとして育ったのは、スコットランド海岸の砂丘地帯であるため、競技場は当初リンクスlinks(砂原)とよばれた。やがて内陸地方にもゴルフ場が設けられるに至って、ゴルフコースは、シーサイド・コースとインランド・コースとに大別されてよばれるようになった。

 シーサイド・コースの典型は、スコットランドにあるセント・アンドリューズ・(オールド)コースSt. Andrews (old) courseで、ゴルフが必要とするあらゆる条件を完全に具備している点で、天与のモデルであるとされる。同コースは自然の砂丘が牧草地帯となったところをコース化したもので、北海から吹き寄せる風の変化と、砂地の微妙な起伏とが複合して、プレーに無限の興趣を与える結果となった。シーサイド・コースの特徴は、より自然に即して設計されており、ここにゴルフコースのもっとも基本的な設計理念をみることができる。

 これに比べて、インランド・コースは地形的に複雑で、丘陵、森林、細流、池沼などを内包するので、人工的な色彩の強い設計となるのが特徴である。その典型的なものとしてアメリカ、ジョージア州のオーガスタ・ナショナル・コースAugusta National courseをあげることができる。毎春4月にマスターズ・トーナメントが開催される同コースは、森と水、起伏と曲線とによってリンクス型(シーサイド・コース)とはまったく別種の興趣を盛ることに成功した。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

コースの構成

ゴルフコースは、当初はその規模・形態に特定の規格が設けられていたわけではなく、自然そのものを利用して競技が行われていたが、長い年月の間にその標準ができあがった。

 コースは18ホールを基本として全長6000~7000ヤード(1ヤード=0.91メートル)前後の距離をもち、パーpar(基準打数)72が標準のタイプである。これを一巡(ラウンド)するのに約4時間を要する。日本のコース設計では、食事や休憩のためにクラブハウスを中央に配して、9ホール(ハーフ)を終えると自然にハウスに戻れるデザインが多い。前半の9ホールをアウトコース、後半の9ホールをインコースといい、各コースはロングホール2、ミドルホール5、ショートホール2の計9ホール、全体で18ホールからなっている。その基準は、ショートは250ヤード以下、ミドルは251~470ヤード、ロングは471ヤード以上で、ショートのパーを3、ミドルを4、ロングを5とし、合計パー72を標準とする。女子の場合は距離が短く、576ヤード以上のロングホールのパーは6になっている。ホールの距離は、ティーの中心からグリーン中心まで水平に計測し、曲がっている(ドッグレッグ)ホールでは、設計者の意図するフェアウェイの中心を通じて計測する。

 さらに、コースにはコース・レーティングcourse ratingがある。パーは単に距離から割り出されたもので、コースによって自然の条件はいろいろ異なり、必然的にプレーの難易が生ずるから、地形、障害物、風土的特徴を距離に加えて、より科学的な標準打数を決めるために行われるコースの評価がコース・レーティングである。たとえば平坦(へいたん)・広闊(こうかつ)なコースはパー総計が72であっても、コース・レートは69であったり、優れた設計のむずかしいコースでは74になったりする。これらの評価は日本では日本ゴルフ協会が担当している。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

基本的ルールとエチケット

基本的ルール

ゴルフは一つの球を一つのクラブで打ち、コース上の18ホールをプレーすることによって成り立っている。また、野球やサッカーなど他の競技フィールドが比較的広いスポーツと比べてもゴルフは広大な場所で行われ、自然を相手にするスポーツなので、さまざまなことが起こる可能性もあり、他のスポーツに比べて規則が複雑になっている。そして、同時に大勢の人たちが一つの競技会に参加できるという特徴ももっているので、すべての参加者が公平性をもって競えるよう規則が複雑になっている。それと、もう一つの大きな特徴はレフェリーが立ち会わないことである。これは、プレーヤー自身がレフェリーであり、プレーヤー自身の判断で規則を守ってプレーしないといけないということを前提につくられているからである。自分だけが有利になるように、わざと違反をしたり、他人をだましたりするようなプレーヤーがいることは考慮していない。そのゴルフ規則が何百年もの間、こうして守られ続けている。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

ゴルフ規則の改正について

2019年1月1日からゴルフ規則は変更された。これまでもゴルフ規則は4年ごとの改正を行ってきたが、2019年の変更は単なる改正ではなく新しいゴルフ規則への移行となっている。現在のプレー形式はほとんどの場合ストロークプレー方式を採用しており、多くのプレーヤーが同時に競えるようになっている。しかし、ゴルフコースという広大なエリアでプレーされるため、ゴルフ規則も複雑になりすぎていた。公平性を保つには致し方ないが、そのためにラウンド時間がかかりすぎたり、新しいゴルファーの参入を妨げてしまったりという現状を改めるために、新しいゴルフ規則へと移行された。もともと、ゴルフ規則とはプレーヤーの誠実さに頼り、プレーヤーひとりひとりがゴルフ規則を守ってプレーするということから成り立っているが、新しいゴルフ規則ではいままで以上にプレーヤーの誠実さを求める内容となった。長年ゴルフをしてきたプレーヤーの多くは、最初のうちはとまどいもあったようだが、規則全体がわかりやすくなった、プレーの時間が短くなった、と実感しているようである。ただ、変わっていないのはゴルファーはつねに他のプレーヤーに心配りをし、コースを保護して安全確認を怠らず、礼儀正しさとスポーツマンシップを示しながら洗練されたマナーでふるまうべきであるということである。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

エチケットとマナー

一般的にゴルフはエチケットとマナーがたいせつだといわれている。では、エチケットとマナーでは何が違うのかというと、マナーは規則ではないが守らなければならないもの、エチケットは他人に対しての気配りである。たとえばバンカーから出た後、そのバンカーをきれいにならすのがマナーである。ならさなかったからといって規則違反になるわけではないが守らなければならないことである。では、エチケットは何かというと、ならすときに使ったバンカーレーキ(バンカーの砂をならすために置かれているもの)を次に使う人のために取りやすい場所に置いておく気配りなどをいう。

 プレーヤーはコース上の他のプレーヤーたちにも心配りをしなければならない。他のプレーヤーがアドレスに入ったら、むやみに動いたり、話したり、不必要に音をたてたりして、他のプレーヤーのじゃまになるようなことをしてはならない。また、プレーヤーはコース内に持ち込んだ電子機器が他のプレーヤーの集中を乱すことがないように留意すべきであり、ティーイングエリアでは自分の打順になるまでティーアップ(ティーイングエリアで球をティーペグにのせること)してはならない。そして、他のプレーヤーがプレーを始めようとしているときに、そのプレーヤーの球の近くや真後ろ、あるいはホールの真後ろに立ったりしてはならない。パッティンググリーン上では他のプレーヤーのプレーの線の上を歩いたり、他のプレーヤーがストロークしているときにプレーの線上に影をおとしてはならず、同じ組のプレーヤー全員がそのホールのプレーを終えるまで、その組のプレーヤーはパッティンググリーン上かその近くで待っているべきである。また、安全面の確認も怠らず、人の近くでは素振りをしないようにし、前の組のプレーヤーが球の届く範囲外に出るまではプレーを始めてはならない。そして、プレーヤーは自分の順番になったらすぐにプレーできるように準備し、ホールのプレーが終わったらすぐにそのパッティンググリーンから離れ、後ろの組に迷惑をかけないようにしなければならない。また、プレーのペースを保つことも重要で前の組との間隔をあけすぎないように速やかなプレーのペースを維持することが重要である。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

コースエリアの規則

ゴルフは次の五つのコースエリアでプレーを行う。球がどのコースエリアにあるかによって、プレーや救済を受けるときに適用される規則は異なる。

〔1〕ティーイングエリア teeing area
プレーヤーがプレーするホールをスタートするときに、最初にそこからプレーしなければないエリア。旧称、ティーインググラウンド

〔2〕ジェネラルエリア general area
プレーしているホールのティーイングエリア、バンカー、ペナルティーエリア、プレーしているホールのパッティンググリーン以外の場所で、コース全体を構成するすべてのエリア。旧称、スルーザグリーンthrough the green。

〔3〕バンカー bunker
バンカーとするためにつくられた砂のエリアで、芝や土が取り除かれて、くぼみとなっている場合が多い。

〔4〕ペナルティーエリア penalty area
プレーヤーの球がそこに止まった場合、1罰打で救済が認められているエリア。旧称、ウォーターハザードもしくはハザード。

〔5〕パッティンググリーン putting green
プレーヤーがプレーしているホールのパッティングのために特別につくられたエリア。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

ティーイングエリア

スタートホールの順番はくじ引きなどで決められる。次のホールからは最初にプレーする人をオナーhonorといい、前のホールのスコアがよかった(少なかった)順となる。同じスコアの人同士の順番は変わらない。二つのティーマーク(ゴルフコースによってさまざまな形があるが目印となる人工物)の前方を結び、ティーマークの外側から後方2クラブレングスからなる長方形のエリア内に球がなければならず、球がエリア内であればスタンスはエリア外でもかまわない。プレーしているホールのティーイングエリア内であれば何打目であろうとティーアップした状態でプレーすることができる。このエリア内からプレーするときは何打目であるかを問わず、設置されているティーマーカーは動かすことはできない。ティーアップしている球が(クラブが当たるなどして)ティーから偶然落ちても罰はなく、ふたたびティーアップしてプレーすることができる。大勢のプレーヤーがこの狭いエリア内からプレーするため、エリア内の地面の凹凸を直したり、じゃまな芝や草をちぎってもライ(球の置かれている状態)の改善とはならず罰はつかない(他のエリアでは罰がつく)。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

ジェネラルエリア

プレーしているホールのティーイングエリア、バンカー、ペナルティーエリア、プレーしているホールのパッティンググリーン以外の場所。いわゆる、フェアウェイfairway(芝地を刈り込み、球を打ちやすい状態に保つよう配慮されている地域)とラフrough(フェアウェイ以外の、意図的な非整備地帯で、雑草、低木、樹林などからなる)がその代表となる。そのため、バックティー(コースの各ホール最後方に配置される上級者用のティーイングエリア)を使用しているプレーヤーにはフロントティー(バックティーより前に位置する一般的プレーヤー用のティーイングエリア)はジェネラルエリアとなる。また、ティーイングエリアからプレーされた球はインプレーの状態となるので、基本的には球に触ったり球を取り替えたりすることはできない。ただ、委員会によってプリファードライとよばれるローカルルールが出されている場合、ジェネラルエリアで球をふいたり、違う場所にプレースすることが許されているケースもある。他に異常なコース状態(修理地など)や動かせない障害物による無罰での救済が許されるケースでも、球を拾いあげてふくことができる。基本的に罰ありの救済、罰なしの救済を受けるために球が拾いあげられたときは、その球をふくこともできるし、違う球にかえることも許されている。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

バンカー

バンカーとして定義されている砂のエリアで、砂地から球をプレーするプレーヤーの能力をテストするために特別につくられた区域であるため、いくつかの制限がある。まず代表的なものは、プレーヤーに砂の状態をテストすることを禁止していることである。このため、手やクラブなどで砂に触れることはできない。これは球を打つためのアドレス時やバックスウィングのときに偶然触れても罰がつくので、アドレス時からクラブを砂につけないように構えなければならないということである。また、スタンスをとるときに自分の両足をしっかりと据えることは認められているが、過度に足を潜り込ませたり、水平な区域をつくるために足でバンカーの側面の砂を落としたりしてスタンスの場所をつくることは認められていない。ただ、バンカー内の動かせる障害物や、ルース・インペディメントとして定義されている石や葉っぱなどを動かすことは許されている。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

ペナルティーエリア

ペナルティーエリアとはコース上のすべての水域であり、球がそこに止まったらそのまま打つこともできるし、1打の罰によって救済を受けることも認められているエリアである。ペナルティーエリアには二つの種類があり、救済を受ける際の処置にも違いがある。イエローペナルティーエリアは委員会によって黄杭(くい)や黄線によってマークされているエリアであり、レッドペナルティーエリアは赤杭や赤線でマークされているエリアである。委員会によってマーキングされていないか、特定されていなかった場合は、レッドペナルティーエリアとして扱われる。救済を受ける際の処置の仕方は次の通りである。

〔1〕イエローペナルティーエリア
(1)ストロークと距離の救済
 プレーヤーは直前のストロークを行った場所から1罰打のもと、元の球か別の球を救済エリアにドロップする。

(2)後方線上の救済
 プレーヤーは元の球がそのペナルティーエリアの縁を最後に横切った地点とホールを結ぶ線上でそのペナルティーエリアの外にドロップしなければならない(球をドロップすることができる後方の距離に制限はない)。ドロップしたときにその球が最初に地面に触れた線上の箇所によって救済エリアを定める。その救済エリアはその地点からどの方向にも1クラブレングスとなる。

〔2〕レッドペナルティーエリア
(1)、(2)イエローペナルティーエリアの処置と同様。

(3)ラテラル救済(レッドペナルティーエリアに対してのみ)
 プレーヤーの球が最後にレッドペナルティーエリアの縁を横切ったと推定される地点を基点とし、その基点からホールに近づかず、基点から2クラブレングス以内の救済エリアに1罰打のもと、元の球か別の球をドロップする。

[飯田雅樹 2023年2月16日]

パッティンググリーン

パッティンググリーンの上にある球はいつでもマーク(止まっている球の箇所を示す小さな人工物)して拾いあげふくことができる場所で、球が拾いあげられているときはインプレーではなくなり、球をリプレースしたときにふたたびインプレーの状態となる。パッティンググリーン上の砂やバラバラの土は罰なしに取り除くことができる(ティーイングエリアでも認められるが、それ以外のエリアでは取り除けない)。また、パッティンググリーン上で人や動物などの外的影響によってつくられた損傷は修復することができる。たとえば、ボールマーク(パッティンググリーン上にある打球の落下跡)や芝の張り替え跡、古いホール(穴)の埋め跡や靴による損傷(スパイクマークなど)、メンテナンス作業によって傷つけられた擦り傷や、動物の足跡や蹄(ひづめ)によるくぼみも含まれる。また、他のエリアと違い、プレーヤーのインプレーの球が偶然にプレーヤーやキャディによって動かされてしまっても、無罰で元の位置にリプレースしなければならない。プレーした球が旗竿(はたざお)に当たっても無罰なので、旗竿をそのままにした状態でプレーするのか取り除いてからプレーするのかを、プレーヤーはプレーする前に決めなければならない。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

競技のおもな形式

ゴルフ競技は、おもにマッチプレーmatch playかストロークプレーstroke playの形式で行われる。

〔1〕マッチプレー
 マッチプレーは、プレーヤーと相手が1対1でプレーして、ホールごとの勝敗を競い合う競技形式である。相手よりも少ないストロークでそのホールを終了したら、そのホールでの勝ちである。または相手がそのホールをコンシード(OKボール)したら、途中でもそのホールでの勝ちとなる(コンシードとは相手が次の1打を打たなくても、1打を加算してホールアウトを認める意思表示である)。マッチの勝敗が決まるのは、プレーヤーが残りのホール数よりも多く相手をリードしたときで、(トータルのスコアは関係なく)プレーヤーがそのマッチの勝者となる。マッチプレーにはストロークプレーとは違う特別規則がある。それは、コンシードと、すでに行ったストローク数についての情報を与えることなどである。このことにより、プレーヤーとマッチの相手は、すべてのホールで単に互いに対して競い、互いのプレーを見ることができ、プレーヤーの利益を守ることができる。プレーの状態がわかることにより、相手は次のストロークやそのホールの残りをどのようにプレーするのかを決定することができるし、終了したばかりのホールの結果を確認することができる。プレーヤーが相手に間違ったストローク数を教えていた場合、規定時間内にその誤りを訂正しなかったとき、そのプレーヤーは一般の罰(そのホールの負け)を受ける。ストロークプレーが競技会に参加しているプレーヤー全員との戦いとするなら、マッチプレーは相手との戦いである。

〔2〕ストロークプレー
 一般的に多く行われているのがストロークプレーである。それは、一度に大勢のプレーヤーが同時に競い合うことができるからである。また、マッチプレーにはない特別規則もある。それはスコアカードにスコアを記入すること、ホールアウトをかならずしなければならないことである。なぜなら、各プレーヤーがその競技に参加しているすべてのプレーヤーと競うためであり、すべてのプレーヤーが規則に基づいて平等に扱われる必要があるからである。ラウンドを終了したらプレーヤーとマーカー(プレーヤーのスコアを記録する人)は、そのプレーヤーの各ホールのスコアを記録し、そのスコアが正しいことを証明しなければならず、そのプレーヤーはそのスコアカードを委員会に提出しなければならない。そして、もっとも少ない合計ストローク数ですべてのラウンドを終えたプレーヤーが勝者となる。

〔3〕その他のプレー形式
(1)スリーボール・マッチプレー three-ball match play
 マッチプレーの形式で、3人の各プレーヤーが同時に他の2人のプレーヤーと個別にマッチをプレーする。そして、各プレーヤーは、一つの球をプレーし、その球を両方のマッチに使用する方式である。

(2)フォアサム foursome(通称、オルタネートショット)
 4人のプレーヤーが同時にプレーする。2人のプレーヤーが一つの組となり、各ホールで2人が一つの球を交互にプレーする競技である。

(3)フォアボール four-ball
 2人のプレーヤーが一つの組となり、4人のプレーヤーが各自自分の球でプレーする。そして、各ホールの各組のスコアは、2人のうちの少ないほうのスコアがその組のスコアとなる。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

罰ありの救済
アンプレヤブル

コース上のペナルティーエリア以外のすべての場所で、プレーヤーの球がむずかしい状況から脱出するために1打の罰を払い、別の場所からプレーすることができるプレーヤーの権利である。たとえば、プレーヤーの球が木の上にのっていたり、木の根元にはまり込んでいて、プレーすることが困難な場合に有効な処置でもある。アンプレヤブルを宣言できるのはプレーヤーのみで処置の仕方は次の通りである。

〔1〕ストロークと距離の救済(後述の「ストロークと距離の罰に基づく救済」参照)
〔2〕後方線上の救済(前述の「ペナルティーエリア」参照)
〔3〕ラテラル救済(前述の「ペナルティーエリア」参照)
〔4〕バンカー内にある球をバンカーの外に出すことができる救済
 バンカー内の球をアンプレヤブルする場合、1罰打での救済は同じバンカー内でなければ救済を受けることができないが、追加の救済の選択肢として、バンカー内にある球のみ2罰打とすることで、球がある地点とホールを結んだ後方線上(その線上の後方であれば距離に制限はない)のバンカーの外の救済エリアに、元の球か別の球をドロップすることができる。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

ストロークと距離の罰に基づく救済

プレーヤーの球を3分以内にみつけられなかったり、プレーヤーの球と確認できなかったとき、または、球がアウト・オブ・バウンズに止まったとき、プレーヤーは1罰打のもとストロークと距離の救済を受けなければならない。処置の仕方は、直前のストロークを行った場所からホールに近づかない1クラブレングス以内の救済エリアに、元の球か別の球をドロップ(ティーイングエリアからプレーされていた場合はティーイングエリアからティーアップして打ち直し)してプレーを再開しなければならない。第1打目がアウト・オブ・バウンズであった場合は、1打目をカウントして1罰打を加える。そして、打ち直しとなるので次は3打目となる。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

暫定球

プレーヤーによってプレーされたばかりの球が紛失する可能性のある場所に飛んでいったり、アウト・オブ・バウンズである可能性がある場合に、球を探してから元のプレーした場所に戻るのは時間がかかるため、時間節約のため暫定的に別の球をプレーすることが許されている。暫定球をプレーした後に元の球がみつかった場合は、プレーされた暫定球は放棄されなければならない。また、最初の球があると推定する場所とホールから等距離、または、ホールから遠い所から暫定球を続けてプレーする限りにおいては、暫定球としての状態のままでその球をプレーすることができるが、球があると推定する場所よりもホールに近づいた場所からストロークを行ってしまうと、その暫定球がストロークと距離の罰のもとにインプレーとなる。その後に最初の球がみつかっても最初の球は紛失球となるので、この球でプレーしてしまうと誤球をプレーしたことになる。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

救済エリアに球をドロップすること

規則により救済エリアに球をドロップするときは、つねに元の球か別の球をドロップすることができる。ドロップはプレーヤー自身がドロップしなければならず、球は膝(ひざ)の高さからプレーヤーや用具に触れないように真下にドロップされなければならない。また、球を投げたり回転をかけたり転がすことなく真下にドロップされなければならない。ドロップされた球は救済エリアに落ちなくてはならず、救済エリアに落ちた球が救済エリアから外に出た場合は再ドロップをしなければならない。再ドロップした球も救済エリアの外に止まった場合は、2度目にドロップしたときのコース上に落ちた場所にリプレースすることによって救済エリアにドロップする処置は終了したことになり、球がそこに留まった時点でプレーヤーの球はインプレーの状態に戻ったことになる。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

ローカルルール
最大スコア

ストロークプレーの原則はホールアウトすることなので、最大スコアがローカルルールでの採用となる。最大スコアがストロークプレーの一つの形式であり、プレーヤーの各ホールでのスコアを委員会が設定した最大のストローク数に制限する形式である。たとえば、パー(規定打数)の2倍のスコア、決められたスコア、または、ネットダブルボギー(ハンデ数を差し引いたダブルボギー)を委員会が最大スコアと決定した場合、実際のスコアが最大スコアを超えたとしても、決められた最大スコアがそのプレーヤーのスコアとなる。また、ホールアウトしなくてもそのプレーヤーには最大スコアがそのホールのスコアとなる。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

紛失球やアウト・オブ・バウンズの球についての特別なローカルルール

暫定球をプレーしなかった場合で、球がみつからなかったとき、またはアウト・オブ・バウンズであった場合、規則ではストロークと距離の罰のもとに元の場所に戻り、球を打ち直さなければならないが、一般的なラウンドではプレーのペースに著しく問題が生じるケースもあるため、このローカルルールがつくられている。その目的は直前のストロークを行った場所に戻らずにプレーヤーがプレーを続けることができるように、追加の救済の選択肢を委員会が規定することを認めることである。また、このローカルルールはゴルファーがカジュアルにラウンドするときや、仲間内のコンペでプレーする一般的なプレーにだけ適しており、このローカルルールを高い技量のレベルの競技会などで使うのは妥当ではない。これは、暫定球でプレーしなかった場合の規定で、自分の球をみつけることができなかった場合やアウト・オブ・バウンズとなっていたときに、決められたルールのなかで、その球を紛失した近辺やアウト・オブ・バウンズとなった場所近辺から、2打の罰を払い別の球を定められたエリアからプレーできるというものである。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

ハンディキャップ

handicap。ゴルフは子供から大人まで、初心者から上級者まで同時に競えるゲームである。それはハンディキャップがあるからである。「18ホール・パー72」という場合、ハンディキャップ20の人が95ストロークでラウンドしたら、95からハンディキャップ20を引いたネットスコアは75で、ハンディキャップ30の人が95ストロークでラウンドしたら、95からハンディキャップ30を引いたネットスコアは65ストロークとなる。つまり、ハンディキャップがあることで技量に差があっても同時に競うことができるのである。

〔1〕オフィシャルハンディキャップofficial handicap
 JGA/USGAハンディキャップ・インデックスとよばれ、日本では2014年(平成26)から採用されている。世界基準の規定を採用しているので、国際的にも通用するハンディキャップである。このハンディキャップを取得するにはJGA(日本ゴルフ協会)の認可を受けたゴルフ倶楽部(くらぶ)に所属してスコアカードを提出する。または、JGAの個人会員となりスコアカードを提出する。提出されたスコアカードが5枚に達した後、JGAハンディキャップ規定(USGAハンディキャップシステム基準)に基づいてスコアカードを提出したプレーヤーにJGA/USGAハンディキャップ・インデックスが発行される。また、ワールドハンディキャップシステム(WHS:World Handicap System)が2020年よりスタートされ、世界統一のハンディキャップシステムとして世界各国が導入を始めている。

〔2〕プライベート・ハンディキャップprivate handicap
 一般的に使われているハンディキャップシステムで、仲間内などで行われるゴルフコンペで多く使用されていて、ハンディキャップも仲間内で決められる。ほかにペリア方式と新ペリア方式がある。ペリア方式とは18ホールのなかで6ホールを隠しホールとして設定し、この隠しホールのスコアを基準にハンディキャップが決められる。隠しホールでのスコアが良いとハンディキャップが少なくなり、逆にスコアが多いとハンディキャップも多くなるようになっている。そして、現在主流となっているのが新ペリア方式であり、ペリア方式の隠しホールが6ホールなのに対して、12ホールの隠しホールが設定されている。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

アマチュアとプロフェッショナル

アマチュアゴルファーとは一般的ゴルファーのことをいい、ゴルフで報酬や営利を目的としない一般的なプレーヤーである。日本ゴルフ協会(JGA)のJGA競技や各地区で行われているゴルフ競技に参加することができる。プロフェッショナルゴルファーは営利や報酬を目的とし、日本プロゴルフ協会(PGA)のプロテストに合格したトーナメントプレーヤーズと、ティーチングプロ実技審査に合格し、ティーチング実技講習に合格した者と、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)のプロテスト、ティーチングプロ実技審査に合格し、PGA主催のティーチングプロの実技講習に合格した者をいう。これらの者にはライセンスカードが発行され、海外でもプロフェッショナルとして活動ができる。男子プロは日本ゴルフツアー機構(JGTO)のクオリファイングトーナメントを通過した者がジャパンゴルフツアーJAPAN GOLF TOURに出場することができ、女子はLPGA会員でクオリファイングトーナメントを通過した者がLPGAツアーに出場できる。アマチュアゴルファーはプロのオープントーナメントに参加できるが、賞金はもらえない。プロはアマチュアのゴルフ競技に参加することはできない。日本のゴルフ場やゴルフ練習場で正式なゴルフレッスンを行っているのはPGA会員とLPGA会員である。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

用具

用具の使用

プレーヤーはラウンド中に自分のプレーを援助する用具(たとえば、手袋やサングラス)を使用することができるが、ゲームの挑戦に不可欠である技術や判断の必要性を人工的になくしたり(たとえば、手首などを固定させる用具や風速計、傾斜を測定する用具を使用すること)、軽減する用具(クラブと球以外)を使用したり、ストロークを行うときに異常な方法で用具(クラブと球を含む)を使用することはできない。「異常な方法」とは、意図された使用方法とは根本的に異なる方法や、ゲームをプレーすることとは通常受け入れられない方法を意味する(たとえば、脇(わき)にタオル等をはさんでスウィング中に脇が締められるようにするなど)。用具の使用についてはラウンド中に認められるものと認められないものがあるが、それは次の通りである。

〔1〕距離や方向の情報
 距離計測機やコンパスを使い距離や方向の情報を得ることは認められている。ただし、距離計測機で距離だけでなく高低差まで計測することは認められていない。

〔2〕風や他の気象条件に関する情報
 電気機器などを使い、気象状況(風速を含む)を入手したり、コースの気温、湿度を計測することは認められているが、コースで直接風速を計測したり、風向きを確かめるために人工物を使用することは認められていない。たとえば人工物の粉やハンカチを風になびかせて確認することである。しかし、自然物である芝などをちぎって風向きを確認する方法は認められている。

〔3〕手袋やグリップ補助具
 用具規則に適合している単純な手袋を使用したり、松脂(まつやに)、粉をつける、または、グリップの周りにタオルやハンカチを巻くことは認められているが、用具規則に適合していない手袋を使用したり、手の位置やグリップ力に不当な援助を与える用具を使用することは認められていない。

〔4〕ストレッチ機器とトレーニングまたはスウィング補助器具
 一般的なストレッチのための用具でストレッチだけを行うことは認められているが、ストレッチ機器でゴルフスウィングに関連するようなストレッチ方法は認められていない。また、ゴルフ用にデザインされている練習機器やスウィング補助器具(位置や向きを確認するためのアライメント棒や加重ヘッドカバー)も、ラウンド中に使用することは認められていない。

〔5〕医療上の理由のために使用する用具
 病状を緩和するためにサポーターやテープ、包帯などを使用することはできるが、ゴルフスウィングの補助などを目的にそれらを使用することは認められていない。たとえば手首が痛むのでサポーターやテープを使用することはできるが、ゴルフスウィングを有利にする目的で手首を固定したりして、それらの用具を使用することはできない。

〔6〕障がいをもつプレーヤーのための用具規則の修正
 障がいをもつプレーヤーが、障がいをもっていない他のプレーヤーや、同じ障がい、または異なるタイプの障がいをもつプレーヤーとフェアにプレーできるようにするよう規則を修正する直接の方法である。そうした規則の修正が2023年から規則25として新たに加わった。

[飯田雅樹 2023年2月16日]

クラブ

プレーヤーはストロークを行うとき、用具規則に適合しているクラブを使用しなければならない。また、クラブを改造したり、偶然に変えられたときであっても、規則に適合するものでなければならない。しかし、適合していたクラブが通常の使用で摩耗して変わったとしても、そのクラブは適合クラブのままである。また、ラウンド中にクラブが損傷した場合は、その損傷したクラブを続けて使うこと、そして、可能であれば修理して使うこともできる(プレーを不当に遅らせないことが条件)。ただ、ラウンド中にクラブの性能特性を故意に変えることは許されていない。たとえば鉛を貼(は)ったりはがしたり、専用レンジを使い、ロフト角度(クラブフェースの傾斜角)を変えたり、クラブフェース(ヘッドの打撃面)の向きを変えたりすることはできない。そして、プレーヤーがラウンドで持ち運べるクラブの本数は14本までと制限されており、14本に達していない状態でラウンドを始めた場合は14本に達するまで追加することはできるが、14本に達したとき、それ以上追加することはできない。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

クラブの進化

ゴルフクラブは1本のシャフトと一つのクラブヘッドからなっている。ゴルフクラブは大きく分けて、ウッドwood、アイアンiron、ユーティリティクラブutility clubがある。昔のゴルフクラブではシャフトにヒッコリー材が使われていたが、1900年代前半にスチールシャフトが出現し、1928年にはジーン・サラゼンによってサンド・ウェッジsand wedgeが開発され、バンカーからのショットの難易度が劇的に変わった。また、1960年代にはゴム製のグリップも登場し、キャビティー・バック・アイアンcavity back ironも出現した。ウッドでは長年パーシモン・ヘッドpersimmon headが使われていたが、1970年代にはメタルウッドも現れ、1990年代に登場したチタンヘッドドライバーが現在の主流となっている。チタンヘッドは素材が軽いため、大きなクラブヘッドがつくられるようになり、長いシャフトでも楽に振れるようになり、飛距離を稼げるようになった。また、クラブセッティングも時代とともに変わってきていて、フェアウェイウッドfairway woodやロングアイアンlong ironがだんだん姿を消し、ユーティリティクラブが主流となってきている。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

クラブの特徴

種類別に分けると、ウッド、アイアン、ユーティリティクラブ、パターである。

 ウッドには、1番ウッド(ドライバー)、2番ウッド(ブラッシー、フェアウェイウッド)、3番ウッド(スプーン、フェアウェイウッド)、4番ウッド(バフィー、フェアウェイウッド)、5番ウッド(クリーク)があり、近年では、7番、9番、11番ウッドも主流になりつつある。

 1番ウッド(ドライバー)はゴルフをプレーするなかで、もっとも飛距離がでるクラブであり、ロフト(角度)が小さいので、ティーアップできるティーショットで使われるのが一般的である。ロフトにはメーカーにもよるが、9度、10度、11度といろいろあり、ロフトが小さいほど球があがりにくく、初心者にはロフトが大きいものがやさしく打てるため向いている。現在のドライバーはロフト調整ができたり、クラブヘッドの向きを調整できるクラブも多くあるので、これらのクラブで自分にあったクラブを選ぶことが重要である。また、クラブ選びで重要なのがシャフト選びである。シャフトにもいろいろ種類があり、長いシャフトもあるし短いシャフトのものもある。クラブの長さは18インチ(0.457メートル)以上で、パターを除いて48インチ(1.219メートル)以下と規則で決められている。一般的には短いほうがやさしいが飛距離が出にくいといわれている。また、シャフトの重量は重すぎると振り切れなくなり、軽すぎるとスウィングが不安定になりやすい。シャフトはフレックス(硬さ)が重要であり、メーカーによって多少の違いもあるが、一般的にフレックスの種類は6種類ある。シャフトが柔らかい順番に、L(レディス)、A(アベレージ)、R(レギュラー)、SR(スティッフレギュラー)、S(スティッフ)、X(エキストラ)である。ドライバーのヘッドスピードにあったフレックスを選ぶのが重要である。シャフトのトルク(シャフトのねじれ)は球が曲がりづらいのが3.5以下であり、少し曲がっても飛距離を重視する場合には3.5以上のトルクのシャフトが選ばれる。また、シャフトにはキックポイント(シャフトが一番しなるポイント)にも種類があり、グリップ側が硬くクラブヘッド側が柔らかい先調子タイプ、グリップ側が柔らかくクラブヘッド側が硬い元調子タイプ、グリップ側とクラブヘッド側が硬い中調子タイプ、グリップ側とクラブヘッド側が柔らかいダブルキックタイプの4種類のタイプがある。先調子タイプは球があがりやすく初心者向きであり、元調子タイプは球があがりすぎるのを嫌う上級者タイプである。中調子タイプはタイミングがとりやすく、ダブルキックタイプはタメがつくりやすく、球のつかまりやすさに優れているシャフトタイプといわれている。

 フェアウェイウッドはドライバー以外のウッドであり、2番ウッドはほとんど出回っておらず、一般的には3番ウッド(スプーン)から下のクラブをさす。形はドライバーに似ているがクラブヘッドは番手(数字)が大きいほど小さくなっている。芝の上から直接打てるクラブで飛距離が出しやすい。ロフトが大きいほど球があがりやすいが、シャフトが長く重心も深いため、むずかしいクラブといえる。最近の傾向としてはフェアウェイウッドが少なくなってきていて、かわりに多くなってきているのがウッド型ユーティリティクラブである。フェアウェイウッドよりもやさしく打てるので多く使われるようになっている。フェアウェイウッドよりもシャフトが短い分簡単に打てるが球があがりづらく、飛距離も出しづらい。次にアイアン型ユーティリティクラブがあり、アイアンに似たつくりになっている。ロングアイアンよりも球があがりやすいが、ウッド型ユーティリティクラブより球があがりづらい。

 アイアンはロングアイアン、ミドルアイアン、ショートアイアンとある。ロングアイアンは1番アイアンから4番アイアンまでのクラブであり、ミドルアイアンは5番アイアンから7番アイアンまでのクラブである。8番アイアン、9番アイアン、ピッチング・ウェッジをショートアイアンとよび、ロングアイアンは球があがりづらくむずかしいクラブであるため、ロングアイアンを使う人はほとんどいなく、ユーティリティクラブが主流となっている。メーカーのアイアン販売も6番アイアンからの販売が主流となってきている。アイアンは番手が大きい数字のクラブほどロフトが大きく球もあがりやすいので、グリーンを直接ねらうクラブである。次にロフトが大きいのがアプローチ・ウェッジであり、もっともロフトが大きいクラブはサンド・ウェッジである。ロフトが大きいアプローチ・ウェッジやサンド・ウェッジはグリーンの近くからのアプローチで多く使われている。とくにサンド・ウェッジはバンカーショットのために開発されたクラブであり、バンカーから打つときに適していて球がもっともあがりやすいクラブである。ただ、最近はアプローチ・ウェッジ、サンド・ウェッジとはよばずにロフト角度でよぶ傾向にある。メーカーにもよるが一般的にアプローチ・ウェッジはロフトが50度から54度、サンド・ウェッジは55度から60度までのものをいう。アイアンセットはピッチング・ウェッジまでがセット売りの主流となっているのでそれより下の番手は単品のウェッジを組み合わせるのが主流となっている。50度、54度、58度と組み合わせたり52度、56度、60度と組み合わせる組み方もある。

 パターは絶対に必要なクラブである。パターにもさまざまな種類があるが、代表的なタイプとしてまずあげられるのがピンタイプである。パターの前後が細長く、前後に重量があるため芯(しん)を外して打ってもまっすぐ転がりやすく初心者向きといえる。また、スイートエリア(芯)が広くて目標に対して構えやすい特徴をもっている。次にL字タイプでシャフトとヘッドを見ると、名前の通りLの字に似ていてL字タイプといわれている。アイアンの形にも似ているのでショットの感覚で打ちたい人に向いている。マレットタイプは重心距離が深いためまっすぐ打ち出しやすいといわれていて、ヘッドが大きく重いためヘッドの重さで距離を出しやすくなってもいる。ネオマレットタイプはマレットタイプに似て、ヘッドの重さで距離が出しやすく、まっすぐに打ち出しやすい。形状もスクエア(正方形)に近いため、目標に構えやすく、ヘッドが大きいためミスヒットしてもまっすぐ転がりやすい。センターシャフトタイプのパターは、名前の通りシャフトがヘッドのセンターにあり、シャフトとクラブフェースが一直線に見えて引っかけづらいという特徴をもっている。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

ラウンドのプレーで使用される球は用具規則に適合する球を使用しなければならない。球の重量は1.620オンス(45.93グラム)以下でなければならず、球の直径は1.680インチ(42.67ミリメートル)以上でなければならない。また、球は球対称(回転させても同じ形で、どの角度から見ても同じ形状であること)な球の特性とは異なる特性をもたせるようにデザインされたり、製造されたり意図的に手を加えられたものであってはならない。球の初速も決められた数値を超えてはならず、球の飛距離もR & AとUSGAによって承認された機器でテストされたときに、その規定された距離を超えてはならないなど多くの規定があり、それらをクリアした球が用具規則に適合された球となり、ラウンドのプレーで使用できる球となる。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

球の進化

ゴルフで使用される球は最初、堅い木を丸く削られてつくられたものを使用していたが、15世紀中ごろからフェザーボール(革の中へ羽毛を詰めたもの)が使われるようになり、19世紀中ごろからガッタパーチャ球gutta-perchaballが出現した。これは、熱帯植物の樹脂からとったゴム様のグタペルカ(ガッタパーチャー)を丸めたものであった。さらに、球の表面に刻み目をつけることによって、高く、まっすぐに飛ぶことが発見されたのが現在のディンプル(くぼみ)の始まりである。1898年、現在の球の前身ともなるハスケル球が現れ、飛距離が著しく増大した。これは、固いゴム芯をインドゴムの細糸で巻き、グタペルカの皮膜でくるんだものである。1990年代は糸巻ボールが主流になり、2000年代に入るとウレタンカバーの多層構造(ソリッドコア)タイプが出現し、飛距離と耐久性に劣る糸巻ボールは衰退していった。現在では、カバーが硬く中身が柔らかい飛距離重視のディスタンス系とカバーが柔らかく中身が硬いスピン系の球が主流となってきて、昔から比べてもゴルフ用具のなかでもっとも進化したのがゴルフボールではないかといわれている。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

スパイクシューズ

ゴルフ場は天然の芝でつくられているので、ゴルフをプレーするのに非常に滑りやすくなっている。そこで滑らないように靴底に鋼製スパイクをつけたスパイクシューズが誕生し、長い間メタルスパイクが使われていた。しかし、現在はグリーンを傷つけてしまうためほとんどのゴルフコースで禁止されている。現在多く使用されているのがソフトスパイクであり、プラスチックや樹脂でつくられている。以前と違い鋲(びょう)が爪のような形をしているため、鋲が芝をしっかりつかめるようになり滑りにくくなっている。スパイクレスシューズは鋲がついていないタイプで、底の部分は滑りにくい加工がされている。鋲がついていないので普段から履けるようになっている。また、現在では以前から使われている靴ひもタイプに加え、ダイヤル式タイプも使用されるようになっている。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

基本技術

地上に静止しているゴルフボールをヒットするにはどんな打ち方をしても自由であるが、距離と方向の両方を正しく決めるには、クラブを一定した軌道に沿ってスウィングswingするのがもっとも効果的であるから、スウィングの基本的な原則はほとんど定石化されている。ただしプレーヤーの体格や力量は千差万別なので、その相違によって枝葉的調整が加味される。したがって、一流プロたちが一見異質のスウィングをしているようでも、その肝要なポイント、とくにインパクト(クラブが球に当たる瞬間)ではまったく符節があっている。要するに、ゴルフ・スウィングは、腕とクラブによる円運動であって、その軌道上にあるボールがクラブヘッドによって打ち出される受動作用にすぎないと理解すべきであろう。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

グリップ

grip クラブと人体を結合させるには両手でクラブを握る必要があるが、この握り方がグリップであって、正しいグリップはもっとも基本的なものである。グリップには次の3種があるが、いずれの場合も、右利きの者は右手が左手よりも下方のヘッドに近くなるから、そのために右肩がすこし下がるのが自然な形となる。

〔1〕ナチュラル・グリップnatural grip 野球のバットを握るときのように10本の指全部でシャフトを握るので、ベースボール・グリップの別称もある。

〔2〕インターロッキング・グリップinterlocking grip 右小指と左人差し指とを絡み合わせて握る方式で、手が小さく指の短い人が用いると両手の締まりがよくなり、スウィング中に緩まない効果がある。

〔3〕オーバーラッピング・グリップoverlapping grip 右の小指を左の人差し指の上に重ねて握る方式で、右利きの人は左利きに比べて右手が強力なのでそれを制約し、両手の一体化に有効である。イギリスのハリー・バードンがこのグリップを広めたためにバードン・グリップとも称され、もっとも多用されている。

 なお、以上のグリップに共通するものとして、指を主体にして握る方法をフィンガー・グリップfinger gripといい、親指の付け根のたなごころで握るのをパーム・グリップpalm gripという。また、標準グリップをスクエア・グリップ、右手を開き左手をかぶせた握り方をストロング・グリップ、逆に右手をかぶせぎみにした握り方をウィーク・グリップという。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

アドレスとスタンス

スウィングは飛球線と平行の形をとり、それを行うために足場を固める構えをスタンスstanceという。バランスを保つためには、スウィングが大きいほど足幅を広げる必要があるが、自由なスウィングとバランスの保全は、「ドライバーのアドレスでほぼ肩幅の広さ」が定説である。スタンスには次の3種がある。

〔1〕スクエア・スタンスsquare stance 両足のつまさきを結んだ線が飛球線と平行になっている標準型で、左のつまさきを右よりもやや開いてセットすることで腰の回転を助成する。

〔2〕クローズド・スタンスclosed stance 右足をわずかに手前に引き、両つまさきを結んだ線が飛球線に対して右から左へクロスするようになる立ち方で、ボールに左回転を与えてフックhookさせる打ち方を容易にする。

〔3〕オープン・スタンスopen stance 左足をわずかに手前へ引き、両つまさきを結んだ線が飛球線に対して左から右へクロスする立ち方で、ボールに右回転を与えてスライスsliceさせる打ち方が容易となる。

 どのスタンスをとるにしても、体重は両足の内側後半にかかっている感じで、両足に均分され、両膝(ひざ)をわずかに曲げる程度に緩め、しっかりと地面に定着されている感じが望ましい。ボールの位置は、左かかとの内側から飛球線と直角に交わる地点が標準で、クラブをボールの直後にあてがい、スウィングをおこすアドレスaddress(準備体勢)がとられる。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

バック・スウィング、ダウン・スウィング

back-swing、down-swing スウィングは、後方への振り上げ(バック・スウィング)と前方への振り下ろし(ダウン・スウィング)の二つの部分で構成されるが、切れ目のない単一動作(ワンピース・スウィング)と理解すべきである。スウィングは、地面に対して傾斜した平面を形成するが、長身の者ほどその角度が直立し、これをアップライトuprightといい、短躯(たんく)または肥満の者は水平に近くなり、これをフラットflatという。いずれもスウィングは適正なタイミングによってコントロールされていなくてはならない。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

ドライバーショット

driver shot ドライバーは長打のティーショット用であるが、ティーアップの高さとボールの位置によって弾道の高低を変化させたり、またキャリー(滞空距離)をも変えることができる。スウィングの弧を大きくするほどクラブヘッドの速度が増して距離も増大する。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

フェアウェーウッドショット

fairway wood shot 比較的ボールのライがよい場合の長打用で、ドライバーと異なり、ややダウンブロー(打ち下ろし)ぎみのスウィングでボールをとらえないと上昇力がつかない。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

ウッド型ユーティリティクラブによるショット

ウッド型ユーティリティクラブは、基本的にフェアウェイウッドが短くなったものであり、フェアウェイウッドの打ち方とあまり変わらないが、打ち込まずに滑らすように打つのがこつである。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

アイアン型ユーティリティクラブによるショット

アイアン型ユーティリティクラブは、アイアンに比べて、ソールが幅広になっているため、無理せずに球があがるので、滑らすように払い打ちをするのがこつである。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

アイアンショット

アイアンは、標的をねらうための正確さと、ライの悪いボールをたたき出すために発案されたもので、打ち方は、ウッドが箒(ほうき)とすれば、アイアンははたきと考えると、その性能を理解しやすい。

〔1〕ロングアイアンlong iron 1~4番までをロングアイアンと称しているが、ユーティリティクラブと比べても球が上がりづらく、スウィングにばらつきがあると使いこなせないためセット売りからは外れている。

〔2〕ミドルアイアンmiddle iron 5~7番のアイアンをさし、一般的に130~160ヤードの距離に用い、より正確なショットが要求される。ショットの特徴は、ダウンブローにショットすることによってボールにバックスピンをかけてグリーン上で止まる球を打つことである。

〔3〕ショートアイアンshort iron 8、9番アイアンとピッチング・ウェッジをさし、通常130ヤード以下の距離に用いられる。ショートアイアンの目標は旗(ピン)そのものであり、そのためにはいっそうボールにバックスピンをかけて、着地後ただちに停止できるショットが要求される。ダウンブローが有効で、クラブ自体もその作用を助ける構造となっている。

〔4〕ショート・アプローチshort approach グリーンから80ヤード以内のショットは多彩で、バラエティーがあるが、そのためのクラブとしてアプローチ・ウェッジとサンド・ウェッジがある。メーカーによっては52度とか58度といったように度数だけで表示しているものもある。

(1)ランニングショットrunning shot 3分の2以上を転がして旗まで寄せる打法で、方向の正確さという点でもっとも安全であり、使用クラブは普通ミドルアイアンやショートアイアンが多用される。

(2)ピッチショットpitch shot ボールを高くあげてボールを止めるショット。立ち木やバンカーを越して旗(ピン)をねらう場合に用いられるが、熟練の技が要求される。

(3)ピッチ・エンド・ランpitch and run ピッチとランニングとを併用したショットで、効果も両者の特質を兼備している。練習によって使用クラブ(通常ショートアイアン)のキャリーとランの割合を知っておくことが必要である。

(4)チップ・ショットchip shot ごく短い距離をランニングで寄せる打法をいう。

〔5〕パッティングputting 「パットに定型なし」というのが定説となっているのは、ボールをカップに沈めるのが究極目的だからである。しかし正しいパットの原則は、パターフェースが直角を保って、距離に応じて必要な速度で動くことであって、それをいかなる場合も実行できるようにするには独自の型をもつ必要がある。それらを大別すると三つの型となる。手首型(タップ式)は、フォロースルー(インパクトからフィニッシュまでの間)を小さくして手首の屈折でボールをピシッと打つので、必然的にヒット性が強くなる。腕型(ストローク式)は、両腕をラインに平行に動かしながらパターヘッドを振り子のように移動させる。肩型は、肩の回転に多く依存し、距離の大小をその回転度で決める。パットはフィーリング(感覚)が大きな要素を占め、さらにグリーンの傾斜と芝目を読んでその変化に適応したパッティングをしないと、単に打ち方が正しいだけでは成功率を高められない。

〔6〕特殊なライからのショット
(1)登り坂(アップヒルup-hill) 左足が右足よりも高いライでは、体重が右荷重になるので、できるだけそれを避ける立ち方をし、ボールも右足寄りに置く。フックがかかりやすいので目標を右側に設定する。

(2)下り坂(ダウンヒルdown-hill) 右足が左足よりも高くなるライでは、体重が左荷重になり、スウィング中に左へよろけ、トップボールになりやすい。それを避けるために右足寄りにボールを置く。スライスがかかりやすい。

(3)前上り(ハイ・ライhigh lie) ボールが両足よりも高い(たとえば土手の斜面など)場合には、ボールと体との間隔が近くなり、スウィングもフラットにならざるをえないので、体重のバランスに注意し、クラブを短めに持ち、コンパクトなスウィングを心がける。フックがかかりやすいので目標を右側に設定する。

(4)前下り(ロー・ライlow lie) ボールが両足よりも低い場合には、ボールとの間隔が遠くなるので、広めのスタンスをとって低い姿勢をとり、その姿勢を崩さずにボールをとらえる。(2)と同様に打球はスライスぎみになる。

(5)草深いヘビー・ラフheavy rough ボールが長い雑草の中に沈んでいるときは、ボールとクラブフェースの間に草の葉が挟まるから、飛距離は極端に短縮され、ボールも低くなる。ロフトの大きいクラブで脱出を優先させる。

(6)林間・樹木の交錯したなかから脱出する場合 梢(こずえ)を越すにはクラブフェースを極端にオープンに構えてカットショットし、木の枝下を低く抜くにはロフトの少ないロングアイアンを短く持ってコンパクト・スウィングに努め、脱出することに重点を置く。

〔7〕バンカーショットbunker shot ボールの手前の砂へクラブを打ち込み、砂といっしょにボールを飛ばす打法が使われ、これをエクスプロージョンexplosion(爆打)という。ボールの飛距離は削りとる砂の量とスウィングの大きさで決まる。それにはまず砂質を見分けることと、砂の状態を測知することが必要であるが、クラブを砂に触れてはいけないから、しっかり足場を固めると同時に、砂の状態を察知する。砂は産地によって礫(こいし)状のものから粉状のものまでいろいろあり、クラブヘッドへの抵抗を異にし、また乾湿によって砂の締まりぐあいが変わってくるので、いっそう複雑さを増す。エクスプロージョンにはサンド・ウェッジが使用されるが、固く締まった砂ではフランジ(輪ぶち)の厚いサンド・ウェッジははね返りが強すぎて危険の度合いも多く、この場合には9番アイアンなどで、砂を浅くとる。

〔8〕天候の影響下にあるショット
(1)風 天候の変化のうちもっともショットに影響するのは風であって、天然の障害の一種とみなされる。風に対するには、それに逆らわずにむしろ利用することである。向かい風(アゲインスト)や横風ではできるだけ低い球が有効で、それにはボールの位置を普通よりやや中央寄りにする。追い風(フォロー)では、できるだけ高い球を打てばそれだけ距離も伸びる。ティーアップを高めにする。

(2)雨 地面湿潤でショットのランが殺され、またダフのミスを誘発しやすいので、できるだけボールをクリーンに打つ。

[水谷 準・塩田 正・飯田雅樹 2020年4月17日]

球質とミスショット

打たれたボールはスウィングの独自な型によって、それぞれの球質をもつ。厳密にはストレート・ボール(まっすぐ飛ぶボール)はなく、通常どちらかに曲がる。右打ちの場合、まっすぐ飛んで、ボールが落ちぎわにすこし右にカーブするものをフェード・ボールfade ball、左にカーブするものをドロー・ボールdraw ballという。いずれも正しいボールで、球質に応じてコース戦略を考える。しかし、スウィングの軌道が飛球線をクロスしたり、クラブフェースがボールにスクェア(まっすぐ)に当たらないと、ボールは方向が狂ったり、右・左に大きくカーブしたりする。意識的(インテンショナル)に行うものを除いて、この曲がり方が著しい場合にはミスショットで、次のようなものがある。

〔1〕スライスslice 右へカーブするショットで、スウィングの軌道がアウトサイド・イン(ボールと目標を結んだ線の外側からクラブがボールに当たること)に入り、クラブフェースがオープン(右向き)でボールに接し、カットするからである。

〔2〕フックhook インサイド・アウト(ボールと目標を結んだ線の内側からクラブがボールに当たること)に入り、クラブフェースがクローズ(閉じて左向き)に当たると左カーブのショットとなる。

〔3〕プルpull(ひっかけ) スウィングの軌道が飛球線の外側から内側へクロスし、ボールは左へ直行する。著しいものをスマザーという。

〔4〕プッシュpush(押し出し) スウィングの軌道が飛球線の内側から外側へクロスし、ボールは右へ直行する。

〔5〕ダフduff ボールを直接打たず手前の地面をヒットしたため必要な距離が得られないミスで、しばしば犯す者をダッファーという。

〔6〕トップtopping ボールの赤道から上部へクラブのブレードが当たるとボールは上がらずにゴロになる。腕が縮むのと、上体が左へ流れる(スウェイ)のが原因であることが多い。

〔7〕スカイングskying(俗称、てんぷら) クラブヘッドがボールの底部を打つために高い球となる。スウィングを力むと上体が沈むし、手首の使用が過多になっておこる例が多い。

〔8〕シャンクshank ソケットsocketともいう。ボールがフェースの中心を大きく外れ、あるいはシャフトの挿入部(ソケット)に当たり、ボールは極端に右へ飛び出す。原因のうちもっとも多いのは、手だけでクラブを送り出す「手打ち」スウィングになることである。

[水谷 準・塩田 正 2020年4月17日]

競技会

メジャートーナメント

世界四大メジャートーナメントとよばれているのは、開催月順に並べると次の通りである。

(1)マスターズトーナメントMasters Tournament(4月開催)
 他のメジャーと違い毎年アメリカ、ジョージア州のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで同クラブの主催で開催される。1934年にボビー・ジョーンズらによって創設された全世界でもっとも注目されるゴルフトーナメントといえる。

(2)全米プロゴルフ選手権 PGA Championship(5月開催)
 PGAチャンピオンシップともよばれる。1916年の創設で、全米プロゴルフ協会の主催で開催される。2019年から5月に開催時期が変更された(以前は8月開催)。

(3)全米オープン選手権 U. S. National Open Championship(6月開催)
 アメリカ国内をはじめヨーロッパ1か所、アジア1か所(イギリスと日本)で予選会があり、最終予選会を通過した選手が出場できる。アマチュアも1.4以下のハンディキャップをもっていれば出場できるオープン競技である。1895年の創設でUSGA(全米ゴルフ協会)の主催で開催される。

(4)全英オープン選手権 The Open Championship/British Open(7月開催)
 正式名称はジ・オープン・チャンピオンシップで、ブリティシュ・オープンともよばれている。1860年の創設、世界最古のゴルフトーナメントでR & A(ロイヤル・アンド・エンシェント)の主催で開催される。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

グランドスラム

Grand Slam。スポーツ界で初めてグランドスラムということばが用いられたのは、1930年に当時28歳でアマチュアであったボビー・ジョーンズが、当時の世界四大タイトル、全英アマチュア、全米アマチュア、全英オープン、全米オープンを1年間ですべて制覇したことから使われるようになった。現在の四大メジャートーナメントは前述のように変わっているが、1年間でグランドスラムを達成したのはボビー・ジョーンズただ一人である。複数年を要してメジャートーナメントを制覇した者をキャリア・グランドスラムとよび、ボビー・ジョーンズ(アメリカ)、ジーン・サラゼン(アメリカ)、ベン・ホーガン(アメリカ)、ゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)、ジャック・ニクラウス(アメリカ)、タイガー・ウッズ(アメリカ)らが達成している。女子のメジャートーナメントは現在、ANAインスピレーション、全米女子プロゴルフ選手権、全米女子オープン、全英女子オープン、エビアン選手権と五大トーナメントで、キャリア・グランドスラムの達成者はルイーズ・サックスLouise Suggs(1923―2015。アメリカ)、ミッキー・ライトMickey Wright(1935―2020。アメリカ)、パット・ブラッドリーPat Bradley(1951― 。アメリカ)、ジュリ・インクスターJuli Inkster(1960― 。アメリカ)、カリー・ウェブKarrie Webb(1974― 。オーストラリア)、アニカ・ソレンスタムAnnika Sorenstam(1970― 。スウェーデン)の6名がいる。シニアのメジャートーナメントはシニア・プレーヤーズ選手権、全米プロシニアゴルフ選手権、全米シニアオープン、全英シニアオープン、リージョンズ・トラディションの五大トーナメントで、キャリア・グランドスラムの達成者はベルンハルト・ランガーBernhard Langer(1957― 。ドイツ)ただ一人である。日本人で海外メジャーの優勝者は、1977年に全米女子プロを制した樋口久子(ひさこ)(1945― )、2013年全米プロシニアを制した井戸木鴻樹(いどきこうき)(1961― )、2019年全英女子オープンを制した渋野日向子(しぶのひなこ)(1998― )、2021年にマスターズ・トーナメントを制した松山英樹の4名である。

[飯田雅樹 2021年4月16日]

日本のメジャートーナメント

代表的な二大競技会が日本オープン(ジャパンオープン、1927年創設)と日本最古のゴルフトーナメントでもある日本プロゴルフ選手権(ジャパンプロ、1926年創設)であり、ほかに日本ゴルフシリーズ(1963年創設)、日本プロゴルフマッチプレー(1975年創設、現在休止中)と日本ゴルフツアー選手権(2000年創設)がある。女子ゴルフのメジャートーナメントは日本女子オープン(1968年創設)、日本女子プロゴルフ選手権(1968年創設)、ワールドレディスチャンピオンシップ(1973年創設)、LPGAツアーチャンピオンシップ(1979年創設)がある。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

日本のゴルフの現状

日本は狭い国土でありながらアメリカ、イギリスに次いで現在世界第3位のゴルフ場数を誇っている。第二次世界大戦前の1940年(昭和15)には64コースまで増え、2002年(平成14)の2460コースをピークに2018年時点で2248コースまで減少している。ゴルフ場の多い都道府県は多い順番に北海道、兵庫県、千葉県である。北海道は減少傾向にあるが千葉県などは逆に増加傾向にある。

 ゴルフ人口もバブル時代に最高潮を迎え、時代とともに減少傾向にある。とくに20代から30代の男性が減少している。それは自家用車をもたない若者が増えたのも原因の一つと考えられているが、逆に女性や時間とお金に余裕がある60代以上のゴルファーが増えているという統計もある。また、バブル期と比べてもプレーフィー(ゴルフコースの使用料)も低くなってきている。地方のコースなどはかなりの低料金となっているが、オリンピック正式種目にもかかわらず、1回プレーするだけで300円~1200円と、高額なゴルフ場利用税がいまだに残っているため、廃業せざるを得ないゴルフ場も増えており、ゴルフ人口の減少にもつながっている。

 また、1926年に日本最古のゴルフトーナメントである日本プロゴルフ選手権が開催されてから多くの企業がスポンサーとなり、多くのゴルフトーナメントが開催されてきた。ゴルフトーナメントは他のプロスポーツに比べても賞金が高く、これによって多くの若者がプロゴルファーを目ざし、バブル期には青木功、尾崎将司、中嶋常幸、倉本昌弘などスター選手が活躍し、40試合近くのトーナメントが開催された。バブルの崩壊とともに徐々に衰退したが、最近では石川遼(プロトーナメント初優勝時、高校生)や池田勇太(ゆうた)(1985― )、アメリカPGAツアーで優勝している松山英樹などの活躍で盛り返し始めている。女子プロゴルフは歴史が少し浅く、全米女子プロに優勝した樋口久子、1987年アメリカLPGAツアーの賞金女王岡本綾子(あやこ)、1993年アメリカLPGAツアーでの優勝を果たした小林浩美(ひろみ)(1963― )などの活躍で人気も出始め、横峯(よこみね)さくら(1985― )、宮里藍(みやざとあい)(1985― )(プロトーナメント初優勝時、高校生)などの出現でブレークした。現在では鈴木愛(1994― )や、2019年全英女子オープンで優勝した渋野日向子をはじめ黄金世代、プラチナ世代とよばれる20歳前後の女子プロゴルファーの活躍で、男子トーナメントよりも人気が出ている。

[飯田雅樹 2020年4月17日]

代表的な日本のゴルフ団体

(1)公益財団法人日本ゴルフ協会(JGA:Japan Golf Association)
 日本のアマチュア競技や日本オープン、日本女子オープン、日本シニアオープンといったナショナルオープンの主催などゴルフ競技の健全なる発展、国際交流、ジュニアゴルファーの育成やR & AとUSGAでつくられたゴルフ規則の翻訳をして、ゴルフ規則の普及に努めている。

(2)公益社団法人日本プロゴルフ協会(PGA:The Professional Golfers' Association of Japan)
 文部科学省管轄のもと日本唯一の「プロゴルファー」の団体である。日本プロゴルフ選手権、日本のシニアツアーの主管でもある。プロテストを実施しプロテストに合格した者、ティーチングプロの実技審査を合格した者をプロゴルファーとよぶ。2019年の時点で日本には5500人以上のプロゴルファーとよばれるPGA会員が存在していて、日本のゴルフ場やゴルフ練習場でのゴルフレッスン活動の頂点に位置している。

(3)一般社団法人日本女子プロゴルフ協会(LPGA:The Ladies Professional Golfers' Association of Japan)
 日本の女子プロゴルファーの団体である。LPGAツアーの主管である。プロテストとティーチングプロのテストを実施して合格した者が女子プロゴルファーであり、LPGA会員となる。そのLPGA会員のなかでクォリファイングトーナメントを通過した者がLPGAツアーに出場できる。同じ略称の全米女子プロゴルフ協会と区別するためJLPGAとも表記される。

(4)一般社団法人日本ゴルフツアー機構(JGTO:Japan Golf Tour Organization)
 日本の男子ゴルフツアーを主管し、クォリファイングトーナメントを実施している。それに通過した者がJGTOツアー、AbemaTV(アベマティーブイ)ツアーとよばれる2部ツアーに出場できる。

[飯田雅樹 2020年4月17日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ゴルフ」の意味・わかりやすい解説

ゴルフ
golf

ゴム製の小さなボールをクラブで打ち,コース上の18,もしくはそれ以上のホール(穴)に順次入れ,打数の多少によって勝敗を争うスポーツ。

ゴルフの起源について三つの説があるが,どの説も明確な根拠のあるものではない。第1は,スコットランドの羊飼いの牧童たちが羊を追いながら石を転がして遊んだという説,第2のオランダを起源とするものは,オランダの球戯,ヘットコルフェンhet kolvenというホッケーに似たゲームが変化しスコットランドにわたったという説,第3は,紀元80年,ローマ帝国のユリウス・アグリコラ将軍がスコットランドを征服したとき,羽毛をつめた革製のボールを木杖で打つパガニカpaganicaという球戯を行い,3世紀にわたるローマ軍の長期占領中に土着してゴルフになったという説である。

 いずれにしても14世紀中ころから,現行の方法によるゴルフが行われていたことは,スコットランドのグロスター大聖堂ステンド・グラスに,ボールに向かってスイングしている男の図が描かれていることで明らかである。ゴルフは貴族を中心に発達したものとみられ,1457年に国王ジェームズ2世が,ゴルフの流行は武術,弓術の訓練を妨げるとして,12歳から50歳までの男子にゴルフ禁止令を出している。同様の禁止令は70年,91年にも出され,以後も安息日のプレーの禁止などが記録に残されている。

 18世紀に入ると,ゴルフを愛好する貴族たちがゴルフ場を中心としてクラブをつくるようになった。1744年にオナラブル・カンパニー・オブ・エジンバラ・ゴルファーズHonourable Company of Edinburgh Golfers(後のミュアフィールド・ゴルフクラブ)の第1回会合が開かれ,エジンバラ市会から贈られた銀製カップを賞品として争奪戦が行われた。これが記録にのこる最初のゴルフクラブとゴルフ競技である。ついで54年にはスコットランドのセント・アンドルーズにセント・アンドルーズ・ゴルフクラブ(後のローヤル・アンド・エンシェント・ゴルフクラブ)が創設された。ルール,ゲーム方法も整備され,1744年のエジンバラ・ゴルファーズの創立時に13ヵ条のルールが決められ,64年にはセント・アンドルーズで1ラウンドが22ホールから18ホールに短縮されるなど,ほぼ現在のゴルフゲームの原形が完成した。そして1834年,ウィリアム4世がセント・アンドルーズ・ゴルフクラブにローヤル・アンド・エンシェント・ゴルフクラブ・オブ・セント・アンドルーズRoyal and Ancient Golf Club of St.Andrewsの名称を与え,全国のゴルフクラブの統轄,規則の制定,選手権の開催と運営に当たらせることになった。第1回全英オープンゴルフ選手権大会は60年にスコットランドのプレストウィックで開催され,8人のプロによって争われた結果,ウィリー・パーク・シニアが優勝している。また85年に第1回全英アマチュアゴルフ選手権大会が,93年に第1回の全英女子ゴルフ選手権大会が行われるなど,ゴルフは隆盛期を迎えた。

 ゴルフが本格的にアメリカで行われるようになったのは,1888年ニューヨーク州ヨンカーズにセント・アンドルーズ・クラブが創立されてからである。そして94年にアメリカゴルフ協会が生まれ,翌95年に第1回全米オープンゴルフ選手権大会がロード・アイランド州ニューポート・ゴルフクラブで行われている。ゴルフはアメリカでも急速に普及し,1905年に初のアメリカ,イギリス対抗競技が行われるまでになった。アメリカの技術的な進歩はめざましく,13年の全米オープンではアメリカの無名の20歳の青年,F.D.ウィメットがイギリスのトッププロ,バードンHarry Vardonを破り,また21年の全英オープンでは初めてアメリカのプロ,J.ハチソンがタイトルを奪った。こうして,ゴルフの主流はイギリスからアメリカに移り,30年に全英オープン,全米オープン,全英アマチュア,全米アマチュアの各選手権をとり,年間グランドスラムを達成して〈球聖〉といわれたボビー・ジョーンズBobby Jones(1902-71)らを輩出し,また第2次世界大戦後,S.スニード,B.ホーガン,A.パーマー,J.ニクラウスなどの名選手が生まれている。アメリカでのプロ・トーナメントは1899年にウェスタン・オープンが創設されて以後徐々に増加し,1938年には年間38試合に達した。97年現在,47試合を数え,1月から10月末までツアーとして全開催地を移動しながらアメリカ全土で行われている。また,ヨーロッパ各国ではヨーロッパ・ツアーも行われている。

 ヨーロッパ・ツアーは順調に発展し,その範囲も旧東ヨーロッパ圏はもちろん,中近東,アフリカ,アジアにまで拡大している。選手層も厚くなり,かつてはイギリス中心だったものが最近ではスウェーデン,スペイン,ドイツ,イタリアなどからも優秀な選手を生み出している。旧共産圏からも近いうちに優秀な選手が出現するだろう。アメリカ,日本,ヨーロッパ,南アフリカ,オーストラジアン(オーストラリア,ニュージーランドなど)が現在,世界五大ツアーと呼ばれる。

日本には,1901年に神戸に住むイギリス人茶商のA.グルームによって導入され,六甲山に4ホールのゴルフコースをつくり,03年に神戸ゴルフ俱楽部を創設した。ついで06年に横浜在住のイギリス人を主体にニッポン・レースクラブ・ゴルフィング・アソシエーションが設立され,この二つのクラブが中心となって07年に日本アマチュアゴルフ選手権大会が始まった。なお,同選手権大会の日本人の優勝は,18年の第12回大会が最初である。日本人による最初のクラブは1914年に発足した東京ゴルフ俱楽部(東京駒沢)で,その後,鳴尾,舞子,程ヶ谷など7コースが生まれ,24年に日本ゴルフ協会が設立された。そして27年に第1回の日本オープン選手権競技が行われ,アマチュアの赤星六郎が優勝している。ゴルフコースの増加は,同時にプロゴルファーの誕生をうながし,プロ第1号の福井賞治をはじめ,宮本留吉,浅見緑蔵,戸田藤一郎といった優秀なプロが続々と登場した。ゴルフは日本人の上流階級に広がり,39年にゴルフクラブは74を数えたが,第2次世界大戦によってゴルフは敵性スポーツとみなされてコースは軍用地に接収され,また田畑となり激減した。

 第2次大戦後,残されたゴルフコースは米軍のレクリエーション施設として使用されていたが,50年に日本ゴルフ協会主催の選手権競技が再開され,57年には日本プロゴルフ協会が設立されるなどして,ゴルフ界は新しい時代を迎えた。57年に霞ヶ関カンツリー俱楽部(埼玉県)で行われた第5回カナダカップ(現,ワールドカップ)で,日本代表の中村寅吉,小野光一組が優勝したことが契機となり,ゴルフは国民的なスポーツとして認知され,ゴルファーが急増し,ゴルフ場も続々と新設された。ゴルフの大衆化のなかで,男子プロのトーナメントが盛んになり,アメリカ同様のツアー体制をとって,97年現在,年間36試合を行っている。この他,グローイング・ツアー,シニア・ツアーなどすべてを合わせると年間79試合になる。外国からの一流選手が訪れる一方で,青木功,中島常幸,尾崎将司らがイギリス,アメリカのトーナメントで活躍するなど,日本のゴルフは世界のトップレベルに成長している。なお,日本人選手で全米プロゴルフ協会のツアー・ライセンスを得て本格的にツアーに参戦したのはこれまで9人。しかしツアーに勝ったのは1983年ハワイアン・オープンの青木功だけである。青木は92年から満50歳以上が資格のあるシニア・ツアーに進み,97年までに7勝。とくに97年はヘイル・アーウィン,ギル・モーガンについで賞金ランキング3位に入る健闘をみせた。

 ゴルフは当初から女性の参加があり,1893年にイギリス女子ゴルフ連盟が結成されるなど,女性ゴルファーも組織化されていった。しかし本格化するのは第2次世界大戦後で,1946年に全米女子オープンゴルフ選手権大会が始まり,49年にアメリカ女子プロゴルフ協会が設立された。現在ではアメリカの女子プロは男子なみのトーナメント・ツアー体制を組んでいる。日本では67年に日本プロゴルフ協会内に女子部が置かれ,74年に日本女子プロゴルフ協会が発足した。現在はアメリカに次ぐトーナメント体制がとられ,97年現在36試合を行っている。選手のレベルも向上し,樋口久子,岡本綾子がアメリカのトーナメントで優勝したほか,近年では小林浩美,平瀬真由美がアメリカの女子プロゴルフ協会ツアー選手として参加し,それぞれ優勝をかざった。国内では福島晃子のような大型選手も生まれ,日本ツアーをリードしている。

各ホールの構造は,ティーグラウンド(ボールの打出し場所),フェアウェー(芝を刈り込んだ正しい順路),ラフ(雑草の生えた地域),ウォーターハザード(海,池,川などの障害物),バンカー(砂をしいたくぼ地の障害物),グリーン(直径10.79cmの穴をそなえ,ボールがころがりやすいように芝を刈り込んだ場所)からなり,これを1区画とし,原則的には18ホール(1ラウンド)を一単位としている。各ホールには距離に応じて基準となる打数(パーpar)が定められている。パーは熟練したプレーヤーならば達成可能な打数で,グリーン上を2打として算定している。男女の距離別のパーは表のとおり。18ホールのコースは,普通はパー3のショート・ホールが4,パー4のミドル・ホールが10,パー5のロング・ホールが4で,パーの合計が72になるようにつくられている。なおパーより1打少なくホールアウトした場合をバーディbirdie,2打少ない場合をイーグルeagle,3打少ない場合をアルバトロスalbatrossといい,パー3のショート・ホールの1打がカップインした場合をホールインワンという。パーより1打多い場合をボギーbogey,2打多い場合をダブルボギーdouble bogey,3打多い場合をトリプルボギーtriple bogeyという。

 コースは元来,自然の地形をそのまま利用していた。初期のスコットランドのコースは,ほとんどがリンクスランドと呼ばれる海岸ぞいの砂丘地帯にあり,ラフや障害となるハザード(バンカーやウォーターハザード)が自然のままに,多く残されていた。その伝統に立つイギリスのコースは,フェアウェーが狭く,うねりに富み,〈リンクス〉と呼ばれる。ミスショットをした場合に厳しい〈加罰型〉のコースであった。加えて,風が強い海岸ぞいのコースのため,弾道の低い球で正確に攻めるやり方が主流であった。

 一方,アメリカでは,人工的なコース建設が進み,イギリスに比べ温暖な気候や散水設備などの技術革新により,柔らかな芝地の多いコースが増えていった。柔らかな芝をもち,かつフェアウェーの広いコースのため,飛距離を伸ばし,高い球で直接ピンをねらうという攻め方がとられた。世界的にアメリカ型のコースが広がる契機となったのは,ボビー・ジョーンズがイギリスの名コース設計家アリスター・マッケンジーと共につくったオーガスタ・ナショナル・ゴルフコース(アメリカ,ジョージア州)で1934年から開始されたマスターズ・トーナメントが好評を博したことにある。以後,アメリカ型コースが世界の主流となり,日本においてもアメリカ型コースが普及している。

ゴルフの用具は,長い歴史のなかで技術の進歩とともに大きく性能が変わり,ゴルフスイングやコースの設計までも大きく変えてきている。

ボールの材質は,最初は堅い木を丸くしたものを使っていたが,15世紀中ごろには革のなかに羽毛を詰めたフェザーボールがあらわれた。19世紀に入ってガタパチャボールgutta-percha ballが出現した。これは熱帯植物の樹脂からとったゴム状のものを丸めたものであった。この当時から表面に刻み目(ディンプル)をつけることによって,高くまっすぐに飛ばすためのくふうがなされた。このディンプルは,その後,形状,深さなどが改良され,ゴルフボールの飛距離を生む大きな要素となっている。1898年,現在のボールの原型といえるハスケルボールが生まれた。これはゴム芯に細い糸ゴムを巻きつけたもので,表皮にはガタパチャをかぶせた。現在は芯が液状(リキッドセンター)と固体(ソリッドセンター)の2種類がある。現在は糸ゴム,表皮のゴムとも高性能なものに変わり,当時のものと比べられないような飛距離を生み出すようになってきた。ゴムの性能の進歩は,芯,糸ゴムを使わないツーピースボールを生み出し,飛距離,性能も糸巻きボールに劣らないものにまでなった。ボールのサイズは,スモールサイズ(直径4.11cmより小さくないもの)とラージサイズ(直径4.27cmより小さくないもの)の2種類(重さはいずれも45.92gより重くないもの)あるが,現在の公式トーナメントではイギリス,アメリカ,日本ともラージサイズが公認球とされている。

ゴルフクラブの形や構造は規則によって規定されている。クラブはグリップ,シャフト,ヘッドの三つの部分から成り,ヘッドが木製のものをウッドクラブ,金属製のものをアイアンクラブという。ウッドクラブは基本的に1番(ドライバー)から5番(クリーク)まであり,アイアンは1番から9番までと,アプローチ用のピッチングウェッジ,バンカーから打つサンドウェッジがあり,さらにグリーン上で使うパターがある。ヘッドの大きさ,ロフト(角度)などの違いにより,求める距離によって使い分ける。ゴルフが発達したころは,シャフトがヒッコリーでヘッドも木製であったが,ガタパチャボールが出現したのと同じころに,アイアンクラブが実用化された。20世紀に入ってシャフトもスチールシャフトに変わり,1928年にイギリスゴルフ協会によって公認された。また,30年代に競技に携行するクラブの本数制限(14本以下)が実施された。シャフトの素材も,カーボンファイバーをはじめ,チタンなどが使われ,また,ウッドクラブのヘッドもパーシモン(柿材)が主流ではあるが,金属製,カーボンファイバーなどが使われるようになった。

ゴルフの競技方法には,ストロークプレーstroke playとマッチプレーmatch playの二つがある。ストロークプレーとは1ラウンド(18ホール),またはそれ以上の決められたホール数を,最も少ない打数でホールアウトした競技者を優勝とする競技方法であり,マッチプレーとはホールごとに勝負を決めていき,決められたホールを終えて勝ちホールの多いほうを勝者とする方法である。かつて,ストロークプレーの優勝者には金メダルを授ける習慣があり,優勝者はメダリストと呼ばれ,競技方法はメダルプレーといわれた。ゴルフの競技は当初,個人対抗のマッチプレーであったが,参加競技者が多ければ勝抜き戦は決勝を終えるまで時間がかかるために,一度に多人数参加しても所定のラウンド数で競技が終了するストロークプレーを採用することが多くなってきた。

 1860年の第1回全英オープンはプレストウィックで行われたが,当時,プレストウィックは12ホールしかなく,これを3ラウンド,36ホールの競技として行った。現在のように4ラウンド,72ホールになったのは92年ミュアフィールドで行われたときからである。全米オープンも第1回大会(1895)からストロークプレーで行われている。全米プロは現在はストロークプレーで行われているが,1916年第1回大会以来57年までの41年間,マッチプレーで行われた。この変更は,アメリカのプロ選手がマッチプレーを嫌ったこと,テレビ中継に不適当なことなどの理由からである。

 現在,マッチプレーで行われている世界的な試合としては,全米アマチュア選手権がある。日本では最初からストロークプレーが中心となっているが,日本プロゴルフ選手権大会は第6回大会(1931)から28回大会(1960)の間,マッチプレーで行われていた。しかし,現在マッチプレーを見直そうという動きがあり,毎年10月にはロンドンで世界マッチプレー選手権大会が行われ,日本でも日本プロゴルフマッチプレー選手権が開催されている。アマチュアの試合ではマッチプレーが多く用いられている。各ゴルフ場のクラブ選手権ではストロークプレーで予選を行って人数を限定し,その後はマッチプレーでクラブチャンピオンを決める方法が行われている。

 その他,次のような競技方法がある。(1)ツーボール・スリーサムtwo ball threesome 1人対2人で争い,2人組は1個のボールを交互に打つマッチプレー。(2)ツーボール・フォアサムtwo ball foursome 2人対2人で各組が1個のボールを交互に打つマッチプレー。(3)フォアボールマッチfour ball match 2人ずつがペアとなり各自のボールを打ち,2人のうちの少ない打数同士で勝負するマッチプレー。エキジビションマッチや,アメリカ・ヨーロッパ対抗のライダーカップにもこの試合形式がとり入れられている。(4)ツームストーンtomb-stone コースのトータルのパーと自分のハンディキャップを加えた数だけ,打ち終わったところに旗を立ててプレーを終了する。出発点からより遠距離に旗を立てたほうが勝つ。なおハンディキャップとは,コースのパーを平均して何打超えてラウンドするかを示す数字で,原則として0~36までのランクがあり,その人の力量がわかる。打数(グロススコア)からハンディキャップを引いたものをネットスコアといい,アマチュアの場合はそのスコアを他の人との比較の対象とする。(5)ポイントターニーpoint tourney ホールのパーに対して自分のストロークがパーならば2点,1打多ければ1点,少なければ3点と点数をつけ,そのトータル点数で勝敗を争う。

ゴルフルールが他のスポーツのルールと根本的に相違し,また最もきわだった特徴としてあげられるのは,ジャッジメントを審判が行うのではなく,プレーヤー自身が審判となるということである。打数,ペナルティ(罰)はみずからが判断し,打数を申告し罰を課していく。それゆえにゴルフは〈紳士のスポーツ〉といわれる。また,ゴルフは自然のコースを対象に行われるスポーツであり,自然の状態をそのままにプレーすることが基本となる。そのため,ホールの第1打を放ったときにボールはインプレーとなり,グリーン上を除きそのホールを終えるまでどのような状態であろうとボールに直接触れてはならず,あるがままの状態でプレーすることが原則となっている。しかし,コースが特別な状態でプレーに不公平が起きたり,また,救済することが,ゴルフの基本的精神に抵触しないときは,特別ルールが設けられる。たとえばフェアウェー上に降雨等の水たまりがある場合は,罰なしで移動できる。これは,前者がゼネラルルールと呼ばれるのに対してローカルルールと呼ばれる。ルールは競技方法や用具について定められているが,イギリスゴルフ協会(ローヤル・アンド・エンシェント・ゴルフクラブ)が時代の流れによって適時,変更,改正を行ってきた。ゴルフの主流がアメリカに移ってからも,アメリカゴルフ協会と話し合いつつ,ルールを改正し,現在では4年ごとに大幅に改正,その他の年に,若干の語句の改正を行っている。日本では,それらの動向にあわせつつ,日本ゴルフ協会がルールを定めている。

芝の上に静止しているボールを打つことはだれでもできることだが,より正確に,より遠くにボールを飛ばすには,基本的な技術の習得が必要である。一流選手のスイングは,それぞれの体格,個性によって異なっているようにみえるものの,基本は同じである。ゴルフスイングは体を軸として,腕とクラブの円運動であり,そのクラブヘッドの軌道上にあるボールを打ち出す動作である。この円運動がつねに一定であれば,それだけボールを正確にとらえる確率は高くなってくる。スイング中,軸を動かさず体の回転を行い,また体の各部分をクラブをスムーズにスイングさせるため,ヘッドスピードを増すために使うことが技術向上につながってくる。

クラブの握り方をグリップという。これによってスイングも変わってくるとまでいわれ,正しいグリップが正しいスイングの第一歩である。グリップには3種ある。(1)ベースボールグリップ 野球のバットを握るように10本の指で握るグリップ。現在ではほとんど使われていない。(2)インターロッキンググリップ 左手の人差指と右手の小指をからませるグリップ。手の小さな人にはいいとされているが,必ずしもそうではなく,J.ニクラウスがこのグリップを用いているのは有名である。(3)オーバーラッピンググリップ 左の人差指と中指の間に右手の小指を重ねるグリップ。イギリス人のH.バードンが考案したのでバードングリップともいわれる。小指を重ね左右の手に一体感をもたせているが,このグリップを用いる選手も多い。またグリップのかぶせ方として,左手をかぶせ右手を開いたのをフックグリップ,左手を浅く握り右手をかぶせたグリップをウィークグリップと呼ぶ。スクエアグリップは右手の親指と人差指でつくられるV字形が右肩と右耳の間を差すものをいう。

ボールを打つ体勢をアドレスという。スタンス(足幅)の標準は肩幅で,右肩は左肩よりもやや下がり,膝を柔らかく曲げ高いいすに腰かけるような体勢をとる。スタンスは,両足のつま先を結んだ線が飛球線と平行なスタンスをスクエアスタンスといい,体重はドライバーショットでは右足にややかけ,アイアンでは中央にかける。オープンスタンスは飛球線に対して両足のつま先を結んだ線が左に向く。フェード系のボール(落ち際に右に切れる打球)を打つ人に多い。また,ショートアプローチ,バンカーショットではオープンスタンスをとり,腕の振り抜きをスムーズにする。クローズドスタンスはオープンスタンスとは逆に,左足が前に出て右足を引くスタンスで,ドロー系のボール(落ち際に左に切れる打球)を打つ人に多い。

まず体の回転と腕の動きに一体感をもたせながらクラブを上げていく。ニーアクション(膝運動)を使って体重を右足にかけ,腰,肩を十分にまわすバックスイングの頂点(トップ・オブ・スイング)では腰は45度,肩は90度回転し,背中が目標方向に向く。左腕を伸ばし,グリップの位置は右肩と右耳の中間になる。このトップ・オブ・スイングで力を蓄え,そして,下半身のリードでダウンスイングに入る。体重は右足から左足に移しながら,トップの緊張を生かした腕でひっぱり下ろして,球を打って(インパクト),一気にフィニッシュまで体を回転し,クラブを大きくスムーズに振り切る。このようにクラブを一つの軌道で動かすワンピーススイングが基本となる。また,ゆっくりとしたリズム,タイミングでスイングすることを忘れてはならない。

パットに型なしといわれる。グリーン上のボールをホールカップに沈めることが目的であり,個人個人が最も安定する型をもつ。しかし,ストロークする方向がねらった方向に真っすぐであること,クラブヘッドのフェースがラインに対して直角であることの2点が基本である。距離に応じてストロークの強さを調整することがたいせつである。

男子プロでは,全英オープン,全米オープン,マスターズ・トーナメント,全米プロを世界四大トーナメント(メジャートーナメント)と呼び,他の競技と区別している。そして四大トーナメントを1年間ですべて制覇することをグランドスラムという。だが現在までこれを達成したものはなく,多年にわたり制覇したものもジーン・サラゼンGene Sarazen(1902-99),ベン・ホーガンBen Hogan(1912-97),ゲーリー・プレーヤーGary Player(1935- ),ジャック・ニクラウスJack Nicklaus(1940- )のみであり,また同一年に3タイトルを制覇したものは,1953年のベン・ホーガン(全米プロは不出場)のみである。

 四大トーナメントがそろったのは,1934年のマスターズ開設以降であり,また四大トーナメントが意識されるようになったのは,60年にアーノルド・パーマーArnold Palmer(1929- )がグランドスラム達成を目標にしてからである。飛行機交通の便も悪かった60年代以前の名選手にとっては,グランドスラムのチャンスは少なかった。なお1930年にボビー・ジョーンズがアマチュアとしてグランドスラムを達成しているが,これは,全英オープン,全米オープン,全英アマチュア,全米アマチュアの4競技である。

(1)全英オープンゴルフ選手権大会The British Open 1860年に始まった世界で最も歴史が古く,単にThe Openとも呼ばれる。伝統的に海岸ぞいのコースのみで行われており,現在はセント・アンドルーズなどの7コースで順次開催されている。フェアウェーが狭く,ラフの深い伝統的なコースで行う点も,このトーナメントの価値を高めている。日本選手では1982年の倉本昌弘の4位が最高である。

(2)全米オープンゴルフ選手権大会U.S.National Open Championship アメリカゴルフ協会設立の翌年の1895年にスタートした選手権大会。コースは固定されていないが,4年前に開催コースが決まり,以後,本大会にふさわしくコースを整備することになっている。シード選手は少なく,最近では6000人以上が参加する予選を勝ち抜かねばならず,勝つことが最も難しい,といわれる。1980年に青木功がジャック・ニクラウスと優勝を争い,2位となっている。

(3)マスターズ・トーナメントMasters Tournament 1934年にボビー・ジョーンズがみずからつくったアメリカ,ジョージア州のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブAugusta National Golf Clubに有力選手を招待し,トーナメントを開いたことから始まった。これらの選手たちをマスターズ(名手たち)とマスコミが呼んだことから,37年より正式な名称となった。ジョーンズの設計した小川が流れる美しいコースで,毎年,招待された世界の有力選手が競う点に特色がある。日本からも毎年2人招待されている。

(4)全米プロゴルフ選手権大会PGA Championship 1916年に開設されたが,アメリカの国内プロの資格者に限られていたため,前記3トーナメントに比べ軽視されていた。しかし近年は,外国の優秀選手を招待し,価値を高めている。16年から57年まではマッチプレー形式だったが,58年からはストロークプレー形式にかわっている。優勝者にはアメリカ・プロツアーに10年間シード権(1970年以前は生涯シード権)が与えられる。なおコースは固定されていない。

 その他の大トーナメントとして,アメリカでは高額賞金で知られるトーナメント・プレーヤーズ選手権大会,ニクラウスがホストをつとめるメモリアル・トーナメントなどが知られている。また世界各国のプロの代表が参加するものとしてワールドカップ(1966年以前はカナダカップ)がある。日本の大トーナメントとしては,日本オープン選手権大会(1927創設),日本プロゴルフ選手権大会(1926創設),日本プロゴルフマッチプレー選手権(1975創設),ゴルフ日本シリーズ(1963創設)などがある。1970年代からはスポンサード・トーナメントが飛躍的に増え,男子では賞金額も1億~2億円規模になった。とくに毎年11月に〈インターナショナル・ツアー〉の名称で行われる太平洋マスターズ,ダンロップ・フェニックス,カシオ・ワールドは,海外からも多数の選手が参加して大詰めの国内ツアーを盛り上げている。

1900年ごろから在留外国人によって移入されたゴルフは,第2次大戦前は一部上流階級のスポーツであったが,60年代の高度経済成長のなかで大衆化した。97年現在,全国に約2300のゴルフ場があり,年間の総入場者数は1億人に達している。ここから推測するとゴルフ人口は約900万人になり,ごくまれにプレーをする人を含めた潜在人口は1000万人に達すると考えられる。競技人口,プロのトーナメント数と賞金,テレビ番組数などを総合すると,アメリカに次ぐゴルフの盛んな国といえる。

 大衆化されたとはいえ,日本のゴルフにはイギリスやアメリカにみられないいくつかの特徴がある。一つは地価が高いためコース建設費がかさみ,その結果,入会金やビジターのプレー料金が著しく高いことである。現在,コース建設費は土地購入費も含め,一般に1ホール4億~5億円かかるといわれ,18ホール造成費とクラブハウス建設費で軽く100億円以上が相場となっている。それらの費用負担のため,ゴルフクラブの会員になるには数百万円以上が必要となる場合が多い。さらに,歴史があり,交通の便のよい名門クラブは2000万~3000万円に達する例もある。1990年代に入ってバブル経済がはじけ,入会金などの相場は一時期に比べるとかなり値下がりしたが,それでもアメリカなどゴルフ大衆国からみれば格段に高い。したがってゴルフを楽しみたいと思っても,簡単に会員になれないことになる。個人購買力に限界があることから,日本独自の制度として,企業がメンバーとなる法人会員制がある。この制度は財政的にはメリットが大きいが,自分のクラブという意識を弱めることとなり,外国のようなクラブライフが育ちにくくなっている。また会員制度に基づかないパブリックコースが少ないこともあり,プレー料金は外国に比べて高い。

 それらの悪条件にもかかわらずゴルフが普及したのは,前述したように企業が法人会員となり,接待やつきあいにゴルフを利用したためである。その結果,会社員を中心に急速に広がっていった。また競技自体としては,コースを歩くことが中心で,激しい運動ではないことから,年齢や体力にかかわらず楽しめること,ハンディキャップの導入により初心者もベテランもゲームに参加できるなどの長所があることも普及の理由である。
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百科事典マイペディア 「ゴルフ」の意味・わかりやすい解説

ゴルフ

小球をクラブ(打棒)で打ち,ホール(穴)に入れるまでに要する打数の少なさを競うスポーツ。正規のコースはアウト(前半)およびイン(後半)の各9ホール,計18ホールよりなり,各ホールはティーグラウンド(最初に球を打ち出す場所),フェアウェー(芝を刈りそろえた順路),ラフ(雑草地),ウォーターハザード(池,小川など),バンカー(砂のくぼ地),グリーン(芝を特に短く刈りそろえ,直径約10.8cmのホールを設けたところ)で構成される。各ホールの長さは一定せず,おのおの標準打数(パー)が定められている。クラブには頭部が木製のウッドクラブ(近年はチタン,合金などのメタル製やカーボンファイバーと金属の複合素材のものに取って代わられているが,呼称はウッド),金属製のアイアンクラブ,グリーン上で球をころがすためのパターがあり,競技では14本まで使用が許される。競技法には,総打数の少ないほうを勝ちとするストロークプレー(メダルプレーとも)と,各ホールごとに勝負を決め,勝ったホール数を競うマッチプレーがある。また公式の試合では認められないが,一般にはハンディキャップ制が行われる。判定を審判によらず,プレーヤー自身の申告によって行うのがきわだった特徴といえる。ゴルフの起源についてはスコットランド発祥説,オランダ発祥説などがあるが未詳。14世紀中ころからほぼ現行の方法によるゴルフが行われ,18世紀にはスコットランドやイングランドの貴族たちのクラブを中心にスポーツとしての形態が整えられた。日本では1903年に兵庫県の六甲山にゴルフ場が作られ,神戸ゴルフ倶楽部が創立されたことに始まる。プロ・スポーツとしてのゴルフも盛んで,アメリカ,ヨーロッパ,日本を中心に多数の試合が開催。〈メジャー〉と呼ばれる4大大会は,マスターズ,全米オープン,全米プロ,全英オープン。男子のほか女子,男子シニア(50歳以上)がそれぞれ競う。オリンピック種目としては,1900年パリオリンピック,1904年セントルイスオリンピックで採用され,その後長く除外されていたが,2016年のリオデジャネイロオリンピックで復活することになっている。
→関連項目尾崎将司杉原輝雄中村寅吉ホールインワン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴルフ」の意味・わかりやすい解説

ゴルフ
golf

ボールをクラブで打ち,ホールに入れるまでの打数の少なさを競う競技でマッチプレーストロークプレーに大別される。スコットランド発祥説が有力で,15世紀頃現在のような競技形式が整えられた。 1754年,22人の貴族によりセントアンドルーズにクラブが結成され,1834年ウィリアム4世が,これにロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフクラブの名を与えた。同クラブは全イギリスのゴルフクラブを統轄し,成文のルールを制定した。 19世紀末アメリカに普及し,次いで世界各国に広まった。日本では 1901年イギリス人 A.グルームが神戸六甲山に最初のゴルフコースをつくり,1907年最初の日本アマチュア選手権大会が開催された。 1924年日本ゴルフ協会結成。主要な国際大会としては全英オープンゴルフ選手権大会全米オープンゴルフ選手権大会全米プロ選手権マスターズトーナメントがある。

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デジタル大辞泉プラス 「ゴルフ」の解説

ゴルフ〔ゲームソフト〕

任天堂が発売するゲームソフト。スポーツゲーム。1984年5月発売。ファミリーコンピュータ用。その後、アーケードゲームやファミコンディスクシステムなどに移植。

ゴルフ〔自動車〕

ドイツのフォルクスワーゲンが1974年から製造、販売している乗用車。3ドア、5ドアハッチバックを中心とする。同社を代表する大衆車として世界的に知られる。

ゴルフ〔万年筆〕

イタリア、スティピュラ社の万年筆の商品名。「アカデミア」シリーズ。ゴルフをしている人がモチーフ。

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世界大百科事典(旧版)内のゴルフの言及

【セント・アンドルーズ】より

…宗教改革の影響をうけ1559年に大聖堂が破壊され,以後衰退する。しかし,1754年のセント・アンドルーズ・ゴルフクラブ(後にローヤル・アンド・エンシェント・クラブ)の創立を契機にゴルフのメッカとなり,また海岸保養地として再び繁栄をとり戻した。市内には大聖堂の一部や13世紀の古城,1410年に起源を有するスコットランド最古のセント・アンドルーズ大学がある。…

※「ゴルフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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