サタン(英語表記)Satan

精選版 日本国語大辞典 「サタン」の意味・読み・例文・類語

サタン

〘名〙 (Satan) (本来は「敵対するもの」の意) キリスト教で、悪魔をいう。
※引照新約全書(1880)馬太伝福音書「サタンよ退け主たる爾の神を拝し惟(ただ)之にのみ事(つか)ふべしと録されたり」

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デジタル大辞泉 「サタン」の意味・読み・例文・類語

サタン(Satan)

キリスト教で、悪魔のこと。→悪魔3
[類語]ディアブロディアボロデビルデーモンルシフェル

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サタン」の意味・わかりやすい解説

サタン
さたん
Satan

旧約聖書』では、もと「敵対する者」を表す普通名詞であったが、のち超自然的存在として神に敵対する者、すなわち悪魔を表す固有名詞となった。「ヨブ記」におけるサタンは、人の罪を神に訴え、人とさらに間接的には神に敵対する霊的存在である。「創世記」3章では、サタンは蛇として、エバを誘惑して神の命令に背かせる。『新約聖書』では、イエスを試み(「マタイ伝福音書(ふくいんしょ)」4章1~11)、ユダの心に入ってイエスを裏切らせ(「ルカ伝福音書」22章3)、パウロ伝道を妨害し(「テサロニケ書Ⅰ」2章18)、絶えず人を神から離反させようとする(「ペテロ書Ⅰ」5章8)。聖書では、サタンは神と二元的に対立するものではなく、神の制約下にあり、最後にはキリストに滅ぼされる存在として扱われている(「ヨハネ黙示録」20章1~10)。

野口 誠]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サタン」の意味・わかりやすい解説

サタン
Satan

ヘブライ語tānに由来し「敵対する者」を表わす。旧約聖書では「敵」「仇」など人間について用いられた例も多いが,『ゼカリヤ書』 (3・1~2) ,『ヨブ記』などユダヤ教後期の聖典では,超人間的存在とされている。しかし,旧約聖書では,これもヤハウェによる試練として人間に課されるものであり,新約聖書にみられる超自然的「悪魔」としてのサタンの観念は,善悪二元論に立つペルシア宗教の影響である。新約聖書では,サタンは神の計画の成就を妨げ,キリストを試し,信仰者を誘惑するものとされるが,ここでも神と二元的に対立するものではなく,最後には神の支配下におかれ,滅ぼされる。イスラム教でもユダヤ教,キリスト教,ゾロアスター教などの影響を受け,悪をなすシャイタン (サタン) を教義のなかにもっている。これらは古来文学や絵画などで描かれ,ルキフェル,メフィストフェレスなどは有名である。

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百科事典マイペディア 「サタン」の意味・わかりやすい解説

サタン

聖書的宗教における悪魔の代表的存在。欧語はヘブライ語に由来し,アラビア語でもシャイターン。原義は〈(神に)敵対する者〉。しばしば悪魔たちの長と考えられ,堕落天使ルシファー(ルキフェル)とも同一視される。図像作品多数。
→関連項目ジンミカエル

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世界大百科事典 第2版 「サタン」の意味・わかりやすい解説

サタン【Satan】

ユダヤ教・キリスト教で,人間を神の道からそらせようとする力が擬人化されたもの。〈敵対するもの〉という意味のヘブライ語śāṭānに由来する。イスラムではシャイターンshayṭānという。悪魔・悪霊などと同一視され,その概念は必ずしも一定ではない。サタンは,旧約聖書では神に従属するものとされ,神対サタンという二元論は避けられている。新約聖書中の,イエスが病人から悪霊を追い出す行為は,サタンの国の崩壊と神の国の到来につながるものであった。

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世界大百科事典内のサタンの言及

【悪魔】より

…【吉田 禎吾】
[キリスト教と悪魔]
 西洋には例えば英語のdemon,devil,satanなど〈悪魔〉と訳される語は多い。そのうちサタンはヘブライ語に由来し,もとは〈敵対者〉の意味だが,キリスト教信仰の伝承過程で〈神の敵対者〉のなかの最高存在を指すようになった。旧約聖書ではなお,裁判所への告訴者,主の言説に対する反対者の性格が強いが,新約聖書では人類を誘惑して堕落させる悪しき霊の最高神格,あるいは〈この世の君(きみ)〉(《ヨハネによる福音書》12:31),〈死の権力(ちから)を有(も)つ者〉(《ヘブル人への手紙》2:14)と目されている。…

【顔】より

…天地創造は無にして全なる状態から大いなる顔が生まれることに始まる,とするカバラ思想は,セフィロトの木によって旧約聖書も解釈している。 サタンが三つの顔をもつことは中世を通じて民衆に信じられていた。一つは赤面でヨーロッパまたは憎悪を象徴し,一つは黄白色でアジアまたは無力を,一つは黒くアフリカまたは無知を表すとする。…

【コウモリ(蝙蝠)】より

…魔女は通常コウモリに化身して家々を訪れるとされ,中世キリスト教美術ではコウモリの翼をもつ悪魔が盛んに描かれた。これはさらにダンテの《神曲》によって,コウモリの翼をもつ魔王サタンの姿に定着された。錬金術のシンボルとしてはカラスとともに黒(原質)を示し,両性具有の寓意にも用いられた。…

【竜】より

…大天使ミカエルの竜退治をはじめ,聖人に殺される竜はみな〈悪〉の象徴である。このため竜はサタンとも同一視された。《ヨハネの黙示録》には七つの頭,10の角,七つの王冠を持つ巨大な竜が出てくる。…

※「サタン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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