改訂新版 世界大百科事典 「サトウキビ」の意味・わかりやすい解説
サトウキビ (砂糖黍)
sugar cane
Saccharum officinarum L.
別名カンショ(甘蔗。かんしゃの慣用読み)。糖料作物として重要なイネ科の大型の多年草。茎は円柱形で直立し,多くの節をもち,高さ2~4m,直径は太いものになると4cm以上となり,外皮は蠟物質でおおわれる。葉は各節に互生し,葉鞘(ようしよう)は茎を抱き,葉身は長さ0.5~1m,幅1.5~5cm。成熟すると茎頂に長さ50~60cmになる大型の円錐花序をつける。1穂に2万4000~3万の小穂があるが,一般に自家不稔である。小穂は両性の1花からなり,種子はきわめて小さく,長さ1mmにみたない。
原産はインドのガンジス川沿岸と考えられていたが,ニューギニア原産で,熱帯太平洋の島々や東南アジアに古くに栽培が広がり,各地で種間雑種が生じ,現在の栽培サトウキビnoble caneが作り出され,それが現在では全世界の熱帯で広く栽培されるようになったと推定される。企業的なプランテーションで大規模栽培されているのも,そのような交雑によって育成された品種群である。しかし,1609年に,中国福建省から奄美大島に初めて渡来したサトウキビは,やや細い茎で繊維も多いチクシャ(竹蔗)S.sinense Roxb.と中国で呼ばれる型のもので,この種はインドから中国大陸南部で古くから栽培されていたものである。明治時代台湾を領有した日本は,台湾製糖会社を設立して,台湾でのカンショ栽培を企業化して,国内の砂糖の需要に応じた。そのため内地での栽培はすたれたが,第2次大戦後,鹿児島県の島嶼(とうしよ)部や沖縄地域で栽培がさかんになった。主要生産国はインド,ブラジル,キューバ,パキスタン,メキシコ,中国など。日本の生産量は需要の1/10にみたず,年間約270万tを輸入している。
サトウキビは年平均気温が20℃以上必要で,17~18℃の等温線が栽培の限界といわれ,現在の栽培分布域は北緯35°から南緯37°の間にある。また年間降雨量は1200~2000mmぐらいが最適で,生育期間に多く,成熟期にはやや乾燥することが必要である。茎を2~3節に切って植えつけると,節から発芽,発根する。また収穫後の切株から再び芽をもえ出させる株出し法も行われる。一般に,植えてから1年ないし1年数ヵ月で収穫期となる。出穂前,茎の成熟につれて糖濃度が高まり,10~20%になった時期に刈り取る。収穫はなたで地ぎわから刈る。最近は機械(ケーンハーベスター)が普及してきた。刈った茎から葉をとり除く作業を省力化するため,ハワイなどでは畑に火を放って葉を焼き払ってから機械で刈る。頂部と葉を除いた茎は,ただちに工場に運ばれ,汁液(粗糖汁)を絞りとる。粗糖汁はいくつかの工程を経て精製,結晶化され,精製砂糖が生産される。
サトウキビの野生種には,ボルネオからニューギニア,さらにニューヘブリデスに分布するS.robustum Brandes & Jesw.ex Grassl.とアフリカからインド,東南アジア,南西太平洋諸島にまで広く分布するS.spontaneum L.の2種がある。前者はマレーシアからポリネシアに栽培されていたサトウキビnoble caneの,また後者はインドから中国大陸や東南アジアの一部で栽培されていたサトウキビ(竹蔗)のもとになった種であるが,現在の栽培サトウキビは栽培の2種と野生2種との間の交雑がくり返された結果作り上げられたもので,その染色体数も80本から140本をこえる倍数性や異数性を示している。
→砂糖
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報