サル(猿)(読み)サル

百科事典マイペディア 「サル(猿)」の意味・わかりやすい解説

サル(猿)【サル】

ふつう,哺乳(ほにゅう)類霊長目のうち,人類を除いた動物の総称。一般に四肢の第1指と他の指は向かい合って物を握ることができること,眼は二つとも前方へ向かい双眼視が可能なことが特徴。これらの特徴は樹上生活に対する適応の結果と考えられ,森林がサルを誕生させたともいえる。植物食または雑食で,昼行性のものが多く,色覚をもつ。一般に群生するか,家族群を構成して生活し,一定の繁殖期のないことが多い。普通,1腹1子,妊娠期間4〜9ヵ月。生息地域の大部分南米,アジア,アフリカの熱帯亜熱帯で,北限は日本の下北半島。約180種が知られ,一般に次の5類に分類される。(1)原猿類(コビトキツネザル・キツネザル・インドリ・アイアイ・ロリス科)。ツパイキツネザル,インドリ,アイアイロリス,ガラゴなどを含み,エチオピア区と東洋区に分布。顔は有毛で吻(ふん)が突出し,手足には平爪(ひらづめ)のほか鉤爪(かぎづめ)もある。夜行性のものが多く,色覚は不完全。一定の繁殖期をもち,知能は低い。(2)メガネザル科。東洋区のメガネザルだけからなる。顔は丸く,吻は短く,指端には吸盤がある。眼は非常に大きく前方に向かう。夜行性でやはり色覚は発達せず,昆虫を主食とする。繁殖期は限られない。(3)広鼻猿類(マーモセットオマキザル科)。オマキザルヨザルホエザル,リスザル,クモザルマーモセットなどを含み,南米アマゾン流域に分布。平爪をもち,左右の鼻孔は広く離れ外方に向かう。尻(しり)だこはなく,尾はしばしば物を巻き得る。ヨザル以外は昼行性で,一般に果実食。多くは人まねをしない。(4)狭鼻猿類(オナガザル科)。典型的なサル類でニホンザルアカゲザルマントヒヒオナガザルテングザルなどを含み,アジア,アフリカに分布。左右の鼻孔が接し,尾は決して物を巻き得ない。尻だこが発達し,尻だこと顔の裸出部の色が美しい。よく人まねをする。(5)類人猿類(テナガザル・ショウジョウ科)。テナガザルオランウータンチンパンジーゴリラなどを含み,アジア,アフリカに分布。尾がなく,尻だこは多くは退化している。前肢が強大。大脳はよく発達し,知能が高い。なお単にサルといった場合ニホンザルのみをさす場合もある。

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世界大百科事典 第2版 「サル(猿)」の意味・わかりやすい解説

サル【サル(猿)】

ヒトにもっとも近縁な動物で,ヒトとともに哺乳綱霊長目をなす。もともとニホンザルを指すことばであったが,現在ではヒト以外の霊長類の総称として用いられ,狭義には,真猿類のオマキザル科とオナガザル科の種を指す。英語では,尾の長いサルをmonkey,尾のないサルをape,原猿類をlemur,またはprosimianといっている。 いわゆるサルということばから連想するイメージは,賢そうな顔つきや目つきをもち,木登りがうまく,手先が器用で,果実や木の実を好み,群れをなして森の中でくらしている動物といったものであろう。

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世界大百科事典内のサル(猿)の言及

【厩∥馬屋】より

…馬を飼っておく独立した建物や家屋内の馬(ときには牛)を飼う部屋で,〈まや〉とも呼ぶ。農耕馬を飼う農家の馬屋と乗馬用の馬を飼う武家屋敷や神社・寺院の馬屋とでは構造が異なる。農家の馬屋は,主屋内にある内馬屋と独立して建つ外馬屋に分かれるが,南部の曲屋は外馬屋を主屋に接続させて成立した形式である。また日本海側の多雪地方に多い中門造はもともとは主屋内にあった馬屋を中門に移すことによって成立しており,両者の中間的な存在である。…

【月経】より

…また月経中は,精神的にも不安定であることが多いので,つとめて平静心を保つようにし,強い刺激を避ける。
[動物の月経]
 ヒト以外の各種霊長類(サル)での月経は,旧世界ザル以上の高等霊長類(ニホンザル,カニクイザル,アカゲザル,ヒヒ,テナガザル,オランウータン,チンパンジー,ゴリラ)の雌でみられ,月経周期日数や血中ホルモンの分泌動態が,ヒトのそれとほぼ同じであることは興味深い。新世界ザルでは月経はみられないが,血中ホルモンの周期的変動がみられる。…

【大道芸】より

…繁華な大道や街頭,また仮設の掛け小屋などで行われるさまざまな芸能の総称。〈辻芸〉とも呼ばれる。
[日本]
 ほとんどすべての芸能は,その発生期においては屋外の大地の上で行われており,むしろ芸能にあっては,長く〈屋外の芸〉もしくは〈大道の芸〉という芸態が当然のことであった。しかし,特に近世以降に人形浄瑠璃,歌舞伎といった舞台芸能が発展すると,〈門付(かどづけ)芸〉〈見世物〉〈物売り(香具師(やし))の芸〉なども広く含めたもろもろの大道の雑芸(ざつげい)は,舞台芸能とははっきり区分けされて意識されるようになった。…

※「サル(猿)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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