サンショウ(読み)さんしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンショウ」の意味・わかりやすい解説

サンショウ
さんしょう / 山椒
[学] Zanthoxylum piperitum DC.

ミカン科(APG分類:ミカン科)の落葉低木。高さ2~3メートルになり、よく分枝する。葉は奇数羽状複葉で長さ5~15センチメートル、小葉は卵形で5~9対、さらに先端に1枚つく。葉柄の基部には1対の刺(とげ)がある。雌雄異株で、春に葉の付け根から花穂を出し、黄緑色の小花を多数つける。果実は、ざらついた5ミリメートルほどの球形で、秋に赤く熟して果皮が裂け、黒色の種子が現れる。各地の山野に自生し、庭木としても植えられる。変種には刺がないアサクラザンショウや、刺の短いヤマアサクラザンショウなどがある。

[星川清親 2020年10月16日]

利用

葉および果実は独特のすがすがしい芳香辛味をもち、日本の代表的香辛料の一つである。若芽は「木の芽」とよばれ、非常に香りが高く、吸い物に浮かせたり、和(あ)え物や酢の物に用いて料理に初夏の季節感を与える。未熟な果実は青山椒(あおざんしょう)とよばれ、おもに佃煮(つくだに)にして食されるが、成熟した果実を乾燥、粉末にしたものは粉山椒として七味唐辛子の成分の一つであり、またうなぎの蒲焼(かばや)きには欠かせない和風香辛料である。香りの主成分はテルペン系のフェランドレンオイゲノールシトロネラール、辛味の主成分はサンショオールである。木の幹も香りがよいのですりこ木の材料に用いられる。

[齋藤 浩 2020年10月16日]

薬用

果実が裂開し、中の1個の黒い種子と果柄を除いた果皮の部分を山椒(さんしょう)と称して薬とする。精油(2~4%)と樹脂を含むため、芳香をもち、味は辛く、麻痺(まひ)性である。健胃、整腸、駆虫解毒剤として腹部の冷痛、下痢等の治療に用いられるほか、苦味チンキの原料の一つとされる。蒲焼きにつけるサンショウ末は脱臭、解毒、食欲増進のためである。毒虫に刺されたときには、サンショウの葉の絞り汁をつけるとよい。若葉は日本料理の吸い物、和え物に用いられる。また、種子を椒目(しょうもく)といい、利尿作用があり、目の病気に用いる。中国ではトウザンショウZ. simulans HanceおよびZ. bungeanum Maxim.の果実を花椒(かしょう)と称し、山椒と同様に用いるほか、岩塩末と混合して花椒塩とよぶ調味料としても使用される。

[長沢元夫 2020年10月16日]


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食の医学館 「サンショウ」の解説

サンショウ

英語でチャイニーズ・ペッパー、またはジャパニーズ・ペッパーなどと呼ばれるように、東洋を代表するスパイスの1つです。
 その歴史は古く、日本での利用は縄文時代から。また、漢方の世界では重要な製薬材料として、現在も広く利用されています。
 サンショウに含まれるおもな有効成分は、サンショール、シトロネラール、ジペンテン、フェランドレン、ゲラニオールなど。これらの成分には、消化促進、健胃、駆風(くふう)(腸管内にたまったガスの排除)、消炎、鎮痛、駆虫(くちゅう)といった作用があります。
 具体的症状としては、胃炎、腹部膨満、腸閉塞(ちょうへいそく)、寄生虫病などに有効です。
○外用としての使い方
 入浴剤に用いれば、神経痛、リウマチ、痛風(つうふう)、肩こり、冷え症などの症状をやわらげ、煎(せん)じだした汁でうがいをすれば、歯痛にも効果があります。
○食品としての使い方
 サンショウは実をスパイス、葉をハーブとして利用します。特有のさわやかな香りと舌がしびれるような刺激性があり、ウナギのかば焼きや青魚の煮もの、吸いもの、田楽などの薬味でおなじみ。中華料理でも炒(いた)めものや煮ものなどに多用されます。また、七味トウガラシや五香粉(ごこうふん)、花椒塩など、東洋の混合スパイスには欠かせない素材です。

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栄養・生化学辞典 「サンショウ」の解説

サンショウ

 [Zanthoxylum piperitum].ムクロジ目ミカン科サンショウ属に属する.日本の古くからのスパイスの一つ.

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