改訂新版 世界大百科事典 「シェルパ族」の意味・わかりやすい解説
シェルパ族 (シェルパぞく)
Sherpa
ネパール東部,エベレスト峰南ろくの高地に住む民族。人口約2万4000(1971)。また同民族出身の登山ガイド,高所ポーターをもいう。ドゥード・コシ川上流のソル・クーンブ地方に本拠をもつが,もともと東部チベットからヒマラヤを越えて移住してきたといわれている。チベット語で〈東(シャル)の人(パ)〉を意味する。その言語はチベット語の方言で,チベット仏教(ラマ教)を信じ,チベット風の生活様式や風俗習慣,社会制度をもつ。
高地に住むシェルパ族は,農耕と牧畜の結合された生活を営む。標高3500mから5000mの間に家,畑,放牧地をもち,季節に従って人と家畜が移動する。ジャガイモ,大麦などを作り,ヤクや牛,その間の交配雑種のゾを飼い,乳製品を作る。さらにその駄獣を使い,ヒマラヤを挟む南北2地域の商品を運ぶ交易も盛んで,南から米や茶,北から岩塩や羊毛が動いた。また交配雑種のゾの生産と輸出も重要であった。クーンブ地方の中心ナムチェ・バザールは,交易を専業的に行う人々の中心である。
1920年代から,イギリス人によってその才能資質を発見され,訓練されたシェルパは,ヒマラヤ登山に欠かせない存在となった。彼らはダージリンへ出稼ぎに出ていた人たちであったが,第2次大戦後のネパール開国後は,ソル・クーンブの土着シェルパが高所ポーターや登山,トレッキングのガイドとなり,これによる現金収入は,交易による収入に代わるようになった。
執筆者:高山 龍三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報