シジミ(読み)しじみ(英語表記)freshwater clam

デジタル大辞泉 「シジミ」の意味・読み・例文・類語

しじみ【シジミ】[作品名]

詩人石垣りんの詩。第19回H氏賞を受賞した昭和43年(1968)刊行の第2詩集「表札など」の巻頭を飾る作品

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シジミ」の意味・わかりやすい解説

シジミ
しじみ / 蜆
freshwater clam

軟体動物門二枚貝綱シジミ科に属する二枚貝の総称。この科Corbiculidaeの仲間は、日本のみならず台湾、東南アジア各地にも分布する種類があり、淡水または汽水にすむ。一般に殻は三角形状で、殻頂部はよく膨らむが、老成すると殻頂部は侵食されて殻皮がはげ、白い殻質が露出しているのが普通である。殻表には強い成長肋(ろく)がある。殻皮は黄色を帯びているが、老成すると黒色となる種が多い。両殻のかみ合せには放射状に配列した主歯のほか、前後に長い側歯があり、外靭帯(じんたい)がのる歯丘は著しい。殻の内面紫色ないし白色。軟体は白色であるが、水管の先端はやや黒い。淡水にすむものは胎生であるが、河口汽水域にすむものは卵生である。日本には次の3種がすむ。

(1)マシジミ真蜆Corbicula leana 殻長40ミリメートル、殻高35ミリメートル、殻幅20ミリメートルに達し、殻はハマグリ型であるが、後端はやや角張る。殻表の光沢は弱く、幼若期は黄色を帯び、焼け焦げのような黒斑(はん)がある。本州、九州、四国の各地の流れのある砂泥底にすむ。胎生であるが、卵生生殖の観察された報告もある。なお殻高の低い横長の型は、アワジシジミC. l. awajiensisとよばれる。

(2)ヤマトシジミ大和蜆C. japonica 殻長40ミリメートル、殻高35ミリメートル、殻幅25ミリメートルに達し、殻は卵三角形で、殻表は光沢が強い。幼若期は茶色で、黄色の放射帯がある。樺太(からふと)(サハリン)以南、日本各地の河口や潟にすんでいる。大量に漁獲・利用されるのはおもに本種で、宍道(しんじ)湖および利根(とね)川河口の漁獲量がとくに多い。地方により形態的にわずかな差があり、ニッポンシジミ、サドシジミ、ヒメニッポンシジミなどとよばれているが、同一種内の変異とされている。

(3)セタシジミ(瀬田蜆)C. sandai 殻長30ミリメートル、殻高35ミリメートル、殻幅17ミリメートルに達し、殻頂はよく膨らんでそびえる。成長脈は粗く、光沢がある。幼若期は黄色であるが成長すると黒っぽくなるのは前2種同様で、老成した貝は後腹方へ張り出す。琵琶(びわ)湖特産でその水系に分布し、一部は他の湖にも移殖されている。卵生であることから、本来河口性のものが陸封されたものと考えられており、水深2~5メートルの砂礫(されき)底を好む。産卵期は6~10月、孵化(ふか)後3日間ぐらいはプランクトン生活をして、1年に4、5ミリメートル成長し、殻高30ミリメートルのものは8年もたっている。和名は滋賀県大津市瀬田に由来し、学名は、明治時代に本種を初めて採集したドイツの地理学者ラインを案内した日本銀行理事の三田佶(さんだただし)に献名されている。

 日本のみならず、朝鮮半島、台湾、中国大陸、フィリピンなどでも、その地方にすむ種を採取・利用している。1950年代にシジミの一種が経路不明で北アメリカに移入繁殖し、建築用セメントに混ぜる河川の小石に混入したため、コンクリートの強度を著しく下落させるものとして問題になったことがある。

[奥谷喬司]

食品

シジミは「縮み」の意味で、貝殻の模様からきた名前である。シジミの食用は古く、縄文時代から利用されていたことが貝塚から判断できる。全国的にシジミは分布しているため、北海道の植苗(うえなえ)貝塚や佐渡島の三宮貝塚からはヤマトシジミが、また滋賀県の滋賀里貝塚からはセタシジミが出土している。シジミは健康によいといわれ、1787年(天明7)刊の『食品国歌』(大津賀仲安著)には、「シジミよく黄疸(おうだん)を治し酔を解す。消渇(しょうかち)、水腫(すいしゅ)、盗汗(とうかん)によし」とある。黄疸にしじみ汁がよいというのは、シジミに多く含有するメチオニン、シスチン、タウリンなどが肝臓の機能を亢進(こうしん)するためだと考えられている。

 シジミには、ビタミンB1分解酵素のアノイリナーゼが含まれているが、生食しなければ問題はない。強いうま味の主成分はコハク酸で、グリコーゲンも多い。寒シジミといわれるのは、冬にエキス分が増えておいしくなるためである。一方で「土用シジミは腹薬」ともいわれ、年中利用される。シジミの料理はみそ汁が代表的である。真水で砂を吐かせ、殻ごと水から煮て、口をあけたらみそを溶かし入れ、ひと煮立ちさせて火を止める。七味唐辛子、粉さんしょう、しょうが汁を加えると風味が増す。加工品にはむき身の佃煮(つくだに)がある。

[河野友美・大滝 緑]


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食の医学館 「シジミ」の解説

シジミ

《栄養と働き》


 シジミは、千葉・茨城周辺の利根川河口、島根の宍道湖(しんじこ)、滋賀の琵琶湖(びわこ)、青森の十三湖(じゅうさんこ)などがおもな産地です。一般によく出回る品種は、ヤマトシジミ、マシジミ、セタシジミの3種。なかでもセタシジミは殻(から)の頭が三角で尖っていて、ほかの2つと区別しやすい形をしています。汽水(きすい)(海水と淡水がまじりあっているところ)に多く生息しますが、淡水だけのところでもシジミはとれます。
○栄養成分としての働き
 昔から、お酒を飲んだあとはシジミ汁がよいといわれてきました。肝臓病にもよいといわれています。
 その理由は、ミネラルとビタミン類が豊富で、アミノ酸のメチオニンという成分が肝臓の働きを支えるためです。
〈さまざまな成分が複合的に肝機能をサポート〉
 また、たんぱく質の含有量は多くないのですが、必須アミノ酸のバランスがとれた良質なたんぱく質のため、消化吸収がよく、肝臓に負担がかかりません。さらに、肝臓の働きを促進させるグリコーゲンやビタミンB12なども含まれています。B12は、葉酸(ようさん)と協力しあい、赤血球の産生に働くので、悪性貧血を予防するだけでなく、神経細胞内のたんぱく質や脂質、核酸の合成を助け、神経系を正常に働かせます。
 ほかに、ビタミンB2や鉄の含有量の多さも目立ちます。B2は、解毒作用を助けるので、これもお酒のあとによい一因です。さらにB2は、細胞を再生・保護するので健康な皮膚をつくったり、口内炎(こうないえん)や肌荒れを予防する効果もあります。鉄は、各器官に酸素を運び、酸欠状態からまもるのが仕事です。不足すると息切れ、めまいなどの貧血症状が現れます。月経過多の女性、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)や痔(じ)の人、妊婦、授乳婦などは、積極的に鉄を摂取しましょう。シジミは、鉄の吸収や利用を助ける銅や亜鉛(あえん)も含んでいます。

《調理のポイント》


「土用シジミ・寒シジミ」と呼ばれるように、シジミの旬(しゅん)は夏と冬の2回あります。この時期はカルシウムやビタミンが豊富になり、うまみもグっと増します。殻がつやつやとしていて大きめで、殻の色が濃く、身の色は薄いもの、また触れたとき勢いよく殻を閉じるシジミが新鮮です。
 購入したら汚れをすぐ洗い落とし、貝が浸るぐらいの真水に数時間つけて、泥くささや砂を吐(は)かせます。火にかけるときは、水またはぬるめのうちからシジミを入れます。口が開いたら火を止めましょう。加熱しすぎるとうまみが逃げ、身も小さくなってしまうので注意してください。加熱しても口が開かなかった場合は、貝の状態がよくなかったというサインですので、こじあけて食べたりしないようにしましょう。
 シジミのエキスが溶けだすので、汁もの(すまし汁や味噌汁など)にするのが最適です。なかでも味噌をあわせると、肝臓の機能を高める相乗効果が見込まれます。二日酔いなどにはぴったりといえます。
 ところで、生のシジミは、ビタミンB1を分解するアノイリナーゼという酵素がありますから、生食はできません。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シジミ」の意味・わかりやすい解説

シジミ
Corbiculidae; freshwater clam

軟体動物門二枚貝綱シジミ科の貝の総称。殻は丸みのある三角形で,殻頂がふくらむ。殻表は成長脈が明らかで,幼貝では黄緑色の殻皮をかぶるが,成長すると黒くなり,殻頂は殻皮がはげて白くなる。殻の内面は紫白色から濃紫色。殻頂の下には主歯があり,その前後両側に長い側歯がある。軟体は白色,出・入水管の先端部分は黒色。河口,潟にすむ汽水生種と,河川にすむ淡水生種とがある。東南アジア,インド,オーストラリアなどに多くの種が分布している。日本産はセタシジミマシジミヤマトシジミの3種。

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栄養・生化学辞典 「シジミ」の解説

シジミ

 ハマグリ目マシジミ属の淡水産二枚貝の総称.ヤマトシジミ[Corbicula japonica],セタシジミ[C. sandai],マシジミ[C. leana]があり,食用にする.

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