軟体動物門二枚貝綱シジミ科に属する二枚貝の総称。この科Corbiculidaeの仲間は、日本のみならず台湾、東南アジア各地にも分布する種類があり、淡水または汽水にすむ。一般に殻は三角形状で、殻頂部はよく膨らむが、老成すると殻頂部は侵食されて殻皮がはげ、白い殻質が露出しているのが普通である。殻表には強い成長肋(ろく)がある。殻皮は黄色を帯びているが、老成すると黒色となる種が多い。両殻のかみ合せには放射状に配列した主歯のほか、前後に長い側歯があり、外靭帯(じんたい)がのる歯丘は著しい。殻の内面は紫色ないし白色。軟体は白色であるが、水管の先端はやや黒い。淡水にすむものは胎生であるが、河口の汽水域にすむものは卵生である。日本には次の3種がすむ。
(1)マシジミ(真蜆)Corbicula leana 殻長40ミリメートル、殻高35ミリメートル、殻幅20ミリメートルに達し、殻はハマグリ型であるが、後端はやや角張る。殻表の光沢は弱く、幼若期は黄色を帯び、焼け焦げのような黒斑(はん)がある。本州、九州、四国の各地の流れのある砂泥底にすむ。胎生であるが、卵生生殖の観察された報告もある。なお殻高の低い横長の型は、アワジシジミC. l. awajiensisとよばれる。
(2)ヤマトシジミ(大和蜆)C. japonica 殻長40ミリメートル、殻高35ミリメートル、殻幅25ミリメートルに達し、殻は卵三角形で、殻表は光沢が強い。幼若期は茶色で、黄色の放射帯がある。樺太(からふと)(サハリン)以南、日本各地の河口や潟にすんでいる。大量に漁獲・利用されるのはおもに本種で、宍道(しんじ)湖および利根(とね)川河口の漁獲量がとくに多い。地方により形態的にわずかな差があり、ニッポンシジミ、サドシジミ、ヒメニッポンシジミなどとよばれているが、同一種内の変異とされている。
(3)セタシジミ(瀬田蜆)C. sandai 殻長30ミリメートル、殻高35ミリメートル、殻幅17ミリメートルに達し、殻頂はよく膨らんでそびえる。成長脈は粗く、光沢がある。幼若期は黄色であるが成長すると黒っぽくなるのは前2種同様で、老成した貝は後腹方へ張り出す。琵琶(びわ)湖特産でその水系に分布し、一部は他の湖にも移殖されている。卵生であることから、本来河口性のものが陸封されたものと考えられており、水深2~5メートルの砂礫(されき)底を好む。産卵期は6~10月、孵化(ふか)後3日間ぐらいはプランクトン生活をして、1年に4、5ミリメートル成長し、殻高30ミリメートルのものは8年もたっている。和名は滋賀県大津市瀬田に由来し、学名は、明治時代に本種を初めて採集したドイツの地理学者ラインを案内した日本銀行理事の三田佶(さんだただし)に献名されている。
日本のみならず、朝鮮半島、台湾、中国大陸、フィリピンなどでも、その地方にすむ種を採取・利用している。1950年代にシジミの一種が経路不明で北アメリカに移入繁殖し、建築用セメントに混ぜる河川の小石に混入したため、コンクリートの強度を著しく下落させるものとして問題になったことがある。
[奥谷喬司]
シジミは「縮み」の意味で、貝殻の模様からきた名前である。シジミの食用は古く、縄文時代から利用されていたことが貝塚から判断できる。全国的にシジミは分布しているため、北海道の植苗(うえなえ)貝塚や佐渡島の三宮貝塚からはヤマトシジミが、また滋賀県の滋賀里貝塚からはセタシジミが出土している。シジミは健康によいといわれ、1787年(天明7)刊の『食品国歌』(大津賀仲安著)には、「シジミよく黄疸(おうだん)を治し酔を解す。消渇(しょうかち)、水腫(すいしゅ)、盗汗(とうかん)によし」とある。黄疸にしじみ汁がよいというのは、シジミに多く含有するメチオニン、シスチン、タウリンなどが肝臓の機能を亢進(こうしん)するためだと考えられている。
シジミには、ビタミンB1分解酵素のアノイリナーゼが含まれているが、生食しなければ問題はない。強いうま味の主成分はコハク酸で、グリコーゲンも多い。寒シジミといわれるのは、冬にエキス分が増えておいしくなるためである。一方で「土用シジミは腹薬」ともいわれ、年中利用される。シジミの料理はみそ汁が代表的である。真水で砂を吐かせ、殻ごと水から煮て、口をあけたらみそを溶かし入れ、ひと煮立ちさせて火を止める。七味唐辛子、粉さんしょう、しょうが汁を加えると風味が増す。加工品にはむき身の佃煮(つくだに)がある。
[河野友美・大滝 緑]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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