精選版 日本国語大辞典 「しそ」の意味・読み・例文・類語
しそ
- 〘 名詞 〙 四角い布を三角に折った農作業用のかぶりもの。
- [初出の実例]「女はみな、しそといひて風呂鋪やうのものかふむりてけり」(出典:菅江真澄遊覧記(1784‐1809)楚堵賀浜風)
芽,穂,葉を利用するシソ科の一年草。原産はヒマラヤ,ミャンマーおよび中国で,中国南部で栽培化されたと推定されるが,東洋の温帯地域には広く野生化している。日本に古くから伝わって野生化もしている。全草に芳香を有し,高さ数十cmになる。四角柱形の茎は上部でよく分枝する。葉は長柄があり,毛が少なく卵形で鋭い鋸歯がある。初秋,頂端や枝端の総状花序にやや一方に偏して小さな花を多数つける。花色は紅紫色や白色。高温下でも比較的よく生育し作りやすい。栽培品種は赤いアントシアン系色素の有無によって赤ジソ系と青ジソ系に分けられる。また利用形態により芽ジソ,穂ジソ,葉ジソに区別される。芽ジソは発芽してまもない幼植物で,収穫までの期間が短く,赤ジソ系の品種がおもに栽培されている。穂ジソとして用いられるものには,花軸の花が30%程度開花した花穂と,一部が実になっている束穂とがある。葉ジソは青ジソ系の品種を用い,ハウス栽培,電照栽培によって周年栽培されている。いずれの利用形態についても年間需要があるので,各種施設を利用しての周年栽培が行われている。シソの精油成分は殺菌力を有し,葉,種子,茎など全体が風邪,咳止め,消化促進など漢方薬でさまざまに利用されている。同一種に種子から乾性油をとるエゴマがある。エゴマは精油成分が少し異なり食用にはされない。
執筆者:高橋 文次郎
赤ジソ,青ジソとも芽,葉,花穂,実ともに香りがよく,日本料理の材料として用途がひろい。芽ジソは刺身のつまや吸口に使い,赤ジソはむらめ,青ジソは青芽とよぶ。青ジソの葉は大葉(おおば)ともいい,刺身のつまにしたり刻んであえ物,漬物,薬味などに使って色,香りを楽しむ。赤ジソの葉は梅干しの着色に利用する。花穂ジソは刺身のつまやてんぷらに,実ジソはつくだ煮や塩漬にする。成分にはカロチンが多いのが特徴。
執筆者:松本 仲子
双子葉植物で,約200属3500種があり,日本には約28属90種が野生している。大部分が草本であるが,熱帯地方にはやや木本状になる種もある。全世界に広く分布しているが,地中海沿岸や中央アジアなど,乾燥地帯の草地にはとくに多くの種が分化している。
唇形科またはクチビルバナ科ともいわれたことがあるように,花は左右相称の合弁花冠で,多くは2唇形になる。おしべは普通4本で,花冠の筒部にくっつくが,進んだグループでは2本だけに退化するものもある。子房は上位で2心皮からなり,縦に4裂してそのくぼんだ中央の下部から花柱が出て,柱頭は2裂する。果実は4裂した子房の各部屋に1個ずつ種子が入り,熟すと四つの分果に分かれる特性がある。種子にはわずかに胚乳があるが,進んだグループでは胚乳がなくなったものもある。茎は四角柱形のものが多く葉は単葉で対生するものが多いが,複葉になるものや輪生するものもある。托葉はない。全体に精油を含み,香気のあるものがあり,ラベンダー,ハッカ,タイム(タチジャコウソウ),マンネンロウ(ローズマリー)など香料を採るために栽培されるものがある。花が美しいものも多く,サルビア,ハナトラノオ,モナルダなどは観賞用として花壇に栽培される。葉の美しいものとしてコレウスは温室や花壇に植えられ,シソは刺身のつまとして花穂や葉を生で食用にするほか,梅干しや漬物の自然着色用として多く用いられる。チョロギも根を食用にする。メハジキ,ウツボグサ,コガネヤナギ,タチジャコウソウ,ハッカ,シソ,ヒキオコシ,メボウキ(バジル)などは薬用植物として,漢方または民間薬として広く用いられている。
ひじょうによくまとまった科で,ムラサキ科やクマツヅラ科と類縁があり,子房が縦に4裂する傾向をもったシソ目の中で最も進化した科と考えられている。
執筆者:村田 源
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
シソ科(APG分類:シソ科)の一年草。中国南部、ヒマラヤ、ミャンマー(ビルマ)原産。エゴマの1変種で、茎葉の香りを楽しむ野菜として奈良時代から栽培されている。茎は四角形で高さ1メートルに達し、数本の枝を出す。葉は対生し、卵形で縁(へり)に鋸歯(きょし)がある。秋、枝先に総状の花穂を生じ、唇形の小花を多数つける。果実は残存性の萼(がく)に包まれている。品種は多く、葉が暗紫色のアカジソ、緑色のアオジソ、葉の表面が帯紫緑色で、裏面が赤紫色のカタメンジソ、葉が縮緬(ちりめん)状に縮れていて暗紫色のチリメンジソ、緑色のアオチリメンジソなどがある。また、花色はアカジソでは淡紫色、アオジソでは白色である。植物体の香気成分はシソ油で、全草に0.5%含まれ、そのうちシソアルデヒド(ペリルアルデヒド)55%、リモネン30%、ピネンその他からなる。紫紅色素はシアニンとそのエステルである。
栽培は、葉を利用するものは春に直播(じかま)きか、苗を移植して育てる。梅干し用のアカジソは6~7月に収穫する。料理のつまに利用する発芽したばかりの芽じそは周年栽培が可能で、播種(はしゅ)後15~30日で収穫する。
[星川清親 2021年9月17日]
漢方では葉を紫蘇葉(しそよう)または蘇葉(そよう)、種子を紫蘇子(しそし)または蘇子(そし)、茎を蘇梗(そこう)といい、いずれも発汗、解熱、去痰(きょたん)、健胃、鎮痛剤として、感冒、咳嗽(がいそう)、胸・腹痛、嘔吐(おうと)、消化不良、食欲不振などの治療に用いる。また、魚、カニなどの中毒の解毒剤としても用いるが、効力は葉に含まれる成分がもっともよい。
[長沢元夫 2021年9月17日]
シソの葉には快い芳香とほろ苦味が、実には香りは少ないがさわやかな辛味があり、日本人の嗜好(しこう)によくあう香辛野菜である。花の咲ききった穂は穂じそ、穂の3分の1ほどが開花した穂は花穂(はなほ)とよばれ、料理のつまや薬味、てんぷらに用いる。未熟な果実は穂からしごき取って塩漬けにし、香の物として利用される。アオジソの葉はてんぷら、しそ巻き、薬味にされる。アカジソの葉は梅干し、チョロギ、ショウガ漬けの色付けに欠かせないほか、ほかの野菜といっしょの柴(しば)漬けに、また乾燥葉を粉にした「ゆかり」はふりかけや和菓子の材料とされる。アカジソの芽じそは「むらめ」や「赤め」とよばれ、白身魚の刺身のつまに、アオジソの芽じそは「青め」とよばれ、赤身魚の刺身のつまに用いられる。紫蘇油(しそゆ)は菓子などの香料として用いられ、おもにアオジソを花期にとって、その半乾燥品を水蒸気蒸留して得られる。開花期の全草を乾燥し切断したものを漢方で精神安定剤として処方する。
[星川清親・齋藤 浩 2021年9月17日]
日本の野菜のなかではもっとも古いものの一つで、5000年前の縄文前期の種子が福井県の鳥浜貝塚から、リョクトウやゴボウの種子とともに出土している。岩手県北上市鳩岡崎遺跡(はとおかざきいせき)からも、縄文中期とみられるシソの種子が発見されている。中国では6世紀の『斉民要術(せいみんようじゅつ)』に、シソの葉を羊肉と豚肉のしょうゆ漬けに使ったり、干したシソの葉を火であぶって細かくし、鳥汁に入れるなどの料理法が栽培法とともに載る。
[湯浅浩史 2021年9月17日]
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