日本大百科全書(ニッポニカ) 「シロウオ」の意味・わかりやすい解説
シロウオ
しろうお / 素魚
ice goby
[学] Leucopsarion petersi
硬骨魚綱スズキ目ハゼ科に属する魚。体はやや側扁(そくへん)して細長く、半透明の体壁を通して体腔(たいこう)内にうきぶくろがみえる。腹びれは左右合しているが、ごく小さい。鱗(うろこ)はない。雌は雄より大きくなり、黒色素胞がより多い。全身5センチメートル前後。北海道南部から奄美(あまみ)大島までの日本各地、朝鮮半島、中国に産する。内湾の下層部で群泳し、浮遊性の橈脚(とうきゃく)類を主食としている。産卵期の春に海から川へ上ってきて、下流部で砂にうずもれた石の下面に卵塊を産み付け、雄の親魚がそれを守る習性がある。産卵後、雄は死滅するが、雌は生き残るものがあるとされている。仔魚(しぎょ)は海へ入り、そこで成長して1年後には成魚となりふたたび川に上ってきて産卵にあずかる。産卵前に群れをなして川に上ってくる成魚を四手(よつで)網、簗(やな)などでとるのがシロウオ漁であり、この漁が長く続いている地方が多い。とくに福岡市室見(むろみ)川のシロウオ漁は有名で、江戸時代から続いており、同地の春の風物詩となっている。各種のシロウオ料理(シラウオ料理とよばれる)は生きた魚を材料とする。なかでも「踊り食い」は生きたシロウオを酢じょうゆに浸して飲み込む特異な料理で、室見川の名物となっている。メバル釣りの生き餌(え)としても用いられる。
[道津喜衛]