日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャン・パウル」の意味・わかりやすい解説
ジャン・パウル
じゃんぱうる
Jean Paul
(1763―1825)
ドイツの小説家。本名ヨーハン・パウル・フリードリヒ・リヒター。バイロイト侯国の僻村(へきそん)に牧師の長男として生まれる。ライプツィヒ大学神学部中退。該博な知識に裏づけられた機知と奔放な想像力の織り成すメタファーに富んだ、長大な構文を特徴とする。初期の風刺文から中期以降の小説へ移行する過程で、自ら「ロマン的ユーモア」と名づける文学理念を確立し、後進的なドイツの現実を超越的な理想や夢に対比させつつ表現するという、他に類をみない独特な文学作品をつくりあげた。ホフマン、ケラー、シュティフター、ラーベなどの作家に大きな影響を与えている。
主要な作品には、長編小説に『見えないロッジ』(1793)、『ヘスペルス』(1795)、『第五学級の教師フィクスライン』(1796)、『貧民弁護士ジーベンケース』(1796)、『巨人』(1800~03)、『生意気ざかり』(1804~05)、中・短編に『ブーツ先生の生涯』(1793)、『医師カッツェンベルガーの温泉旅行』(1808)、理論的著作に文学論の集大成『美学入門』(1804)と教育論『レバーナ』(1807)がある。
[池田信雄]
『古見日嘉訳『巨人』(1978・国書刊行会)』▽『鈴木武樹訳『ジャン・パウル文学全集』第1期1、2、6、7巻(1974~78・創土社)』