翻訳|journalist
時事的な事実や問題の報道・評論を社会に伝達する活動をジャーナリズムjournalismと定義するならば、この活動を行う新聞、通信、雑誌、放送などの企業の従業員のうち、取材、評論および編集を担当する者(いわゆる新聞記者、雑誌記者、放送記者など)を一般にジャーナリストとよんでいる。さらに、マス・メディア(大衆伝達媒体)に時事的評論を執筆、寄稿する者を含む場合もある。外国では、事実を取材し、ありのままに報道する者をレポーターreporter、それに主観を加え、評論的報道をする者をライターwriter、編集者をエディターeditorとよび、それらの総称としてジャーナリストの語が用いられるようである。日本では、第二次世界大戦後、報道と評論をはっきり区別し、ニュース報道では「記者の意見を差し挟んではならない」とし、客観・中立・公正な報道を重視するようになった。さらに、マス・メディアの技術革新や速報性の要請から、ジャーナリストがライターである前にレポーターでなければならないような状況も出てきている。いきおい、現在では、明治・大正期に「大記者」とよばれたようなジャーナリストは少なくなっている。しかし、ヨーロッパ諸国の新聞では、現在でも、伝統的に「記事の主観性」が尊重され、読者もまた主観性のある記事を期待しているから、レポーターよりもライターとしてのジャーナリスト活動が重視されている。
こうしたジャーナリスト活動にとってもっともたいせつなのは、個人の判断、個人の思想であり、制度的条件としては、言論の自由、表現の自由、報道の自由が必要である。ジャーナリズムということばは、語源的にはラテン語の「日々の」を意味するジュルナールdiurnālに始まるとされるが、その後、時代とともにかなりいろいろな使い方がされ、ことに20世紀なかばから、各種の情報メディアが発達し、情報環境が多様化、複雑化するなかで、マス・コミュニケーションという概念が形成され、ジャーナリズムはその下部概念もしくは部分概念とみなされるようになり、ジャーナリストという呼び方もマスコミに従事する者一般にわたりかなり幅広く使われるようになった。しかし、時事的な事実や問題の報道、なかんずくその評論活動は、マスコミのなかでも相対的な独自の活動であるといってよく、その活動を行うジャーナリストの正当な復権が現在、強く要請されている。
[高須正郎]
『鈴木均著『ジャーナリスト』(三一新書)』▽『太田克彦著『ジャーナリスト感覚』(1982・冬樹社)』▽『城戸又一・岡崎万寿秀編『ジャーナリストの原点』(1982・大月書店)』
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