改訂新版 世界大百科事典 「ジュゴン」の意味・わかりやすい解説
ジュゴン (儒艮)
dugong
Dugong dugon
南西諸島ではザン,ザンノイオ(サイの魚の意)とも呼ぶ。カイギュウ目ジュゴン科の哺乳類。体は紡錘形で尾部先端に左右に広がる半月形の尾びれを有する海獣。後足は退化して見えず,前肢はひれ状であるが,中には5本の指骨がある。前肢(腕)の付け根の腹側に1対の乳頭があり,人魚伝説のイメージとなった動物といわれるが,その顔からはとても美人は浮かばない。犬歯は欠くが,第2門歯が長大できば状となっており,その成長線から年齢がわかる。寿命は約70年と思われる。臼歯(きゆうし)は頰歯(きようし)と称し,上下顎(じようかがく)両側のレール状歯槽溝の中で,後部の歯が生成することによって,前方の歯は前へ押し出され歯槽溝から外れて脱落する。体長は出生時約1.3mで,3m以上に成長する。全身鉛灰色,腹部は淡桃色を帯びることもある。斑紋はない。西部太平洋およびインド洋の熱帯,亜熱帯の浅海域に分布し,海草類を食べている。北限は奄美大島。推定個体数約10万頭であるが,分布域の西にいくほど少ない。肉が美味なため乱獲され減少した。オーストラリアを除き,CITES条約で希少動物として保護されている。国の天然記念物。
→人魚
執筆者:西脇 昌治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報