ジョセフソン効果(読み)ジョセフソンこうか(英語表記)Josephson effect

精選版 日本国語大辞典 「ジョセフソン効果」の意味・読み・例文・類語

ジョセフソン‐こうか ‥カウクヮ【ジョセフソン効果】

〘名〙 (Josephson effect の訳語) 絶縁膜をはさんだ二つ超伝導体の間を、トンネル効果によって超伝導電子対が流れる現象。理論的に予言したイギリスのB=D=ジョセフソンの名に由来

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デジタル大辞泉 「ジョセフソン効果」の意味・読み・例文・類語

ジョセフソン‐こうか〔‐カウクワ〕【ジョセフソン効果】

薄い絶縁膜を挟んで二つの超伝導体を接合すると、トンネル効果によって絶縁膜を通して、まったく電気抵抗を受けない超伝導電流を生じる現象。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジョセフソン効果」の意味・わかりやすい解説

ジョセフソン効果
ジョセフソンこうか
Josephson effect

2つの超伝導体を弱く結合 (たとえば,数 nmの薄い絶縁体を通して接合) したときに起る超伝導現象。 1962年 B.ジョセフソンが理論的に見出した。2つの超伝導体に電圧をかけないでも,超伝導に特有な電子対がトンネル効果で絶縁膜を通過して一方向に流れるものを直流ジョセフソン効果という。外部から超伝導体間に電圧 V をかけると,それに比例する周波数 2eV/h ( e は電子の電荷hプランク定数 ) の交流電流が流れる。これを交流ジョセフソン効果という。これらの現象は2つの超伝導体の状態を与えるマクロの波動現象の位相の差が重要な働きをしていて,超伝導が波動的性格をもつ巨視的スケールでの量子効果であることを示している。巨視的スケールでの位相は,超流動ヘリウムの性質を説明するうえでも重要な概念になっている。ジョセフソン効果を示す構造をジョセフソン接合という。ジョセフソン効果は,直流効果と磁束量子化とを組合せた高感度磁束計 (スクイド ) や,交流効果を用いた国際電圧標準などに広く応用されている。一般にこの効果を利用した回路素子ジョセフソン素子と呼ばれ,高速スイッチング素子として期待されている。 (→磁束量子 )  

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百科事典マイペディア 「ジョセフソン効果」の意味・わかりやすい解説

ジョセフソン効果【ジョセフソンこうか】

きわめて薄い絶縁膜をはさんで二つの超伝導体を接合したものに直流電流を流していくと,電流が小さいときは絶縁膜の両側に電圧は生じないが,電流が大きくなって電圧Vがかかると周波数2eV/h(eは電気素量,hはプランク定数)の交流が生じるという現象。これは1962年ジョセフソンにより理論的に予言され,翌年実験的に証明された。この現象は,電子対(クーパー対)が絶縁膜をトンネル効果で通り抜けることにより生じる。ジョセフソン効果を利用した回路素子がジョセフソン素子で,超高速低消費電力計算機等への応用が注目されている。
→関連項目ジョセフソン素子超電導材料

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化学辞典 第2版 「ジョセフソン効果」の解説

ジョセフソン効果
ジョセフソンコウカ
Josephson effect

超伝導トンネル電流に関連する物理現象.B.D. Josephson(1940年~)が,21歳でケンブリッジ大学の大学院生時代に,指導教授からの演習問題を解く途中で導き出した.ジョセフソン効果として,1973年,ノーベル物理学賞を受けている.厚さが1~5 nm 程度の非常に薄い絶縁体を超伝導材料によりはさんだ二つの接合部分には,クーパー対による超伝導電流(ジョセフソン電流とよばれる)と常伝導電流および変位電流が流れる.低温状態ではジョセフソン電流成分のみが観測され,この二つの接合により形成される素子は,電流が流れているにもかかわらず,電圧が0の超伝導状態となっている.これを直流ジョセフソン効果という.電流が増加し,臨界電流とよばれる値を超えると全電流をジョセフソン電流だけでは補えず,常伝導電流が流れ,電圧を伴う常伝導電流と変位電流成分が生じる.変位電流は印加電圧と磁束量子の比で決まる周波数で振動する現象で,マイクロ波に相当する高い周波数の電磁波を発生する.[別用語参照]ジョセフソン素子

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法則の辞典 「ジョセフソン効果」の解説

ジョセフソン効果【Josephson's effect】

薄い絶縁膜を隔てて二つの超伝導体を接触させると,トンネル効果のために電圧を印加しなくともこの両者間に電流が流れる.1962年にジョセフソン(B. D. Josephson)がこの存在を理論的に計算し,翌年にアンダーソンとローウェルドが実際に存在することを実証した.これは伝導帯にある電子ではなく,もっとエネルギーの低い充満帯にある電子(クーパー対*)が膜を隔ててトンネル効果*で移動するために起きる.

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世界大百科事典 第2版 「ジョセフソン効果」の意味・わかりやすい解説

ジョセフソンこうか【ジョセフソン効果 Josephson effect】

きわめて薄い絶縁膜をはさんで二つの超伝導体を接合したとき,電子対が絶縁膜を通り抜けることにより,二つの超伝導体の秩序パラメーターの位相差の正弦に比例する電流が流れる現象。1962年イギリスのジョセフソンBrian David Josephson(1940‐ )によって理論的に予言され,翌年,実験で確かめられた(この業績により,ジョセフソンは1973年度のノーベル賞を受賞)。 ジョセフソン効果は,超伝導の担い手である電子対のトンネル効果によって生ずるものである。

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知恵蔵 「ジョセフソン効果」の解説

ジョセフソン効果

ごく薄い絶縁膜を挟んだ2つの超伝導体の間には、外部電界を加えなくても、トンネル効果によって電流が流れる現象。英国の物理学者B.D.ジョセフソンによって理論的に予言され、その後実証された。上記の3層構造に直流電圧を加えると、高周波の交流電流が発生し、その周波数は直流電圧の大きさに比例する。これらの現象を利用して、数ピコ(p)秒という超高速動作のスイッチング素子や、非常に感度の高い磁界検出素子、SQUIDが開発されている。

(荒川泰彦 東京大学教授 / 桜井貴康 東京大学教授 / 2007年)

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世界大百科事典内のジョセフソン効果の言及

【トンネル効果】より

…この効果は超伝導体のエネルギーギャップの存在を実験的に証明し,その大きさを決定する有力な手段となった。もう一つは,62年,B.D.ジョセフソンが予言した効果(ジョセフソン効果)で,クーパー対と呼ばれる特定の電子対が酸化膜の両側の超伝導体間を移動する現象である。このとき生ずる流れは超電流と呼ばれ,前者と異なる特性を示す。…

※「ジョセフソン効果」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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