精選版 日本国語大辞典 「ジルコニウム」の意味・読み・例文・類語
ジルコニウム
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Zr.原子番号40の元素.電子配置[Kr]4d25s2の周期表4族遷移金属元素.原子量91.224(2).天然には質量数90(51.45(40)%),91(11.22(5)%),92(17.15(8)%),94(17.38(28)%),96(2.80(9)%)の安定同位体が存在し,ほかに78~110の放射性同位体がある.1789年ドイツのM.H. Klaprothが鉱物ジルコンZrSiO4から酸化物として確認し,1824年スエーデンのJ.J. Berzelius(ベルセリウス)が金属として単離した.ジルコンは赤から黒に至る各色を帯びるが,多くは黄金色の鉱物で古代インド,ペルシャでも知られており,鉱物名は黄金色を意味するアラビア語zargûnに由来する.元素名はSir Humphry Davy(デイビー)が1808年に鉱物名から提案した.宇田川榕菴は天保8年(1837年)に出版した「舎密開宗」で,琪爾古扭母(ギルコニウム)としている.主要鉱物はジルコンのほか,バッデリ石ZrO2などがある.
地殻中の存在度100 ppm.可採埋蔵量は南アフリカ(37%),オーストラリア(27%),ウクライナ(10%),インド,アメリカ(ともに9%)の順である.製錬は,酸化鉱に赤熱状態で炭素と塩素を作用させ粗塩化物ZrCl4にかえ,不活性気体中で金属マグネシウムで還元するクロール(Kroll)法,精製はZrI4のフィラメント上の熱分解( > 1300 ℃,van Arkel-de Boer法)で行われる.イオン半径,金属半径がほぼ等しく化学的挙動がほとんど同一のハフニウムとの分離は四塩化物の段階で溶媒抽出法によって行われる.金属ジルコニウムは銀白色で,同族のチタンより軟らかく,α,βの2変態がある.室温では六法最密格子のα相で,862 ℃ で体心立方格子のβ相にかわる.融点1852 ℃,沸点4377 ℃.密度6.506 g cm-3(20 ℃).第一イオン化エネルギー6.84 eV.標準電極電位 Zr4+/Zr-1.55 V.金属結合半径0.160 nm.ZrⅣ(六配位)0.072 nm.熱濃硫酸,熱濃塩酸,熱濃硝酸にも侵されず,耐酸性はチタン,ステンレス鋼よりすぐれている.アルカリにも強く,濃NaOH水溶液には沸点まで,溶融NaOHにも1000 ℃ まで耐える.フッ化水素酸,王水に溶ける.フッ化水素酸には希薄溶液(~0.1%)でも侵される.室温の空気中では,固体は表面に徐々にできる酸化皮膜が内部を保護するので,耐食性にすぐれているが,酸化反応は発熱反応で,表面積の広い粉末は発火することがある.高温では,酸素,ハロゲン(X)と反応してZrⅣ O2(無色),ZrⅣ X4(無色,X = Iのみ黄色)を生じる.酸化数1~4を示すが,主要酸化数は4で,とくに水溶液中では,4以外は不安定な [ZrⅢ(H2O)6]3+ のみが知られている.ZrⅡ X2,ZrⅢ X3は青黒色~暗緑色の固体である.Zr4+ は硬酸([別用語参照]HSAB原理)に分類されるので,F-,Cl- やO,Nを配位原子とする配位子と錯体をつくりやすい.六,七,八配位が多い.Rb2[ZrF6]は六配位・八面体,Na3[ZrF7]は七配位・五方両すい,[Zr4(OH)8(H2O)16]8+ は八配位・十面体.
ジルコニウムは,熱中性子吸収断面積が金属材料中最小(0.18バーン)なので,原子炉材料として重要である.わが国では金属ジルコニウムの90% が,Zrを主成分とするジルカロイ合金の形で燃料被覆管などとして原子炉で使用され,残りが化学工業用耐食性構造材料となる.中性子捕獲断面積の大きい同族元素ハフニウム(105バーン)を除去した高純度金属を使用する.鉱石の最大の用途は,鉄鋼用耐火物,耐火れんが向けで,ほかは研磨剤,窯業,顔料などである.高純度ZrO2はPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)圧電素子,セラミックコンデンサー,光学レンズなどに用いられる.2005年度にわが国は約700 t を金属としておもにオーストラリア,アメリカから,鉱石をおもにジルコンで58000 t オーストラリア,南アフリカから輸入した.ジルコニウム化合物は労働安全衛生法政令第十八条の名称等を通知すべき危険物及び有害物指定.[CAS 7440-67-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
遷移元素の一つで、周期表第4族に属し、チタン族元素の一つ。原子番号40、元素記号Zr。
1789年ドイツのクラプロートはセイロン島(スリランカ)産の鉱物ジルコンZrSiO4から酸化ジルコニウムZrO2を分離し、これを新元素であるとしたが、1824年スウェーデンのベルツェリウスは、ヘキサフルオリドジルコニウム(Ⅵ)酸カリウムK2[XrF6]を金属カリウムで還元し、ジルコニウム金属を単離した。しかし、鉱物から得られるジルコニウムには、かならず同族のハフニウムが2%程度随伴し、しかも両者の化学的性質が酷似するため、純粋なジルコニウム金属を得るには、塩化物の溶媒抽出法によってハフニウムを除去する必要がある。
[岩本振武]
ジルコニウム金属はステンレス鋼に似た外観を呈し、熱中性子吸収断面積が金属中でもっとも小さい(0.16バーン。1バーンは10-24cm2、記号はb)ところから、原子炉材料として重要である。しかし、ハフニウムは110バーンの吸収断面積をもつので、その完全な分離が必要である。
通常の金属は常温では安定であり、高温では反応性を増す。粉末は空気中で自然発火、爆発性を示すので危険である。スズ、鉄、クロムなどを少量加えたジルカロイとよばれる合金は耐食性に富み、ジルコニウムを添加した他の合金も耐食性である。化学的には酸化数+Ⅳの状態が安定で、酸化ジルコニウム(Ⅳ)は高融点(2715℃)、耐食性、低熱膨張率のセラミックス材料となる。
[岩本振武]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…20世紀の初めころまで72番元素は未発見であり,希土類元素に属するともされたが,周期表でどの位置に入るかは問題であった。しかし元素の特性X線に関するモーズリーの法則およびN.H.D.ボーアの原子構造論から,ボーアは72番元素が4価の40番元素のジルコニウムZrやトリウムThの同族元素であると推定した。これにもとづき,1913年ボーアの研究室にいたハンガリーのG.vonヘベシーおよびオランダのコスターD.Coster(1889‐1950)は,ジルコニウム鉱物ジルコンのX線分析を行って,ボーアの予想どおりの72番元素の存在を確かめた。…
※「ジルコニウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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