イギリスの経済学者。スコットランドの名門貴族の出で,エジンバラ大学で法律学を学び,卒業後弁護士の資格を得たのちヨーロッパ大陸に遊学。亡命中のスチュアート王家の嗣子チャールズ・エドワード・スチュアート(1720-88)と知り合い,熱心な支持者となる。帰国後,チャールズが王家の復活を企てて起こしたジャコバイトの反乱(1745)に荷担し,支援活動のために再び大陸に渡る。内乱失敗後大逆罪に問われ,1763年まで大陸で亡命生活を送る。この時期に諸国を見聞して回り,経済学および財政学の研究に従事した。帰国後は隠退して《経済学原理》全2巻(1767)を完成。本書は出版当時は世評にのぼり,大陸や植民地で流布したが,A.スミスの《国富論》(1776)出版後はマルクスによって評価されるまで,ほとんど忘れられた著作であった。〈最後の重商主義者〉(重商主義)と呼ばれるように,本書は資本主義生成期(重商主義期)の諸学説を究極的に総括し,資本の本源的(原始的)蓄積の諸制度や諸政策のための理論的基礎を与えようとした大著で,スミスの《国富論》も,この《原理》への対抗的意識から成立した。経済学の歴史上,スミスの生産力視角とは対照的に商品流通部面の視角から,経済学の体系化を最初に与えた画期的な著作で,社会体制の歴史認識,貨幣論,有効需要論等は,マルクスやケインズ学派によって高く評価されている。息子のジェームズ編の6巻から成る全集(1805)がある。
執筆者:時永 淑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…この意図は,D.ヒュームやJ.タッカーを経てA.スミスにつながる経済思想であった。
【主要な理論家・思想家】
重商主義期の主要な理論家・思想家としては,以上に挙げた人たちのほかに,イギリスでは,労働価値説を萌芽的に説き古典派経済学の最初の人と評価されているW.ペティ,私的所有権の根拠を労働に求めその見地に立脚してT.ホッブズからの前進を示し同時に貨幣・利子論の分野でも貢献したJ.ロック,ロックの貨幣・利子論の系譜に属する自由貿易論者J.バンダーリント,重商主義的性格を残しながらも特異な思想家として主著《蜂の寓話》(1714)を著したB.deマンデビル,古典派経済学の生誕を用意した関係にあるR.カンティヨン,J.ハリス,スミスの師F.ハチソン,さらに有効需要重視の観点から経済学の体系化を試み《経済学原理》(1767)によって〈最後の重商主義者〉と呼ばれることになったJ.スチュアートなどを挙げることができる。 イギリス以外の後進資本主義国だったフランス,ドイツ,アメリカなどは,イギリスの世界市場支配とその産業革命の進展に影響されつつ,その特殊な後進的社会構造を資本主義化したために,重商主義の語をこれらの国における歴史的体制概念として使用することは困難である。…
※「スチュアート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...