フランス東部,ストラスブールにある大聖堂。代表的ゴシック建築の一つ。1015年に建てられたロマネスク様式大聖堂の火災(1176)後再建され,袖廊は1190-1240年,身廊は1240-75年に建造された。1277年以来,工匠エルウィン・フォン・シュタインバハErwin von Steinbach(1244ころ-1318)らの指揮下に造られた,ボージュ山地産のばら色の砂岩による西正面は,ゴシック・レーヨナンgothique rayonnant様式の傑作。垂直線を強調し,上昇感をあおる造形をみせる。尖塔は,当初の予定を変更し北側のみ完成。南扉口の〈シナゴーグ〉(1230ころ)は,盛期ゴシック特有の端正さと優雅さをただよわせる。しかし一方,同じ南扉口の左側タンパン彫刻《聖母の死》(1230ころ)や西正面中央扉口側壁の彫像群(1280ころ)は,不気味なまでの情感表現と細部描写(衣の襞(ひだ),髪,髭(ひげ)など)を見せ,そこには,より精神的なものを志向するドイツ・ゴシック的な表現が現れている。
執筆者:馬杉 宗夫
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フランス北東部アルザス地方の中心都市ストラスブールにある、聖母に捧(ささ)げられたカテドラル(司教座をもった聖堂)。赤みがかった褐色砂岩を用いている。1015年献堂のロマネスク様式聖堂が1176年の火災で破損したのち、残ったクリプト(地下礼拝堂)やアプス、正面玄関部の一部を保ちつつ、1180年から1270年にかけてゴシック様式で再建された。正面玄関部はのち破壊されたが、北側の塔とともに1276~77年に修復されている。1870年から71年の戦争による徹底的な破壊にもかかわらず、彫刻やステンド・グラスも含めてみごとに修復された。正面玄関部と南北翼廊部の扉口に13世紀中ごろの彫刻が残る。また内部の南側翼廊中央に立つ「天使の柱」の彫刻が美しい。1250~70年に制作されたステンド・グラスも、北翼廊部の「バラ窓」をはじめとして質の高さを誇っている。この聖堂があるストラスブールの旧市街は1988年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[名取四郎]
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