日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ストークス(Sir George Gabriel Stokes)
すとーくす
Sir George Gabriel Stokes
(1819―1903)
イギリスの数学者、物理学者。数学および流体力学、光学、音響学など多方面にわたる業績がある。8月13日アイルランドのスクリーンで牧師の子として生まれる。ブリストル・カレッジを経て、ケンブリッジ大学に学び(1837~1841)、1849年同大学の数学科ルカス教授職についた。初め流体力学の研究にかかわり、粘性流体の数学的理論の発展に貢献した。その名は今日、流体力学の基礎方程式(ナビエ‐ストークスの運動方程式)に残っている。摩擦の研究を経て、1850年、粘性流体中を球体が運動するときの抵抗に関するストークスの法則を導出、これはナビエ‐ストークスの方程式からストークス近似により導かれたもので、粘性率測定の理論的基礎となった。これにちなんで動粘性率のCGS単位に彼の名がある。また流体が回転対称的な運動をする場合にストークスの流れの関数を導入した。1852年蛍光が紫外線によって引き起こされることを発見、蛍光の波長が吸収光の波長に等しいか、それよりも長いことを述べたストークスの法則は有名である。また太陽や星の化学組成をその光のスペクトルから決定することを提唱し、スペクトル分析への道を開いた。光行差、ニュートン環、回折、偏光、厚板の色、X線などの研究に重要な業績がある。数学では微分方程式、積分方程式に関する成果が多く、級数の収斂(しゅうれん)性の研究もある。ベクトル解析におけるストークスの定理は著名。また地球上の重力分布に関する研究は測地学に貢献した。1885~1890年ロイヤル・ソサイエティー会長、1887~1891年下院議員。1903年2月1日ケンブリッジで死去した。
[常盤野和男]