ラン藻綱ユレモ科の1属で,細胞糸が規則正しくらせん状に巻くことが特徴である。このことからラセンモの和名で呼ばれることがある。ユレモと同じように,細胞糸はゆれ運動をする。海にも生育するが,淡水産の種類が多く,日本には約10種の生育が知られる。細胞糸の太さは径1~2μmの種類が多いが,S.princeps W.et G.WestやS.gigantea Schmidleのように,4~5μmの太さになる大型の種もある。アフリカのチャド湖の北に点在する天然の炭酸ナトリウムを高濃度に含む小さい湖には,スピルリナ属の1種S.platensis(Nordst.)Geitlerが大量に産し,土地の人はケーキにして食べる。このラン藻は藻体の乾燥重量の45~49%に及ぶ多量のタンパク質を含み,また光合成による高い生産性を示すので,将来の食糧品として注目され,最近,人工養殖による企業化も試みられている。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
… 淡水藻の中には食用として利用されるものがある。おもなものにタンパク質を多量に含み栄養価の高い緑藻のクロレラとラン藻のスピルリナ,美味で干しノリまたはあえ物や吸物などの具として珍重される緑藻のカワノリ,ラン藻のスイゼンジノリとカワタケNostoc verrucosum (L.) Vaucher,中国料理に使われるハッサイ(髪菜)Nostoc commune Vaucher var.flagelliformis (Burk.et Curt) Bornet et Flach.などがある。とくにクロレラとスピルリナは光合成による高い生産性を示すので食品として注目を集め,すでに人工養殖が企業化されている。…
…細胞糸ははげしくゆれ運動をする性質があり,和名はこのことに由来し,学名も〈振れ動く〉の意である。似た藍藻スピルリナは細胞糸がらせん状に巻くことで,フォルミディウムPhormidiumは細胞糸の周囲に粘質物の鞘をもつこと,リングビアLyngbyaは固い鞘をもつことで,それぞれ区別される。海に生育し,ときどき大繁殖して赤潮を起こすトリコデスミウムの体はユレモと同一構造の細胞糸が多数からみ合ってできている。…
※「スピルリナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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