精選版 日本国語大辞典 「スペイン語」の意味・読み・例文・類語
スペイン‐ご【スペイン語】
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イベリア半島の大部分、北アフリカの一部、およびブラジルを除く中南米19か国(プエルト・リコを含む)で公用語として用いられている言語。それを日常使用している人々の数は約1億5000万人、使用人数のうえからは、中国語、英語に次いで、世界第3位といわれている。当然のことながら国際連合の公用語の一つとなっている。
フランコ総統の独裁政治の時代には、スペイン語しか公用語として認められなかったスペインにも、彼の死(1975)後、地方主義的傾向が急速に高まりをみせ、現在ではポルトガル語系のガリシア語、非インド・ヨーロッパ語の一つであるバスク語、主としてイベリア半島の東部で話されているカタルーニャ語の3言語も、スペインの公用語の仲間入りをしている。また、このほかに、スペイン語の下位区分としての方言として、カンタブリア山脈中で話されているレオン方言、ピレネー山脈の奥深い村々で話されているアラゴン方言、イベリア半島南部のアンダルシア方言がある。なお、中南米のスペイン語諸国で話されているスペイン語も、大まかにいって、アンダルシア方言と音声的に類似の特徴を有している。
[原 誠]
母音については、日本語と類似の、i、e、a、o、uからなる、きれいな五母音体系をなしている。子音については、まず有声・摩擦音系列、つまりv、ð、zといった音が欠けていることが目だった特徴であろう。また、非常に摩擦の強い無声・歯間音θや、江戸っ子の巻き舌に相当する震え音があることも特筆に値しよう。日本語の促音のような喉頭(こうとう)の緊張を伴う音や、声門閉鎖音を極度に嫌う言語でもある。音節構造が原則として「子音+母音」という組合せから成り立っており、口の開閉が最大限に行われることも手伝って、聞く者の耳に、スペイン語は歯切れのよい言語であるとの印象を与える。また、呼気の続く限り、たとえ単語と単語との間であろうと、音声をつなげて発音するのが原則なので、非常にスピーディーで聞き取りにくいという印象をもつ人もいるかもしれない。アクセントは、日本語のように音の高低によって単語の意味を弁別するのではなく、英語やドイツ語のような音の強弱からなるストレス・アクセントである。ただし、疑問文の場合などには、上昇調の音調が用いられることは、いうまでもない。
[原 誠]
名詞・形容詞に男性・女性、単数・複数の別があることなどは、スペイン語の主たる文法的特徴とはなりえないだろう。それよりもスペイン語の主たる文法的特徴は動詞にあるように思える。動詞には、直説法現在形、同完了過去形、同不完了過去形、同未来形、同過去未来形、接続法現在形、同過去形の合計七つの単純時制があり、各時制につき人称・数によりそれぞれ六つの相異なる活用形があるから、相当複雑な活用体系をなしているということができよう。また、これら七つの単純時制のおのおのにつき、「完了」を表す複合時制があることも忘れてはならない。このほかに命令法、不定詞、現在分詞、過去分詞もある。
以上を要するに、動詞の活用語尾が非常に複雑・多様であるために、英語、フランス語、ドイツ語のように、定動詞の前に主語人称代名詞を置くことが義務的ではなく、むしろそれを表出するほうが異常なくらいである。このことから、ひいてはラテン語ほどではないにせよ、語順が比較的自由であるという特徴が生まれる。そのほか、英語のように非常にポピュラーな動詞に副詞や前置詞をつけて新たな意味を出す手法を嫌う、すなわち単一の意味に単一の形をした動詞が対応するようになっている。再帰動詞も非常に多数である。つまり「起こす」という他動詞に、再帰代名詞「自分自身を」をつけて、自動詞的意味「起きる」を出す仕組みになっている。
[原 誠]
紀元前3世紀末のイベリア半島へのローマ人侵入以前の、イベリア半島の言語については、わずかのことしか知られていない。かろうじて、ケルト・イベリア語とかバスク語などが話されていたことがわかっている。そこへローマ人の侵入が始まったのだが、彼らがもたらしたラテン語は普通「俗ラテン語」とよばれている口語のラテン語であり、これはこの時期には、発音のうえでも、語彙(ごい)のうえでも、文法のうえでも、「古典ラテン語」とよばれている文語のラテン語とは著しく異なった言語となっていた。したがって、スペイン語の祖語は何かという問いに対し、「ラテン語」であるという答えは不正確であり、「俗ラテン語」であるという答えが正しい。なお、現在、大学で教えられているラテン語は「古典ラテン語」であり、スペイン語の祖語とは無関係である。この俗ラテン語は、ローマ人によってイベリア半島にのみ運ばれたわけではなく、ローマの勢力伸張とともにヨーロッパ各地に運ばれ、各地で先住民諸語を圧倒して公用語となった。それらの言語がルーマニア語、イタリア語、レト・ロマン語、サルデーニャ語、フランス語、プロバンス語、カタルーニャ語、スペイン語、ポルトガル語などで、総称してロマンス諸言語とよばれている。ということは、スペイン語は、イタリア語やフランス語やポルトガル語とは姉妹関係にあるということである。
話をもとに戻して、イベリア半島東部に運ばれた俗ラテン語は、のちにカタルーニャ語となり、同西部に運ばれたそれはのちにガリシア・ポルトガル語となった。そして、中央部に運ばれた俗ラテン語は、レオン方言、アラゴン方言、カスティーリャ方言の3方言に分かれて、それぞれ同名の地方に根を下ろすことになった。これらいずれのラテン系の言語も、ローマ侵入以前の先住民諸語を駆逐してしまったことは、一驚に値するのではあるまいか。現代スペイン語のなかに、ローマ侵入以前の諸言語からの借入語を捜してもさしたる数にはならない。ということは、現代スペイン語の母体は大部分、俗ラテン語であるということである。それを物語るかのように、5世紀初頭に北方から半島に侵入してきた、西ゴート人に代表されるゲルマン系の民族からの借用語は、ほんのわずかばかりの軍事関係の語彙のみであり、また8世紀初頭に北アフリカから怒濤(どとう)のようにスペインに侵入してきたイスラム教徒たちの話していたアラビア語からの借用語こそ、なるほど多数に上ったものの、音声面についてはアラビア語の音声の影響などいささかも受けていないのである。
さて、8世紀にイスラム教徒に対してカンタブリアの山中で始まったレコンキスタ(国土回復運動)において主導権を握ったのはカスティーリャ地方の人々であった。したがって、1492年のグラナダ王国の滅亡によって終了するレコンキスタが南下するにつれて、カスティーリャの人々が話していたカスティーリャ方言も南下し、これが結局15世紀末のスペイン王国成立とともに標準スペイン語となる。スペイン語のことを一名カスティーリャ語とよぶのはこのゆえである。さらに、このスペイン語は、1492年のコロンブスの航海以降、アメリカ大陸にもたらされ、123種を数えた先住民語を押しのけて、プエルト・リコを含む19か国の公用語として今日に至っているのである。
[原 誠]
『原誠著『スペイン語入門』(1979・岩波書店)』▽『原誠著『スペイン語の第一歩』(1980・三修社)』
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[分類・分布]
ロマンス語の分類に関してはさまざまな試みがなされているが,19世紀末に死滅したダルマティア語(かつてアドリア海東岸に分布)を今日使用されているロマンス語に加えたうえで,次のような分類が考えられる(配列順序はヨーロッパにおける分布をおおよそ西から東にたどったもの)。(1)ポルトガル語,(2)スペイン語,(3)カタロニア語(カタルニャ語,カタラン語とも),(4)オック語(オクシタン(語)とも),(5)フランコ・プロバンス語Franco‐Provençal,(6)フランス語,(7)レト・ロマン語(レト・ロマンス語とも),(8)サルジニア語(サルデーニャ語とも),(9)イタリア語,(10)ダルマティア語Dalmatian,(11)ルーマニア語。これらの〈言語〉はいずれもいくつかの地域的な変種(方言)を含んでいるが,(1)(2)(3)(6)(9)(11)のように超局地的な共通語(標準語)の確立している言語と,そのような標準語をもたない(4)(5)(7)(8)(10)のような言語とがある。…
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