アメリカの劇作家アーサー・ミラーの二幕戯曲。主人公ウィリー・ローマンは新時代の変化に対応できない老セールスマン。社会から脱落するにつれて精神の平衡を失い、2人の息子に託した夢も破れる。すべてに挫折(ざせつ)して初めて自己の実体に気づいた彼は、保険金目当てに自動車を暴走させ自殺する。
この作品は1949年2月、ニューヨークのモロスコ劇場でエリア・カザン演出により上演され、翌年11月まで742回のロング・ランを記録した。巨大な資本主義機構に打ちひしがれる人間の物語の形を借りて、ギリシア悲劇の理念を現代の平凡な人間像に生かし、「夢と現実の乖離(かいり)」の主題を、フラッシュ・バックの手法を駆使した大胆な舞台展開のもとに描き、大きな成功を収めた。なお、日本における上演は劇団民芸が滝沢修主演で行ったものが有名。初演は1954年(昭和29)。
[有賀文康]
『倉橋健訳『アーサー・ミラー全集Ⅰ』(1977・早川書房)』
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