ソテツ(読み)そてつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソテツ」の意味・わかりやすい解説

ソテツ
そてつ / 蘇鉄
[学] Cycas revoluta Thunb.

ソテツ科(分子系統に基づく分類:ソテツ科)の常緑低木。高さ約5メートルに達する。幹は円柱状で径約30センチメートル、古い葉の基部が残って黒褐色を呈する。単生または不定芽ですこし分枝する。あるいは幹の基部に多くの小さいむかご状の分枝を生じて親株の周りに叢生(そうせい)する。葉は羽状複葉で、茎頂に多数束生し、長さ0.5~1メートル。小葉は線形、長いもので約20センチメートル、中央脈がある。縁(へり)は内側に曲がり、表面は光沢のある濃緑色、裏面は淡緑色。雌雄異株。雌花雄花とも頂生し、初夏に開花する。雌花は大胞子葉が多数重なって球形となり、径約30センチメートル。大胞子葉は長さ約20センチメートルで羽裂し、下縁に扁卵(へんらん)形で長さ約4センチメートルの赤熟した種子を2、3個つける。雄花は長さ約4センチメートルの小胞子葉が螺旋(らせん)状に多数配列し、紡錘状円柱となって直立し、高さ約60センチメートル、径約15センチメートル。小胞子葉の裏面に葯(やく)を密生する。花粉が胚珠(はいしゅ)につくと発芽して花粉管ができ、その中に精子ができる。海岸や原野の岩壁に生え、とくに石灰岩地に多い。宮崎県以南の九州から沖縄、および中国大陸南部に分布する。

 庭園樹や盆栽とする。幹や種子に多量のデンプンを含み、これを煮て糊(のり)状にして食するため、沖縄では古く救荒植物として耕作不適地や畑の畔(あぜ)に盛んに栽培した。しかし、猛毒サイカシンを含み、十分に水洗除毒しないで食したため死亡者が出たこともある。栽培の形跡のある所に雌株が多いのは、種子採取のためと思われる。ソテツの精子が1896年(明治29)池野成一郎(いけのせいいちろう)によって発見されたのは、同年の平瀬作五郎(ひらせさくごろう)によるイチョウの精子発見とともに、植物学史上、画期的なことであった。

 なお、宮崎県串間(くしま)市、鹿児島県揖宿(いぶすき)郡・川辺(かわなべ)郡・肝属(きもつき)郡の「ソテツ自生地」は特別天然記念物に指定されている。

 ソテツ科は、分子系統に基づく分類ではソテツ科とザミア科に分けられた。ソテツ科にはソテツ属107種が含まれる。ザミア科には9属206種が含まれる。両科とも雌雄異株で亜熱帯から熱帯にかけて分布する。ザミア科のうち日本で観葉植物として栽培されているものにアフリカオニソテツオーストラリアのオニザミアや北アメリカ南部のフロリダソテツなどがある。現生の種子植物のなかではもっとも原始的な群と考えられている。

[島袋敬一 2018年3月19日]


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