精選版 日本国語大辞典 「ソナタ」の意味・読み・例文・類語
ソナタ
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西洋音楽用語。「奏鳴曲」の訳語がある。イタリア語で「奏する」という意味のソナーレsonareに由来し、器楽曲のある種のタイプを意味する。しかしこの語によって示される意味内容は時代によって大きく異なり、さらにこれには意味の安定しない前史があり、また使用法が混乱していく衰退期があって、この用語を統一した概念として説明するのは困難である。
ソナタということばの使用例は、さかのぼれば13世紀まで行き着くといわれているが、この語が楽曲の表題として用いられるのは、独立した器楽曲が盛んになる16世紀中期以後のことである。しかしその後17世紀中期までの1世紀ほどの間は、この語の意味するところに何かまとまった傾向を見いだすのはほとんど不可能であるし、またのちに鮮明になってくるこの語の意味内容とのつながりも明確ではない。しかし17世紀中ごろになると、このことばによってある程度はっきりした概念が示されるようになった。それはバイオリンなどの何声部かによって実現される合奏音楽で、テンポや拍子の異なったいくつかの部分(楽章)からなるものであった。演奏される場所は教会か宮廷(室内)であって、やがてその場所に応じてソナタのタイプは二分されていった。こうしたソナタの初期の発展はイタリアを中心に展開されたが、しだいにヨーロッパの各地に広まり、ことに二つの異なったタイプに分かれるのには、ドイツなどの影響も少なくなかったと思われる。
一つはソナタ・ダ・キエザsonata da chiesa(教会ソナタ)とよばれるもので、これは荘重な楽章、フーガ風な楽章、テンポの遅い装飾的な楽章、テンポの速い舞曲風な楽章などを組み合わせた三ないし五楽章からなる。テンポ、拍子、情調などの鋭い対比をその大きな特徴としているが、調性は変わることがない。のちに緩―急―緩―急という四楽章構成が典型的にみられるようになった。
もう一つのタイプはソナタ・ダ・カメラsonata da camera(室内ソナタ)とよばれるもので、各種の舞曲を対照的に連ねたものを基本とするが、舞曲以外のものがそこに入り込むこともあり、また舞曲の配列の仕方に、ある種の規範が認められることもある。この場合も、同一の調性によって全曲が統一されているということが特色の一つになっている。このような2種の楽章構成のタイプは、二つの旋律楽器と通奏低音という三声部によって演奏されることが多く、トリオ・ソナタsonata a treとよばれる演奏形態はバロック時代にとりわけ好まれた。しかし18世紀に入ってバロック時代も後期になると、単一の旋律楽器と通奏低音によるソロ・ソナタsonata a dueのほうが優位になっていく。
18世紀前半にすでに新しいタイプのソナタが試みられる。それは初めのうちは(ものによっては後になっても)かならずしもソナタと直接称されてはいなかったとしても、今日私たちが古典派やロマン派のソナタ、あるいは第一義的にソナタと概念化しているものの歴史がここに始まるのである。この新しいソナタのタイプもまたイタリアを発祥の地としているように思われる。そして今度はクラビア(有弦鍵盤(けんばん)楽器)がその発展に重要な役割を果たしている。さまざまな楽章を組み合わせた二楽章、三楽章、四楽章のものが、この楽器のために初めのうちはパルティータ、ディベルティメントなどといった名前で多く現れ、18世紀の3分の2が経過したころから、もっぱらソナタという名称をもつようになった。このころクラビアのためのソナタは、のちにソナタ形式とよばれる楽曲形成法による急速楽章―緩徐楽章―急速楽章という三楽章構成か、ウィーンなどでは上記の第二楽章もしくは第三楽章にメヌエットが入った三楽章構成に、ほぼ固まっていたように思われる。このタイプにバイオリンが、初めのうちは任意参加の形で、やがて必須(ひっす)のものとして加わることによってバイオリン・ソナタが成立した。同様にバイオリンとチェロが加わることによって、のちにピアノ・トリオとよばれる、三つの楽器のためのソナタが生まれた。
しかしこうした新しい多楽章形式としての古典派ソナタは、古典派様式の生成と発展とともに形を整えられていったのであるが、それはさらに、同じころにほぼ並行して新しく誕生してきたシンフォニーやクァルテットやコンチェルトなどとも互いに影響を受け合った。そうして、楽曲のタイトルとして普通はソナタと名づけられなかったこのようなジャンルも、また本来のソナタも、楽器編成の違いを度外視すれば、楽章配列や各楽章の基本的構造などの点で、この時代特有の一つの原理に支えられているといってよいことになる。後世はその原理をソナタという概念、あるいはソナタ多楽章形成Sonatenzyklusといったことばでとらえようとする。この「概念としてのソナタ」からいえば、シンフォニー(交響曲)はオーケストラのためのソナタであり、ピアノ・コンチェルト(ピアノ協奏曲)はピアノとオーケストラのためのソナタ、ということになる。その実体は、〔1〕ソナタ形式による急速楽章、〔2〕種々の形式による緩徐楽章、〔3〕メヌエットないしスケルツォ、〔4〕種々の形式による急速楽章、という四つの楽章を多楽章構成の骨格とし、どれかの楽章を欠いていたり(たとえばコンチェルトのように〔3〕を欠いているのが本来の形であるというジャンルもある)、より多くの楽章が付加されたり、配列の順序が異なったり、という幅の広いものである。こうしたソナタの原理は、20世紀に入るまでヨーロッパの器楽にほとんど絶対的な影響力をもった。
[大崎滋生]
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