改訂新版 世界大百科事典 「タルー」の意味・わかりやすい解説
タルー
Thāru
ネパール南部一帯から北インドのウッタル・プラデーシュ州のアルモーラ山地南麓にわたるタライ平原の原住民。人口約50万(1971)で,そのほとんどはネパール領内に住む。人種はいわゆるモンゴロイドとする説が強い。言語は固有のものがあったといわれるが,今ではそれぞれの居住地の周辺の人々と同じ北インド系の言葉を話す。彼らはタライおよびチューレ山脈の北の低地である内部タライの森林の周辺に,草ぶき平屋建ての家々から成る集村を営み,米,小麦,サトウキビなどを栽培し,牛などの家畜を飼い,最近まで焼畑も行っていた。自作農,地主も存在するが,山地のヒンドゥー教徒などとの接触により土地を失い,小作人,農奴などになっている人が多い。タルー全体は,異なる名称をもち居住地域も異なる下位集団(パードpād)に分かれ,内部に父系親族集団,大家族を理想とする家族がある。祖先崇拝など土着の信仰が見られるが,ヒンドゥー化も進む。
執筆者:石井 溥
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報