ターバン(読み)たーばん(英語表記)turban

翻訳|turban

デジタル大辞泉 「ターバン」の意味・読み・例文・類語

ターバン(turban)

頭に巻くスカーフ状の長い布。本来はイスラム教徒の男子のかぶり物で、帽子の上または直接頭に巻いたもの。色や巻き方で、身分・宗派・部族を表す。
1を巻いた形の婦人帽

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精選版 日本国語大辞典 「ターバン」の意味・読み・例文・類語

ターバン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] turban )
  2. イスラム教徒やインド人の男子が頭に巻いている布。普通はもめんまたは羊毛織で、ターブーシュと呼ぶふちなしのフェルト製の帽子の上または直接頭に巻く。色や巻き方により宗派・部族・身分などを表わす。
    1. [初出の実例]「中央党の中央に亜剌比亜式の白布(ターバン)くるくると頭に捲きつけて」(出典:大英游記(1908)〈杉村楚人冠〉前記)
  3. に似せた婦人帽。布は柔らかい薄地で、しわづけの美しさが特徴。
    1. [初出の実例]「芸者上りの彼女は、純白のドレスの胸にピンクの薔薇をつけて、頭には真紅のターバン」(出典:世相(1946)〈織田作之助〉二)

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改訂新版 世界大百科事典 「ターバン」の意味・わかりやすい解説

ターバン
turban

亜麻,木綿,絹などの長短いずれかの布をスカーフ状に折りたたんで頭に巻いた頭飾をいう。その形状,素材,サイズ,色などは地域,時代により多種多様である。

古代インドではウシュニーシャuṣṇīṣaと呼ばれるターバンが用いられた。前1000年ころのベーダ文献によれば,それは短い布を簡単に結んだものと,長い布を独特の形に結んだものの2種類あったと思われる。短いものの中には,インドラ神妃の独特の持物とされた,女性用のヘアバンドも含まれる。王族は長いものを用いたが,即位式にはとくに白いターバンを着ける儀礼が行われた。また王族に仕えた御者たちや,ブラーティヤと呼ばれた特殊な宗教家集団は,それぞれに独特なターバンを用い,その集団の徴標(しるし)としていた。一方,紀元前後の仏教遺跡の浮彫などからは,農民,商人,王族または象使い,軽業師たちがさまざまなターバンを用いていたことが知られる。中世には侵入したイスラム教徒のターバンが目だつが,ヒンドゥー教徒が用いなくなったわけではない。王権の象徴として,赤いターバンを牛などとともに,宮廷祭官の謝礼に贈ることも行われた。現在,ヒンドゥー教徒はあまりターバンを用いなくなっている。その中でシク教徒の獅子派と呼ばれる人々は,第10祖ゴービンド・シングの定めた五つの戒律に従って,その一環として,毛髪やひげを切らずに,日に2回髪をくしけずり,それを頭の上に巻き上げ,その上にターバンを巻く習慣を守っている。
執筆者:

アラビア語ではイマーマ`imāmaと呼ばれ,普通ターキーヤṭāqīyaという頭にきっちりはまる木綿の丸帽をかぶり,その上に巻くが,これは汗を抑える効果がある。ターバンはその色によって,宗派,家系,王朝,職能を区別する機能をもった。たとえばアッバース朝では黒,ファーティマ朝では白いターバンが使われた。時代がより近くなると,白地のターバンはアズハルで学んだシャイフ層および農村部の老人が一般に使った。黒地はコプト教徒,ユダヤ教徒,エジプトの民族運動指導者であるサード・ザグルールの支持者,さらにリファーイー教団のデルウィーシュのターバンの色となった。緑色は預言者ムハンマドの子孫を示す色となり,赤色はバイユーミー教団のデルウィーシュのシンボルとなった。近代になるとターバンを巻く者をムアンマムといい,保守伝統派をなし,一方タルブーシュ帽(トルコ帽)をかぶる者はムタルバシュと呼ばれ,進歩派となり対立がみられたが,トルコでもケマル・アタチュルクが宗教人以外にはターバンを廃止させ,エジプトでは現在アズハルのシャイフや農村部の老人層が着けるのみとなった。
執筆者:

ヨーロッパで,このように長い布を巻いたかぶり物が婦人帽として流行したのは,19世紀の初期である。ナポレオンが,エジプト遠征からフランスへ帰国の際に持ち帰ったのが初めとされている。第一帝政時代に流行した,古代ギリシア風のほっそりとしたエンパイア・スタイルには,このターバンがよく調和した。夜間用には真珠,宝石を散らした豪華なターバンが大流行した。1909年,パリのオペラ座でバレエ・リュッスの《シェエラザード》を見たオート・クチュールのデザイナー,P.ポアレは,レオン・バクストの舞台衣装に魅せられ,11年に登場人物のハレムの女性たちの衣装をヒントに,裾のすぼまったホブル・スカート(ホブルはよちよち歩きの意)を発表した。このとき,このスタイルに添えた白いサギの羽根をつけたターバンが,新しく流行した。以来,頭頂部の周囲にやわらかい布地でひだを寄せてまとめたターバンは,現代ファッションの中でも,流行に関係なく頭飾として愛用されている。
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ターバン」の意味・わかりやすい解説

ターバン
たーばん
turban

(1)おもに中近東の男子イスラム教徒を中心とした被(かぶ)り物で、細長い布や、地方によっては四角い布を、頭部に直接巻き付けたり、半球状の帽子などの上から巻き付けて形づくる。素材は、絹、木綿、羊毛、麻などの薄手のもので、長さ5~7メートルを用い、色や巻き方によって、社会的地位や職業、民族などの違いが現れる。巻いた布の端は、内側に押し込んだり、一方だけ垂らしておいたりする。この布はターバンスカーフともいう。(2)婦人用帽子で、18~19世紀に現れたターバンに似た形のもの。ナポレオンが第一帝政時代にエジプトへ遠征し、羽飾りや豪華な材質をもたらした影響を受け、柔らかい布製で頭部にぴったりした形の帽子に、ターバンのようなひだづけをしたり、プリーツをとったりして羽や植物を飾った。同じようなターバン状の帽子は、1930年代から40年代にも現れているが、それ以後50年代にも服のデザインにあわせてかぶられた。また70年代になって一時流行したことがある。ターバンハットともいう。(3)中米を中心に現地の女性が、ターバン状にしてかぶる色鮮やかな四角い大きな布。

 ターバン状に布を頭に巻くのは、紀元前のオリエントにすでにみられるが、ペルシアのミトラがターバンの原型であるという説もある。ターバンはトルコ語のtürbendやペルシア語のdulbandから発した語で、古い英語では、torbantといった。

[浦上信子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ターバン」の意味・わかりやすい解説

ターバン
turban

本来イスラム教徒男性のかぶりものであるが,中央アジア,パキスタン,インド,北アフリカに広まった。幅約 25cm,長さ5~10mのモスリン,亜麻布,木綿,絹などの薄地を,ひだづけしながら頭のまわりに巻きつける。その方法,形,色,柄,装飾などは時代,民族,階級などによって一定しないが,ひだづけした柔らかいふくらみをもつチューリップ状のものという点では共通している。ターバンの類型はすでに前 2000~1000年のバビロニアやアッシリアにみられ,古代ペルシアを経てほぼ 14世紀のトルコを中心に確立した。本来男性専用であったが,18世紀末以後は婦人帽にも採用され,布地を柔らかくひだづけしながら巻きつける方式の帽子の総称となった。語源はトルコ語の tülbend。

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百科事典マイペディア 「ターバン」の意味・わかりやすい解説

ターバン

イスラム教徒および近東諸国,インドの男性が頭に巻くかぶり物。イスラムでは普通はターキーヤという頭にぴったりした丸帽の上から毛,麻,綿,絹などの長い布を巻く。その色や巻き方は身分,階級,宗派,部族などにより異なる。このスタイルをとり入れた婦人帽もターバンといい,19世紀から用いられている。
→関連項目帽子

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