ターパン(読み)たーぱん(英語表記)tarpan

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ターパン」の意味・わかりやすい解説

ターパン
たーぱん
tarpan
[学] Equus caballus ferus

哺乳(ほにゅう)綱奇蹄(きてい)目ウマ科の動物。タルパンともいう。ヨーロッパ全域とアジアの一部に分布していたが、1896年に絶滅した。家畜のウマの原種の一つと考えられている。モウコノウマ(プシバルスキーウマ)E. c. przewalskiiとは別亜種とされる。ターパンには、南ロシアの草原にいた大形のソウゲンターパンと、ヨーロッパ中・東部森林にいたシンリンターパンの2タイプが知られている。体高は、前者が1.3メートル、後者が1.2メートル。体色はねずみ色で、たてがみと尾は黒色、背中に幅広い黒縞(じま)が通る。人間による狩猟が絶滅の原因と考えられている。シンリンターパンによく似た、ポーランドのコニックというウマなどをもとに、ターパンを復原する努力が1930年代にポーランドとドイツで始められた。1950年代以降、欧米の動物園で姿や形が原型に似たウマが復原されターパンとして飼われている。

[祖谷勝紀]

『今泉吉典監修『世界の動物 分類と飼育4 奇蹄目・管歯目・ハイラックス目・海牛目』(1984・東京動物園協会)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ターパン」の意味・わかりやすい解説

ターパン
tarpan

奇蹄目ウマ科の哺乳類。家畜のウマの祖先と考えられている,かつてヨーロッパ南東部の草原に生息した野生ウマ。中程度の大きさのウマで,灰色の体色にたてがみと尾が黒であった。やや体が大きく,南ロシアの草原に生息したソウゲンターパンEquus ferus ferusと,やや小型で,中央ヨーロッパと東ヨーロッパの森林に生息したシンリンターパンE.f.silvestrisがあった。狩猟と家畜のウマとの交雑のために,後者の多くは中世までに絶滅し,南ロシアに最後に残った前者の群れも19世紀に滅びた。プシバルスキーウマE.f.przewalskii近縁
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ターパン」の意味・わかりやすい解説

ターパン
Equus caballus gmelini; Equus ferus; tarpan

奇蹄目ウマ科。絶滅種。現在のウマは,これを家畜化したものであるといわれている。ヨーロッパ中央から東部にかけて 1800年代初めまで生息していたシンリンターパン E.f.silvaticusと,南ロシアの平原から森林にかけて 1870年代まで生息していたソウゲンターパン E.f.ferusの2亜種に分類される。体高はシンリンターパンが 1.2m,ソウゲンターパンはやや大きく 1.3m。体重は 250kg以上。体色は灰色,前髪とたてがみ,尾,四肢の下半分が黒い。背の中央に太い黒色の縞が走る。絶滅の原因はヒトによる狩猟や環境破壊による生息域の減少,家畜ウマとの交雑によると考えられる。 1930年代から,ヨーロッパではターパンの血を濃く引くといわれるポーランド産の家畜ウマ (コニック) を使って復元が試みられた。現在,動物園などで見られるターパンはこうした復元種である。

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世界大百科事典(旧版)内のターパンの言及

【ウマ(馬)】より

…このほか有色毛と白色毛のまざる糟毛(かすげ),斑紋のある斑毛(ぶちげ)などもある。
【祖先種】
 家畜のウマの祖先種についてはプシバルスキーウマ(モウコウマ)Przewalskii horseのみと主張する単元説と,そのほかにターパンtarpanやシンリンターパンがあったとする多元説とがある。プシバルスキーウマは現存する唯一の野生馬で,モンゴルやゴビ砂漠に小群で生活している。…

【ウマ(馬)】より

…現世のものはウマ科ウマ属しかない。ウマ属には,ウマ亜属(プシバルスキーウマ,家畜のウマおよび絶滅したターパン),アジアノロバ亜属(オナジャー,キャン),グレビーシマウマ亜属(グレビーシマウマ),シマウマ亜属(サバンナシマウマ,ヤマシマウマ,絶滅したクアッガ)と,それらと古く分かれたロバ亜属(アフリカノロバと家畜のロバ)がある。北アメリカ起源であるが,現代では野生種はアジア,アフリカにだけ分布する。…

※「ターパン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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