精選版 日本国語大辞典 「ダイナマイト」の意味・読み・例文・類語
ダイナマイト
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スウェーデンのノーベルが発明した、ニトログリセリンを含有する爆薬の総称。混合ダイナマイトとニトロゲル系ダイナマイトがあり、アメリカでは前者が、ヨーロッパや日本では後者が使われている。日本ではニトログリセリンまたはニトログリセリンとニトログリコールの混合物にニトロセルロースを配合してできたニトロゲルが6%を超えるものをダイナマイトとよんでいる。ダイナマイトの語は、その強力な爆発威力により「力」「運動」を意味するギリシア語のデュナミスdynamisからつくられた。
[吉田忠雄・伊達新吾]
1846年イタリアのソブレロによってニトログリセリンが合成され、その爆発威力が、それまで用いられてきた黒色火薬に比べて格段に強いことがわかった。ノーベルは、火をつけただけでは簡単に爆発しないニトログリセリンを確実に起爆させる方法として雷管を発明(1864)した。ニトログリセリンはわずかな打撃で爆発し、非常に危険なので、これを珪藻土(けいそうど)に吸収させて、より安全な珪藻土ダイナマイトを1866年に発明した。
珪藻土ダイナマイトは安全ではあったが、爆発威力はニトログリセリンの70%程度で弱いという問題点が残っていた。1875年ノーベルは、ニトログリセリンと窒素量が12%台のニトロセルロースを混ぜるとゴム状またはゼラチン状の塊となり、これが珪藻土ダイナマイトより強力な爆発威力をもつことを知り、ゼラチンダイナマイト(ニトロゲル)と名づけた。ヨーロッパや日本ではこのニトロゲルを基剤としたダイナマイトが発展し、ニトロゲルに硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、木粉、デンプン、ニトロ化合物などの混和剤を加えたダイナマイトが主流となった。
アメリカでは、ニトロセルロースを用いずニトログリセリンを直接混和剤と混ぜた混合ダイナマイトがおもに用いられている。ストレートダイナマイトは混和剤として硝酸ナトリウムや木粉、デンプンその他を用いたものであり、アンモニアダイナマイトはそのほかに硝酸アンモニウムを用いたものである。珪藻土ダイナマイトは、前述のようにニトログリセリンを珪藻土に吸収させたものである。しかし、これらの爆薬は感度が鋭感であり、また、貯蔵温度の上昇などによりニトログリセリンが抜け出す危険性があるため、日本では製造されていない。
混和剤としてニトロセルロースを用いることによってダイナマイトのコストを下げ、可塑性を増して取扱いを容易にし、爆発威力を調節し、劣化を抑えるなどの利点が得られた。ニトロゲル含量が6~18%のものは粉状で粉状ダイナマイトとよばれ、18%以上のものは膠(にかわ)状で膠質(こうしつ)ダイナマイトとよばれる。日本ではダイナマイトは松、桜、桐(きり)、榎(えのき)、桂など植物の名を冠して区別されている。
膠質ダイナマイトは、ニトロゲルを混和剤と練り混ぜて、棒状に成形し、紙で包装してつくられる。粉状ダイナマイトはニトロゲルを混和剤と混合し、あらかじめつくっておいた紙筒に填薬(てんやく)し、口締めしてつくられる。
[吉田忠雄・伊達新吾]
ダイナマイトの特長は、爆発威力が大きいこと、爆発でできるあとガス(後ガス)がきれいであること、隣の爆薬包をたとえ間隙(かんげき)があっても伝爆させる殉爆性がよいことなどである。このため20世紀後半ごろまで工業爆薬の王座を保ってきた。
しかし、いくつかの問題点もある。ニトログリセリンやニトロセルロースのような硝酸エステルを含有しているため安定性に問題があり、安定度試験が法規で義務づけられている。また、貯蔵中に爆速が小さくなる劣化現象や、ある程度以上の圧力をかけると爆発がおこらなくなる死圧現象がある。さらに、ニトログリセリンが凍結して危険な状態となることがあり、現在はニトログリコールが入っているためにこの心配はなくなったものの、ニトログリコールやニトログリセリンには毒性があり、また、ニトログリセリンがしみ出す危険性もある。このような問題のため、1980年代前半には硝安油剤爆薬や含水爆薬がダイナマイトにとってかわられ、ダイナマイトの生産量は産業用爆薬類全体の数パーセントにすぎなくなった。
[吉田忠雄・伊達新吾]
『山川道雄編『産業火薬』(1982・日本産業火薬会)』▽『中原正二著『火薬学概論』(1983・産業図書)』▽『火薬学会編、田村昌三監修『エネルギー物質ハンドブック』第2版(2010・共立出版)』▽『Paul W. CooperExplosives Engineering(1996, Wiley-VCH, Berlin)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
ニトログリセリンを含有する工業爆薬の商品名として,A.B. Nobel(ノーベル)が命名したが,現在は普通名詞となっている.日本では,ニトログリセリン7% 以上含有するものをダイナマイトと称し,これ以下のときは爆薬といっている.ダイナマイトは状態により,こう質,半こう質,粉状に分けられる.Nobelがはじめてダイナマイトを製造した1866年当時は,ニトログリセリンとけいそう土とを混合したもので,混成ダイナマイトといわれるものであったが,現在このような形のものは用いられず,ニトログリセリンと綿薬をこう化したニトログリセリンゲルの形で混入されている.ニトログリセリンと綿薬のみでできたものを松系ダイナマイト,これに酸化剤として硝石を加えたものを桜系ダイナマイト,硝安を加えたこう質ダイナマイトを桐系ダイナマイトという.このほか,炭鉱用にこう質の梅系ダイナマイト,粉状の硝安ダイナマイトなどがある.1955年ころから台頭してきたアンホ爆薬のために,ダイナマイトは衰退しつつあるのが世界的傾向である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
…クリミア戦争(1853‐56)時に爆薬の製造に従事していた父親のエマニュエルEmanuelの事業を助け,戦後59年一家がスウェーデンに戻ってからは爆薬の改良に専念するようになる。その結果,これまで爆薬として製造してきた,爆発しやすく取扱いの不便な液状ニトログリセリンをケイ藻土にしみこませることにより,安定した取扱いの容易な可塑性の固形爆薬とすることに成功,これを〈ダイナマイト〉と名づけて67年にスウェーデン,イギリス,アメリカで特許をとった。さらに雷汞(らいこう)を起爆剤とした発火装置,コロジオンにニトログリセリンを配合したゼラチン状の〈特殊ダイナマイト〉,無煙火薬などをつぎつぎに発明,約355種の特許をとり,スウェーデン,ドイツ,イギリス,スコットランドなど世界各地に15の爆薬工場を経営,のちこれらを基盤にノーベル・ダイナマイト・トラスト会社を創設,巨万の富を築き,また,バクー油田の開発でも財をなした。…
※「ダイナマイト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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