チュルク諸語(読み)チュルクしょご

精選版 日本国語大辞典 「チュルク諸語」の意味・読み・例文・類語

チュルク‐しょご【チュルク諸語】

〘名〙 (チュルクTurk) 中央アジアを中心に、トルコ語が話されているアナトリアから東シベリアにかけてユーラシア大陸を横断する広大な地域に分布している同系統の諸言語の総称母音調和がよく発達していることなどが特徴。蒙古諸語ツングース諸語とともにアルタイ諸言語を構成すると考えられている。主な言語に、トルコ語、アゼルバイジャン語カザック語キルギス語ウズベク語トルクメン語タタール語チュワシ語、バシュキル語、カライム語ヤクート語など。

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百科事典マイペディア 「チュルク諸語」の意味・わかりやすい解説

チュルク諸語【チュルクしょご】

トルコ共和国のトルコ語および同系諸言語の総称。Turkic。トルコ語,トルクメン語アゼルバイジャン語カザフ語キルギス語ウズベク語ウイグル語トゥーバ語ハカス語アルタイ語タタール語バシキール語チュバシ語ヤクート語など。カフカス南部から旧ソ連,中国にまたがる中央アジアを中心にボルガ,ウラル両河中流域,アルタイ山脈付近,東シベリアなどにも分布。ボルガ中流付近のチュバシ語,東シベリアのヤクート語を除けば諸言語間の差異は少なく,発達した母音調和と簡単で規則的な文法構造が特色をなす。文構造は極めて日本語に近い。最古文献は8世紀の突厥(とっくつ)碑文で,10世紀ころからの古代ウイグル語がこれに次ぎ,15世紀ころからは,チャガタイ文語など各地でアラビア文字による文章語が発達した。20世紀初めからローマ字正書法を採用する言語が多くなったが,ソ連邦内の諸言語ではロシア文字正書法に改められた。ソ連邦が崩壊して各国が独立するに及び,再びローマ字正書法に戻りつつある。中国におけるチュルク語ではアラビア文字を用いる。→アルタイ諸語トルコ系諸族
→関連項目ウイグル文字カザフ[人]ソグド語トルクメン[人]モンゴル諸語

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チュルク諸語」の意味・わかりやすい解説

チュルク諸語
チュルクしょご
Turkic languages

トルコ共和国のトルコ語,およびそれと同系の諸言語をさす。中央アジア,中国のシンチヤン (新疆) ウイグル自治区,シベリアに広く分布している。話し手約1億人。主要言語は,トルコ語,アゼルバイジャン語,トルクメン語,ウズベク語,キルギス語,カザフ語,カラカルパク語,ノガイ語,クミク語,バシキール語,タタール語,トゥーバ語,ウイグル語,ヤクート語,チュバシ語など。この語族は言語的にかなり均質で,ただヤクート語,とりわけチュバシ語が他から著しく異なるだけである。文法構造上,膠着性を共通にもつ。母音調和もほとんどすべての言語に存在する。最古の文献は8世紀のオルホン碑文・エニセイ碑文であるが,それから現代諸言語への変化はそう大きくない。文字は 1920年代初めまでアラビア文字が使われたが,旧ソ連領内のトルコ族はローマ字を経て現代はロシア文字を使用。トルコ語もローマ字を使用し,アラビア文字は中国やイランなどのトルコ族が使っているだけである。チュルク諸語は,モンゴル語ツングース語とともにアルタイ語族を形成するという見方が有力であるが,証明が完成しているとはいえない。

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世界の主要言語がわかる事典 「チュルク諸語」の解説

チュルクしょご【チュルク諸語】

トルコ系諸言語の総称。トルコ語、アゼルバイジャン語、タタール語、トルクメン語、ウズベク語、カザフ語、キルギス語、ウイグル語、ヤクート語などがある。バルカン半島から東シベリアまで、広大な地域に分布する。表記にはラテン文字、キリル文字、アラビア文字など、地域によって異なる文字が使われる。言語的には、厳格な母音調和や膠着語的な文法構造が特徴。8世紀の突厥碑文(とっけつひぶん)、11世紀の古代ウイグル語の文献などが歴史的に古い資料として知られる。モンゴル諸語、ツングース諸語とともに、共通の祖語をもつアルタイ諸語を構成するとされるが、定説ではない。◇トルコ系諸語ともいう。◇英語でTurkic。

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世界大百科事典 第2版 「チュルク諸語」の意味・わかりやすい解説

チュルクしょご【チュルク諸語 Turkic】

広い意味のトルコ語。狭い意味のトルコ語がトルコ共和国語をさすのに対して,トルコ共和国語を含めて,アジア大陸,ヨーロッパ大陸に広く分布する同族のトルコ系諸言語のすべてをさす。ロシア語で,前者をトゥレツTurets語,後者をチュルクTyurk語といって区別するのに当たる。西はバルカン,クリミア(ほぼ東経21゜)からボルガ川中流地帯,中央アジア,シベリアおよび中華人民共和国の新疆ウイグル自治区,そして東はレナ川流域(ほぼ東経160゜)に至る広大な地域に分布するが,話し手の数は約4000万(数え方にもよるが数の上では世界第10位)である。

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世界大百科事典内のチュルク諸語の言及

【アルタイ諸語】より

…これらの諸言語が互いに親族関係にあってアルタイ語族をなすとの説が有力で,さらに朝鮮語や日本語をも含めた親族関係が問題にされることがある。分布地域は広く,一部で重なり合いながら東ヨーロッパからシベリアに及ぶが,チュルク諸語は中央アジアを中心に東ヨーロッパ,中国西部,シベリアの南部・中部などに話されており,モンゴル諸語はモンゴル,中国の内モンゴル地方を中心に,ボルガ川中流,アフガニスタン,シベリアのバイカル湖付近などに分布する。ツングース諸語は中国の新疆ウイグル自治区,東北地方などに一部話されているが,沿海州やシベリア中部から東部にかけて分布する。…

【チャガタイ語】より

…トルコ系言語(チュルク諸語)を話す人々が,かつて中央アジア(旧西チャガタイ・ハーン国領を含む)で用いていた文字言語。この古典文語は大部分アラビア・ペルシア文字によって表記されていて,ティムール朝(1405‐1506)で発達し,国家の公用語・外交語として用いられ,また詩人アリー・シール・ナバーイーの作品に代表される文学語でもあった。…

【突厥語】より

…突厥時代に建置された突厥碑文やウイグル帝国時代の碑文,さらにはエニセイ川流域のエニセイ碑文などに突厥文字を用いて刻まれたチュルク語のことを一般に突厥語と呼んでいる。これらの碑文は,チュルク諸語文献中最古のもので,突厥語は古代チュルク語の主要な部分を構成している。突厥語は,言語資料としては量の多いものではないが,チュルク語史やアルタイ語比較研究にとってはきわめて重要な役割を果たす。…

【トムセン】より

…印欧語については,ロマンス語の音韻史,ゲルマン語とバルト語との関係,ゲルマン語およびバルト語とフィン語との関係についての論文がある。1893年,シベリアのオルホン川,エニセイ川両河岸で発見された碑文を解読し,最古(8世紀)のチュルク語(チュルク諸語)資料を提供した業績は世界言語学史上に輝くもので,日本の東洋史家の間に古くから知られている(1894年刊《オルホンおよびエニセイの碑文の解読》,1896年刊《解読されたオルホン碑文》)。のち,ヒンディー語,サンターリー語を研究した。…

【トルコ語】より

…狭義ではトルコ共和国の言語をさし,広義ではアジア大陸,ヨーロッパ大陸に広く分布するチュルク諸語をさす。トルコ語を母語とする者は,トルコ共和国に1990年現在で約5195万人(共和国の人口の約92%),ブルガリア,ルーマニア,ギリシア,旧ユーゴスラビアなどにも少数いる。…

※「チュルク諸語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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