精選版 日本国語大辞典 「ツンドラ」の意味・読み・例文・類語
ツンドラ
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北極海を囲む高緯度地方では、タイガよりさらに北方に樹木の生育しない荒原が広がる。この荒原またはその植生をツンドラとよぶ。
ツンドラの分布域は大部分が北極圏(北緯66度以北)に含まれ、年間を通じて低温で降雪は少ない。このため地面は凍結し、厚い永久凍土層が形成されている。夏になると気温は東京の冬程度にまで上昇し(平均気温で0℃~10℃)、植物がようやく生育可能になる。おもな植物はイネ科・カヤツリグサ科スゲ属の草本、コケモモ、キョクチヤナギ、マメカンバ、チョウノスケソウなどの矮(わい)低木、それにコケや地衣類などで、背の高い樹木は生育できない。夏には永久凍土層の表層1メートルほどが融(と)けるが、凍土層が水の浸透を妨げるため、融解水は地表に停滞し、全体が湿地状になる。このためミズゴケやスギゴケが生育しやすく、それらの遺体は堆積(たいせき)して泥炭をつくる。
ツンドラの動物相は、植物相が貧弱なのに比べると、著しく豊富である。コケ類を食べるトナカイやジャコウウシはその代表的なものであるが、ほかに多数の鳥類やレミング、ノウサギがおり、それらを捕食するキツネ、オオカミの類も多い。海岸にはアザラシ、オットセイ、ラッコが多数生息している。蝶やカをはじめとする昆虫類も多い。
ツンドラでは農業は不可能で、ここに住むエスキモーやサーミ人は、狩猟やトナカイの遊牧を生活の手段としてきた。しかし第二次世界大戦後になると、米ソ対立のあおりを受けて極北のツンドラ地帯にも軍事基地が多数置かれることとなった。
[小泉武栄]
寒冷のために高木が育たず、多年草と矮生低木に蘚苔(せんたい)類、地衣類を多く交えた高さ10~20センチメートル内外の植物群落が優占する。構造土などによる地表のわずかな高低によって数種の植物群落がモザイク状に生ずることが多い。なお、高山帯における同質の植生を高山ツンドラとよぶこともある。
[大場達之]
伝統的にツンドラを生活の場としてきた諸民族は、ユーラシア大陸ではサーミ、サモエード系諸民族、ツングース(エベンキ)系諸民族とサハ人(ヤクート人)の一部、アジア諸民族であり、アメリカ大陸ではエスキモー(イヌイット)など極北に住む先住民族の一部である。ツンドラは一般的に、農耕、牧畜はほとんどできないため、その住民の狩猟と漁労への依存度はきわめて高い。しかし、状況はアメリカ大陸とユーラシア大陸とで大きく異なる。ユーラシア大陸では伝統的にトナカイを飼育する技術が普及しており、18世紀末期以来、ツンドラの広い空間を利用した多頭飼育へと発展し、狩猟、漁労と並ぶ重要な生業となっていた。それに対し、アメリカ大陸では豊富な野生のカリブーや海獣などを狩猟する状態が続き、トナカイ飼育は定着しなかった。現在は両大陸とも多くのヨーロッパ人が入り、鉱工業が成長したため、従来トナカイ飼育や狩猟、漁労に依存していた人々のなかでも鉱山や工場、公共施設などで働く者が増え、生活もその影響で大きく変わった。
[佐々木史郎]
『斎藤晨二著『ツンドラとタイガの世界』(1985・地人書房)』▽『NHK北極圏取材班著『ツンドラ街道を、どこまでも――極北の旅8000キロ』(1990・日本放送協会)』
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…世界的にみれば,気候が変われば相観は変わる。東アジアのような湿潤地域での熱帯から寒帯へという温度変化に伴っては,巨大高木を含めて3層の高木層をもち優占種がない常緑の熱帯多雨林,巨大高木層のなくなる亜熱帯多雨林,優占種が目だつ暖温帯常緑広葉樹林(照葉樹林),冷温帯落葉(夏緑)広葉樹林,亜寒帯針葉樹林,寒帯荒原(ツンドラ)へと移行する。熱帯での湿潤から乾燥へという変化に伴っては,熱帯多雨林,乾季に上層木が落葉する半常緑熱帯多雨林,全体が落葉する熱帯季節(雨緑)林,樹木を混じえた熱帯草原(サバンナ),とげ低木の生育する半砂漠,短命草本が出現する砂漠へと移行する。…
…
[三つの大地]
土壌と植物相の点からみれば,ロシア平原は緯度にほぼ平行して走る線によって,北から次のように分類することができる。(1)極北地帯 北緯66.5゜以北の北極圏に入るツンドラ,すなわち永久凍土地帯である。地表が氷雪から解放されるのは夏季の2ヵ月ほどで,湿地にはスゲやミズゴケ,排水のよい台地にはコケモモ,ハイマツなどが生育する。…
※「ツンドラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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[1864~1915]ドイツの精神医学者。クレペリンのもとで研究に従事。1906年、記憶障害に始まって認知機能が急速に低下し、発症から約10年で死亡に至った50代女性患者の症例を報告。クレペリンによっ...
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