改訂新版 世界大百科事典 「デュワー」の意味・わかりやすい解説
デュワー
James Dewar
生没年:1842-1923
イギリスの化学者,物理学者。スコットランドの生れ。エジンバラ大学卒業後,ベルギーのF.A.ケクレのもとに学んだ。1875年ケンブリッジ大学教授,77年ロンドンのローヤル・インスティチューションの化学教授となり,1904年ナイトの称号をうけた。初期には有機化学を手がけるが,その後ライビングG.D.Liveingとともにアルカリ金属をはじめとする種々の金属のスペクトルの研究を行い,スペクトル系列発見の先駆をなした。1874年ごろから気体液化の研究をはじめ,95年C.vonリンデと同じころ空気の液化に成功した。また,液体酸素を多量につくる装置をつくり,液体酸素,液体オゾンの磁性を測定した。98年液体水素をつくり,その屈折率などを測定し,翌年水素の固体化にも成功した。そのほか低温における元素の比熱,リン光の研究など各種物性の研究で知られているが,彼の名を有名にしたのはデュワー瓶(魔法瓶)の発明(1893)である。また,1891年エーベルF.Abelと共同で史上最初の煙の出ない火薬である,ひも状無煙火薬を発明した。
執筆者:矢木 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報