デンプン(澱粉)(読み)でんぷん

百科事典マイペディア 「デンプン(澱粉)」の意味・わかりやすい解説

デンプン(澱粉)【でんぷん】

ブドウ糖を構成単位とする多糖類の一種。分子式は(C6H12O5)(/n)。植物の根,茎,種子果実などの貯蔵物質として,また動物の炭素源として重要。日中緑色植物光合成によって作られ,夜間加水分解されて可溶性の糖になり貯蔵部位に運ばれ,再合成されて貯蔵デンプンになる。これらデンプン粒は植物の種類によって形状,性質が異なる。構造は単一ではなく,α-1,4結合した直鎖状のアミロースヨウ素デンプン反応は青)と,所々にα-1,6結合の枝分れをもつアミロペクチン(同反応は赤紫)の混合物。酸,酵素アミラーゼなどで加水分解されて,デキストリン麦芽糖を経てブドウ糖になる。生デンプン(β‐デンプン)は比較的規則的な構造をとっているが,加熱されると糊化し(α‐デンプン),消化作用を受けやすく,味もよくなる。ジャガイモトウモロコシコムギなどから工業的にとり出され,食品,発酵工業原料のほか,繊維用糊,医薬用など用途が広い。
→関連項目炭水化物デンプン(澱粉)料作物

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版 「デンプン(澱粉)」の意味・わかりやすい解説

でんぷん【デンプン(澱粉) starch】

緑色植物に存在する多糖でエネルギーを貯蔵する役割をもつ物質。デンプンは光合成の結果,葉の葉緑体中に生ずるが,貯蔵される場所は主として,種子,根,茎などである。貯蔵デンプンはデンプン分子が多数集合したデンプン粒とよばれる形を取る。精製されたデンプンは白色粉末無味,無臭である。デンプンはアミロースamyloseとアミロペクチンamylopectinの二つの成分からなる。アミロースはグルコースがα‐1,4結合で重合した直鎖の分子で,分子量は数千から数十万に及ぶ。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

世界大百科事典内のデンプン(澱粉)の言及

【栄養】より

…(4)第4群 米,小麦粉,パン,めん類,いも類。デンプン質の食品が多く,主としてエネルギー源であるが,同時にビタミンB1の供給源でもある。(5)第5群 牛乳,乳製品,小魚,海藻。…

【加水分解】より

…水による分解反応を広く加水分解といい,酢酸ナトリウムのような塩(えん)の加水分解,酢酸エチルのようなエステルの加水分解,デンプンやタンパク質の加水分解など,化学反応には加水分解の例が多い。強酸と強塩基との中和によりできた塩,たとえば食塩は,水に溶かすとナトリウムイオンと塩素イオンに電離するだけであるが,酢酸ナトリウムや炭酸ナトリウムのように弱酸と強塩基からできた塩,塩化アンモニウムや硫酸アルミニウムのような強酸と弱塩基からできた塩,さらに酢酸アンモニウムのように弱酸と弱塩基からできた塩は,それを水に溶かすと加水分解が起こる。…

【米】より

…それに対して餅や赤飯にするもち米は,精米が白くて不透明である。米のデンプンはブドウ糖が鎖状に1列に並んでいるアミロースと,ブドウ糖が樹枝状に分かれた形をつくっているアミロペクチンからできており,うるち米デンプンではアミロース約20%,アミロペクチンが約80%の割合であるが,もち米デンプンではほとんどアミロペクチンだけであり,これが両者の大きな違いである。もち米のなかには精米にしたとき半透明で,うるち米と見分けにくいものがあるが,ヨード・ヨードカリ溶液で染色すると,うるち米は青藍色に,もち米は赤褐色に染まるので,簡単に区別できる。…

【消化】より

…糖質やペプチドの最終的な消化はここで行われ,この特殊な空間に出た最終消化産物は同じ細胞膜に備わった,濃度こう配に逆らって行われる強力な能動輸送によって,速やかに細胞内にとり込まれる。
[糖質の消化]
 食物中の炭水化物の大部分はデンプンであるが,デンプンにはブドウ糖がα‐1,4グルコシド結合のみで多数重合した直鎖構造のアミロースと,α‐1,4グルコシド結合のほかに数%の割でα‐1,6グルコシド結合を含む樹枝状構造のアミロペクチンの2種が混在する。唾液中のアミラーゼ(プチアリン)はα型であり,α‐1,4グルコシド結合を加水分解して低分子のデキストリンを産生し,最終的にはマルトース(麦芽糖)にまで分解する。…

【食品】より

…砂糖,米,小麦粉,パン,めん,いも類など。(6)6群 デンプンよりも効率のよいエネルギー源となるもの。油脂類,脂肪の多い食品類。…

【多糖】より

…その機能は主としてエネルギーの貯蔵と形態構築の二つであり,前者の役割をする多糖を特に貯蔵多糖と呼ぶ。貯蔵多糖の代表例はグリコーゲンデンプンイヌリンである。コンニャクの球茎の貯蔵多糖はグルコマンナン(マンナン)と呼ばれ,マンノースとグルコースからなる。…

【炭水化物】より

…デンプン,ショ糖,ブドウ糖など日常生活でもしばしば出会う化合物群であり,糖質とも呼ばれる。三大栄養素の一つ(炭水化物の栄養的側面については〈栄養〉の項目を参照)。…

※「デンプン(澱粉)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

推し

他の人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物。「推しの主演ドラマ」[補説]アイドルグループの中で最も応援しているメンバーを意味する語「推しメン」が流行したことから、多く、アイ...

推しの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android