トロール漁業(読み)トロールぎょぎょう

精選版 日本国語大辞典 「トロール漁業」の意味・読み・例文・類語

トロール‐ぎょぎょう ‥ギョゲフ【トロール漁業】

〘名〙 底引網漁業一つトロール船により大きな袋状の網を引きまわし、大陸棚海底に生息するカレイ・タラ・グチエビなどの魚類をとる。一七世紀末に帆船式トロールが、一九世紀末に汽船式トロールがヨーロッパに出現し、日本には明治三八年(一九〇五)に伝来
※東京大正博覧会出品之精華(1914)〈古林亀治郎〉五「トロール漁業は、二百噸乃至五百噸の汽船に底索網を索引せしめ、海底の魚類を漁獲する漁業にして」

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デジタル大辞泉 「トロール漁業」の意味・読み・例文・類語

トロール‐ぎょぎょう〔‐ギヨゲフ〕【トロール漁業】

トロール網機船で引き回して行う漁業。19世紀ごろ英国発達。日本では明治末期に導入

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トロール漁業」の意味・わかりやすい解説

トロール漁業
とろーるぎょぎょう

底引網漁業の一種。通常、網口を開口させるために、オッターボードと称する拡網(かくもう)板を網口の前方の左右ロープに取り付けた底引網を1艘(そう)の動力船で引き回し、底生生物を漁獲するオッタートロール漁業をさす。このほかにビームにより網口を開口させたビームトロールもあるが、日本ではビームトロールを使った漁業は行われていない。

 ヨーロッパでは1894年ごろにビームトロールからオッタートロールに転換している。日本へは1908年(明治41)にイギリスからオッタートロールが導入された。その後、ディーゼルトローラー(トロール漁船)の出現や、船内急速冷凍装置の改善、船型の大型化などと相まって遠洋漁場へと操業範囲も拡大した。第二次世界大戦後は、急速に発達した科学技術を取り入れ、魚群探知機のほかに各種の漁具監視測器、漁労機械、航海計器を有するなど近代化された。操業方式も、従来は舷(げん)側から投揚(とうよう)網をするサイドトロールであったが、1960年(昭和35)ごろからそれらの操作を船尾のスリップウェイから能率的に行うスターントローラーが増加し、漁獲能力はさらに高まった。その反面、トロール操業には底生生物の幼稚仔(ようちし)の混獲や死亡と海底生息場の改変が伴い、当初から沿岸漁業とも競合してきた。そのためトロール漁業の変遷は沿岸から沖合いへ、さらに遠洋へと外延的な新漁場の開拓とその荒廃の繰り返しでもあった。日本で行われるトロール漁業としては、東部ベーリング海とアラスカ湾を主漁場としてスケトウダラ、カレイ、メヌケを主対象とする北方トロール、東北・北海道沖で操業していた中型機船底引網漁船を北洋へ転換させた旧349トン型スターントローラーでスケトウダラを中心とする北転船、アフリカ北西岸でイカ、タコ、タイなど、アフリカ南岸でメルルーサ、アジ、タイなど、アメリカ北東部からカナダのラブラドルまでの水域でイカ、ニギスなど、ニュージーランド周辺でアジ、メルルーサ、イカ、バラクーダなど、アラビア海でモンゴウイカ、アルゼンチン・チリ沖でメルルーサ、マツイカなどをそれぞれおもな漁獲対象とする南方トロールなどがある。

[笹川康雄・三浦汀介]

『津田初二・中谷三男著『船尾トロール入門』(1981・成山堂書店)』

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百科事典マイペディア 「トロール漁業」の意味・わかりやすい解説

トロール漁業【トロールぎょぎょう】

底引網漁業の一種でトロール網を使用するもの。英国で発達し日本へは明治時代に伝来した。底面の平らな大陸棚を漁場とし,底生魚族を一時に大量捕獲する。日本のトロール漁業は東シナ海,黄海,ベーリング海が主要漁場であったが,近年では南方トロールのアフリカ近海が盛んでタイ,イカ,タコなどを漁獲する。トロール漁業は安定した漁獲をあげ得るが沿岸の小規模な漁業を圧迫することが多いため,遠洋に進出するようになった。→トロール船
→関連項目沿岸漁業底引網漁業

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トロール漁業」の意味・わかりやすい解説

トロール漁業
トロールぎょぎょう
trawling

底引網漁業の1つ。オッターボードを用い水の抵抗を利用して網口を広げるオッタートロールと,ビームを張って網口を広げるビームトロールがあるが,現在行われているのは主として前者である。 17世紀末からイギリスで発達,日本には 1908年にもたらされた。漁法の性質上,漁場は平坦な大陸棚で,第2次世界大戦前は主として東シナ海で操業されていたが,機船底引網漁業の進出などで徐々に後退,戦後は北洋,アフリカ沖,ニューファンドランド沖,南アメリカ沖,ニュージーランド沖などの大陸棚を主漁場としていた。特色としては底生魚族を漁獲対象とするために比較的に安定した漁獲をあげることができ,また表層や中層の魚群を対象とするものに比べて技術的に漁獲量をふやすことが容易な点である。しかし,現在では資源保護,漁場管理などの問題から,操業禁止区域の設定や漁網の制限などが行われている。また,200カイリ規制に伴い,公海や他国の沖合いで細々と操業せざるをえず,漁獲量は激減し,漁業経営はきびしい状況におかれている。

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世界大百科事典 第2版 「トロール漁業」の意味・わかりやすい解説

トロールぎょぎょう【トロール漁業 trawl fishery】

トロール網を用いて行われる底引網漁業。trawlというのは元来は引回し網一般をさす言葉で,トロール網,トロール漁具をさす名詞としても,トロール網を引く,トロール漁業を行うという意味の動詞としても用いられる。したがって,おもにオッターボードotter board(網口を開くための抵抗板)を用いる底引網だけをさす日本での使い方は,原意からは著しく狭いものであることに留意しておく必要がある(なお,底引網については〈底引網漁業〉の項目を参照されたい)。

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