トンネル(英語表記)tunnel

翻訳|tunnel

デジタル大辞泉 「トンネル」の意味・読み・例文・類語

トンネル(tunnel)

[名](スル)
山腹や地下などを掘り貫いた通路。鉄道・自動車道・人道や水路用。隧道ずいどう
(比喩的に)並木の枝が、両側から道の上に広がった状態。また、1のように花に囲まれた状態。「桜のトンネル」「藤の花のトンネル
(比喩的に)長く続く具合の悪い状態。「開幕5連敗のトンネルを抜ける」
野球で、野手がゴロを捕りそこない、球をまたの間を通過させて、後ろに逃がすこと。
[類語](1地下道隧道坑道地下街/(4失策エラーボーンヘッド

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精選版 日本国語大辞典 「トンネル」の意味・読み・例文・類語

トンネル

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] tunnel )
  2. 山腹・地中などを掘り抜き、その空間を利用するもの。道路・鉄道・自動車道などの交通路として用いるもののほかに、水路・鉱山トンネルなどがあり、位置する場所により、山岳・市街・海底トンネルなどに分けられる。隧道(すいどう)
    1. [初出の実例]「又其河下に至りテイムストンネルといふ珍らしき仕掛あり」(出典:条約十一国記(1867)〈福沢諭吉〉英吉利)
  3. ( 比喩的に ) 道の両側に樹木が立ち並び、枝が道の上にさし出てのような感じのする所。
    1. [初出の実例]「中禅寺湖畔の紅葉の隧道(トンネル)の中を」(出典:生(1908)〈田山花袋〉五)
  4. ( ━する ) 野球でゴロを捕球しようとする際、股(また)の間をボールが抜けていくエラーの俗称。
    1. [初出の実例]「平凡なゴロでも来るとすぐトンネルする」(出典:日本野球史(1929)〈国民新聞社運動部〉慶応早大に挑戦して敗らる)

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改訂新版 世界大百科事典 「トンネル」の意味・わかりやすい解説

トンネル
tunnel

土や岩を掘って地表下につくられた空間で,通常はほぼ水平な細長い通路状のものをいう。上方に地山(じやま)(在来地盤)を残して地中を掘り進んでつくられるものがふつうであるが,地表から溝状に掘ってその中にトンネル構造物をつくり,再び埋め戻してつくる,いわゆる開削工法によるものもトンネルに含まれる。この工法は都市内の街路下に,比較的浅い地下鉄道をつくるときなどに用いられる。今日ではトンネルの用途や様相も多様化しており,地下発電所用の大空洞,地下の自動車駐車場や各種の倉庫,地下貯油施設,あるいは地下街など,土や岩の崩落を防ぎながら地中を掘って空間をつくり,永久的に地山を支持する構造物を建設するという,トンネル技術を応用してつくられるものも,広義にトンネルの部類に入れて考えられるようになった。

 1970年にOECDは,先進国,発展途上国のいずれにおいても,トンネルと地下の利用を促進することが社会的経済的に各国ならびに世界の発展にとって望ましいとし,技術開発と国際交流促進のため各国に国内中心機関を設け,これら各国機関を総合する国際的中心組織を置くことを提唱し,国際トンネル会議を開催した。この会議では,トンネルの定義を〈最終的に地表面下に位置して使用され,何らかの方法で所定の形状寸法につくられた空洞で,内空断面積で2m2以上のもの〉としている。すなわちトンネルをかなり広い意味にとらえているが,穴の径の小さい,人の潜れないような管路などは除外している。

 日本では昔から隧道(すいどう)(慣用的には〈ずいどう〉とも読まれる)といい,鉱山では坑道,その他洞道などとも呼ばれているが,戦後の漢字制限や用語の簡素化などから,今日では公用としても日常用語としても,〈トンネル〉の名が広く用いられている。

人間とのかかわりでもっとも古いものは住居としての洞窟の利用であろう。実用的なトンネルの最初は,灌漑施設としてのカナートと思われるが,記録に残る最古のトンネルとしては,前17世紀ころ,バビロン第1王朝の首都バビロンにつくられたという水底トンネルである。ユーフラテス川の川底を横断して宮殿と対岸の神殿とを結ぶ連絡用通路トンネルで,雨季の増水時にも,参詣,礼拝ができるようにつくられたものという。このトンネルについてはバビロンの遺跡を訪れたヘロドトスが記録を残しているが,のち,ディオドロスは,延長約950m,トンネルの断面は幅4.6m,高さ3.6mの馬蹄形で,川の流路を切り替えた後に溝を掘り,その中に焼成煉瓦を天然アスファルトで接着しながら3,4層重ねとして巻き立て,土で埋め戻して完成したと推定している。

 ギリシア時代からローマ時代にかけては,建築の一部としての人工の洞窟が多くなるとともに,交通用や水路用のトンネルも多数構築され,また軍事目的にも利用された。なかでもローマ帝国時代には,〈すべての道はローマに通ず〉といわれたように,直線で敷石舗装した馬車の疾駆できる主要公道372路線,8万2000kmが整備され,これに伴って,随所にトンネルがつくられ,そのうちのいくつかは現在でも残っている。

 中世に入ると,とくに銅,鉄,石炭,岩塩などを入手するための鉱山用のトンネルが多数掘られた。この時代,掘削の手段としては人力しかなく,岩が堅くなると手のみ(鑿)で砕いて掘進し,ときにはトンネル内で火をたいて岩を熱しておき,これに急に水をかけて急冷し,岩に亀裂を入れて掘るという方法も用いられた。地山を支える支保工(支保ともいう)にはもっぱら木材が用いられ,トンネル内の照明,換気,排水のためにもさまざまなくふうがなされたことが記録に残っている。土木建築用の石材の切出しも鉱物の採掘と同様,トンネル技術の発達を促し,併せて地下通路,通水路(上下水道,灌漑など),墳墓などのトンネルもつくられた。

 日本でも,1632年(寛永9),金沢市内で兼六園と城とに通水するため,犀川上流から水路トンネルや伏せ越しと呼ばれる逆サイホンなどを用いた辰巳(たつみ)用水の工事が着手されており,66年(寛文6)には明治維新以前の日本における最大のトンネル工事であった箱根用水の工事が始まっている。また佐渡の金山が盛んに採掘されたのも,この時代である。

 18世紀も後半に至って産業革命を迎えるころには,イギリスやフランスをはじめとするヨーロッパの諸国では,内陸に舟運を通すため運河の建設が盛んに行われ,機関車の実用化は世界各地で鉄道建設のブームを巻き起こし,必然的に鉄道用としてのトンネルの需要が急増することとなった。

 トンネルの掘削に黒色火薬が用いられ出したのは17世紀の後半になってからであるが,それまでのトンネル施工能率を飛躍的に向上させ,トンネル労働の近代化を実現したのは,A.ノーベルの発明(1866)によるダイナマイトの普及と空気削岩機の実用化であった。これに先立つ1845年に,フランス,イタリア間でアルプスを横断する12.85kmのモン・スニ鉄道トンネルを建設しようという大事業が決意された。当初は50年かかっても不可能といわれていたこの事業は,57年に予定工期25年で起工にこぎつけ,13年という一般の予想を大幅に覆す短い工期で71年には開通を見ることができた。これが刺激となって,この後ヨーロッパをはじめ世界各地で,大小の鉄道トンネルが計画,実行され,各種の技術の改良が進み,ザンクト・ゴットハルト鉄道トンネル(スイス~イタリア,全長15km,工期1872-82)や,シンプロン・トンネル(19.8km)など,数々の新しい記録がつくられていった。

 モン・スニ・トンネルの開通した71年は,日本最初の鉄道が新橋~横浜間に開通した年である。これと並行して工事が進められていた大阪~神戸間は74年開業したが,この区間にある石屋川トンネル(延長61m)が,日本の近代トンネルの第1号とされている。このトンネル建設は,イギリス人技師E.モレルやJ.ダイアックの指導を受けたが,これに続く京都~大津間の建設では,665mの逢坂山トンネルを日本人独力で完成し(1880),84年には米原~敦賀間に延長1.35kmの柳ヶ瀬トンネルを完成させている。以来,国内の鉄道建設の伸長につれて,地形の険しい日本では多数のトンネルが必要となり,また火山性などの複雑かつ困難な地質条件を克服する必要から,トンネル技術の進歩が大いに促進され,日本を有数のトンネル技術国たらしめることとなった。明治,大正,昭和の前半にかけては,笹子トンネル(1896-1902年,延長4.6km),清水トンネル(1922-31年,延長9.7km),丹那トンネル(1918-34,延長7.8km),関門トンネルなどが代表的なものとされる。第2次世界大戦後は,在来鉄道の複線化やこう配改良,新線建設などにより,北陸トンネル(1957-61年,延長13.9km)や新清水トンネル(1963-67年,延長13.5km)などが生まれ,また新幹線の建設は一挙に多くの長大トンネルを生み出すこととなり,1981年には当時世界最長の大(だい)清水トンネル(延長22.2km)が完成している。さらに1988年には本州と北海道を結ぶ青函トンネル(全長53.85kmの海底トンネルで)が開通,これに匹敵するものは英仏間のドーバー海峡トンネルユーロトンネル,1994年開通)以外はない。

 一方,道路トンネルとしては,高速道路の建設に伴って大規模なトンネルが急増しつつある。笹子トンネル(4.4km),第2六甲トンネル(6.9km),恵那山トンネル(8.4km)などが建設され,関越トンネル(10.9km)も1985年に開通した。また水路用としては,水力発電,灌漑,上下水道などの事業において多数のトンネルが施工・計画されている。これらの中では,地下発電所用の大断面空洞の建設と,下水道の急速な拡張のための都市周辺の一般には軟弱な地質のところでのトンネル建設がとくに注目されよう。

 以上述べてきたように,トンネルと人間とのかかわりは,人類の登場とともに始まり,トンネルは文明の進歩とともにさまざまな利用形態をとって発達してきた。今後,生活空間が平面的なものからますます立体的なものへと拡大していくのに伴い,トンネルは人間の生活に不可欠なものとして,その利用方法もさらに多様化していくであろう。

トンネルをつくるには,事前に地形,地質の調査を行い,路線の平面形・縦断形とトンネルの断面形状や付属施設などの設計を行わなければならない。地形に関しては,既存の地形図によるほか,航空写真や地上測量によって正確な地形図を作成し,必要な基準点を設置する。地質の調査では,既存の資料の収集に始まり現地踏査,ボーリング弾性波探査により,地質の種類や強度,風化の程度,断層や破砕帯の有無,地下水位や水圧などを各項目にわたり綿密詳細に調査する。弾性波探査は,一直線上に感震器を配列し,その一端で人工地震を起こし,地中を伝搬してくる振動波を感震器で受信し,これを解析することによって地層の重なりと各層の弾性波を通す速度を求めるものであって,一般に地震波の通過速度の大小は岩の堅軟に左右されるという原理に基づいている。

 トンネルのルート選定は,これらの地形・地質の調査と関連して進められる。通常は地形図上に複数の候補路線を描き,これらを比較検討しながら最適なものを選出する方法が採られる。ルート選定と調査の作業は相互にフィードバックされ,新幹線や高速道路ならばそれらの諸元に適合し,地質が良好で工事の条件もよく,建設費も低廉となるようなルートが最終的に選定される。

 トンネルの断面形状は,道路や鉄道などの交通用にあっては,通過する車両の車両限界や路線幅,その他の規格により内空断面の概形が決められ,これにトンネル力学や施工法上の便宜を考えて決定される。水路トンネルでは,通水量などの条件が満足されるようにする。断面形状は一般には馬蹄型,円形,上半円型・側壁直型などであるが,水路トンネルでは卵型,逆卵型なども用いられる。また最近のナトム工法では,外部土圧が覆工内軸力として連続的に伝わるよう,急な曲折を避けてスムースな円弧を連続させた,卵型やおむすび型に近い形状が選ばれる。

 トンネルにはこのほか,湧水を処理するための排水設備,照明や換気のための設備,坑門コンクリート,安全保安設備などが計画され設置される。

トンネルの工法は,トンネルの種類,地形(山岳か平地か),地質(堅岩,軟岩か土や粘土か),湧水の有無などによって種々のものがある。大別して,山岳トンネル工法,シールドトンネル工法,開削工法に分類される。それぞれの工法によるトンネルを山岳トンネル,シールドトンネル,開削トンネルと呼ぶ。

山岳トンネル工法とは,地質は岩または洪積層の土を前提として,底設導坑先進上部半断面工法側壁導坑先進工法ベンチ工法(上部半断面先進工法),全断面掘削工法などの掘削方式を用いるものである。これらのうち全断面掘削とは,トンネルの完成断面(全断面)を一度に掘削してしまう方式をいい,その他は全断面を底設導坑,上部半断面部分,大背(おおぜ)(下半中央部),土平(どべら)(側壁部分)などの部分に分けて順次掘削していくものである(図のa~d)。地質が良好な場合には全断面掘削とし,地質に応じて部分掘削方式であるベンチ工法や導坑先進工法が選択される。

 これらいずれの場合でも,地山が堅硬なときは発破を用いて掘削する。すなわち,(1)削岩機による穿孔,(2)爆破(装薬および点火),(3)ずり積み,ずり出し,(4)支保工建込みの順で行われ,以下再び,(1)~(4)の作業を繰り返しながら掘進することとなる。削岩機は圧縮空気を動力とするもののほか,近年は油圧を動力とする高性能なものがよく用いられる。削岩機には先端にビットをつけた2~6m長さのロッドを取り付けて,ダイナマイト装塡用の穴をうがつ。これらの穴は,中心部の心抜き,払い(両側),冠(上部),踏え(ふまえ)(下部),助け(すけ)(補助孔)などと役割があり,基本パターンを決めて作業する。1発破では1.2m,1.5m,1.8m,2.4m,3.0mといった延長を爆破する。地質がよい場合は爆破の延長を長くできて効率がよいが,地質の悪い場合は掘越しを少なくしてすばやく支保できるよう,1発破は短くせざるを得ない。爆破にはダイナマイトかアンホ爆薬を用いる。爆薬は筒状のもの,またはスラリー状のものがある。岩の硬軟に応じて薬量を調整し,また点火の順序と爆発の時間差を,1/1000秒単位で選べるミリセコンド雷管の選定によって最適値とする。爆破直後から切羽の換気を行って次の作業に備える。爆砕された岩石(ずりと呼ぶ)はずり積機を用いて,トロッコまたはトラックに積み込んで坑外へ搬出する。ずりを取り終わったら,爆破掘削された個所の地山を支えるための支保工を施工する。支保工としては,かつては松丸太を組み立てる木製支柱式支保工が用いられたが,その後鋼アーチ式支保工に代り,さらに現在ではナトム工法が主流を占めつつある。鋼アーチ式支保工は,強度が大きくて強い土圧にも耐えられるばかりでなく,空間が広くあいているので大型の機械類を導入できるという利点があり,また木製支柱式支保工の時代には土圧によって破壊されたり,偏圧で倒壊したりして,悲惨なトンネル落盤事故となったことも多かったが,鋼アーチ式支保工となってからは,この種の災害は激減した。ナトム(NATM。new Austrian tunnelling methodの略)工法は1960年代の初めにオーストリアで開発されたものである。在来の鋼アーチ式支保工では鋼製のアーチリブの外側に木製の矢板を用いて地山を押さえていたが,このナトム工法では,木矢板に代って掘削直後の露出面に吹付けコンクリートを施工し,これによって地山を適度な剛性で支保しようとするものであり,ロックボルトを併用してトンネル周辺の地山と覆工(地山の被覆)を一体化し,これで全土圧に対抗するという理論に基づいている。従来の矢板と剛な鋼材を用いる支保方式と異なり,地山に適当な変形を許して最小の材料で土圧と均衡させており,覆工と地山の間に空隙を生じたりせず,きわめて合理的な工法である。日本でも1977年以来,在来工法と置き換えられて急速に普及した。

 トンネルの掘進に当たっては,精度のよい測量が不可欠である。トンネル施工前に地上でトンネル中心線上に中心測量を行って,トンネル掘進に伴ってこの測線をトンネル内にトランシットを用いて振り込んでいく。トンネル直上に測線を設けにくいときは,三角測量などによって相互の関係を求めておき,同様の操作でトンネル内に方向を振り込んでいく。高さについても,レベル(水準儀)を用いてあらかじめ両坑口間の高低差を測量しておき,トンネル掘進に伴い逐次トンネル内に計画高さを設定し,これに従って掘り進めて貫通させる。誤差を極少に止めるため,測量はトンネル工事中繰り返し行われる。

シールド工法とは,鋼製筒状の外殻(いわゆるシールド=盾の意)とその中に組み付けた油圧ジャッキをもったシールドマシンを用い,外側からの土圧は外殻で支持し,ジャッキでセグメント(一次覆工)を押して反力で外殻を前進させて掘進していくものである。地質が軟弱な場合,すなわち都市内の地下鉄や下水道の工事など,沖積層や砂れきなどの地質に用いられるが,山岳トンネルでも断層や砂,粘土層などの突破の際に採用されることがある。近年はシールド前面を開放しない,ブラインド型と呼ばれるもの,切羽とシールド機との間に掘削土砂を蓄え,切羽の自立を助けながら掘進する土圧バランス型,あるいは切羽との間にベントナイト泥水を満たし,これで土圧や水圧と均衡させながら掘進する泥水型など,新しい様式と機械式掘削方式を組み合わせた機種の開発が進み,いろいろな施工条件への適合が計られている。
シールド工法

開削工法はオープンカット工法,あるいはカットアンドカバー工法とも呼ばれ,地上から溝状に掘削を行い,その底にトンネル構造物を建造した後,埋戻しを行ってトンネルを建設する方法である。設置深さの浅いトンネルの場合,とくに都市内街路下に設ける地下鉄道の建設とか,山岳トンネルの坑口部などで土被り(どかぶり)(トンネル上の土の厚さ)の薄い部分に用いられる。多くの場合,掘削する両側に杭などを建て込んで土留め工を施工する必要があり,また地表の交通などを維持しながら工事を行う場合は,掘削部上面を路面覆工板で敷きつめておく必要がある。これら土留めや路面覆工の施工は,工事費のうえで大きな部分を占める。諸外国の都市内地下鉄などの工事例では,工事中は道路交通をすべて遮断して施工しているものも多いが,日本ではほとんどの場合この方式は採用しにくい。

海や川の水底にトンネルを設ける工法としては沈埋工法などがあり,また特殊なトンネルとしての立坑や斜坑では工法にも独特のものがある。特殊な施工条件を克服するための工法として,湧水が多い場合に用いられる圧気工法や,湧水を止めるための注入工法,凍結工法などもある。

 トンネルは地下にあって,一般には地震の影響を受けにくい工作物である。地表に比べて地中では地震の加速度,振幅ともかなり小さいことが知られている。しかし断層を通過しているトンネルでは,地震によりこの断層が移動し,トンネル覆工などが破壊された例もある。

トンネルにはその使用目的によって,必要な付帯設備が設けられる。トンネル本体の機能を維持,補足するために,坑口には坑門コンクリートが,坑内には湧水を排出するため水量に応じた排水路などが設けられる。鉄道トンネルでは蒸気機関車を用いる場合は別として,電気あるいはディーゼル動力の場合は照明(保守用を除く)や換気に特段の配慮はいらない。ただし,青函トンネルでは換気設備を考え,そのほか長大トンネル内での列車火災を想定して,定点停車設備を設けることとしている。道路トンネルの場合は,短いトンネルを除いて,照明と換気設備は不可欠である。照明はばい煙に対する透過率,まぶしさなどから,ナトリウム灯または蛍光灯が用いられ,またトンネル出入口部では,トンネルの長さ,内外の輝度差,設計速度などを考慮して,明るさを漸増,漸減する緩和照明を用いる。道路トンネルの換気は,交通量,車種などによって容量が異なるので,許容CO濃度,ばい煙などによる透過率を考慮して決定する。換気方式としては,完全横流式,半横流式,縦流式などの種類がある。近年建設コストの高い横流式にかえて,除煙装置併用の縦流換気方式の採用が多くなっている。さらに日本坂トンネルにおける火災事故(1979)などの経験をとり入れて,通報・警報装置,待避設備,消火設備などが設けられ,また防災センターを置いて常時監視する態勢がとられている。
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百科事典マイペディア 「トンネル」の意味・わかりやすい解説

トンネル

隧道(ずいどう)とも。山腹や海底など地下に築造された人工的通路。道路・鉄道などの交通用,運水用(カナート箱根用水)のほか下水道,ケーブル等にも使用される。削(鑿)岩機,ジャンボ等で穿孔(せんこう)しダイナマイトで爆破,ずり出しをし,コンクリート等で覆工する。またトンネル掘削機なども使用。海底や軟弱地盤ではシールド工法沈埋工法などが利用される。
→関連項目大清水トンネル

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世界大百科事典(旧版)内のトンネルの言及

【土木技術】より

… 土木技術の対象は構造物,施設,開発に大別することができる。構造物とは,橋とかトンネルのような人工の個体であり,土木施設は鉄道とか,発電施設のように,多種類の構造物が組み合わされて新たな機能を生み出すものである。開発は前2者と若干性格を異にし,施設のいろいろの組合せによって,ある地域に固有の生活・生産環境をつくり出すことである。…

※「トンネル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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