ドレスデン(読み)どれすでん(英語表記)Dresden

精選版 日本国語大辞典 「ドレスデン」の意味・読み・例文・類語

ドレスデン

(Dresden) ドイツ東部の都市エルベ川河岸にあり、一七世紀以来のドイツの政治経済の一中心で、芸術の都、音楽の都としても知られ、バロックロココ様式建造物が残る。航空機・光学機器などの工業が盛ん。

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デジタル大辞泉 「ドレスデン」の意味・読み・例文・類語

ドレスデン(Dresden)

ドイツ東部、エルベ川に沿う工業都市。もとザクセン王国の首都で、現在はザクセン州州都ツウィンガー宮殿ゼンパーオーパーザクセン州立歌劇場)、ドレスデン城三位一体大聖堂などがある。精密光学器械・ビール醸造などが盛ん。人口、行政区48万(1999)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドレスデン」の意味・わかりやすい解説

ドレスデン
どれすでん
Dresden

ドイツ中東部、ザクセン州の州都。1949~90年は旧東ドイツに属した。エルベ川に沿う標高106メートルの地にあり、人口47万7800(2000)。州の商工業、交通、教育、文化の中心地である。エルベ川の両岸に発達し、両岸は七つの橋で結ばれている。年平均気温は9℃。冬は温和で、春の訪れも南ドイツのネッカー川の谷と同じくらい早い。工業は19世紀後半におこり、第二次世界大戦後に発展し、カメラ、テレビ、X線撮影装置などの精密光学機械のほか、伝統的なたばこ、食品工業(とくにビール醸造)が立地する。第二次世界大戦で都心部は破壊されたが、戦後、古い町の特色を保存するよう努力が払われ、「アルプス北のフィレンツェ」ともよばれるようになり、ツウィンガー宮殿、教会、王城など、昔のおもかげがそのままに復旧された。ツウィンガー宮殿はドイツ文化遺産の宝庫で、宮殿内が各種の美術館、博物館となっており、ラファエッロの『システィナの聖母』はその代表的な所蔵作品である。工業総合大学、工芸大学、音楽大学、陸軍大学など高等教育機関も多い。市の北側の山地斜面にはブドウが栽培されている。またエルベ川北側には計画的道路をもつドレスデン新市があり、日本庭園もある。

[佐々木博]

歴史

マイセン辺境伯領のスラブ人集落の近くにおこり、13世紀に都市になり、15世紀に裁判権、指定市場権を獲得した。当時の人口は約4000であった。1485年の分割でアルベルト系ウェッティナー家領に属し、16世紀後半ザクセン選帝侯国の首都として栄えた。エルベ川左岸の旧市はオランダ風に石の塁壁(るいへき)と稜堡(りょうほ)で囲まれ、美術工芸の中心地となった。三十年戦争後の100年余りはバロック文化の花開く黄金時代で、ツウィンガー宮殿、アウグスト橋、グローサー・ガルテン(大公園)、右岸の新市がつくられ、人口は約5万となり、美術工芸品と陶磁器の収集で名高く「エルベ河畔のフィレンツェ」とよばれた。七年戦争、ナポレオン戦争で被害を受けたが復興し、19世紀には鉄道の交点であることから各種工業が発達した。外国人居住者が多く、河畔のテラスは「ヨーロッパのバルコニー」といわれた。1945年2月の空襲で市の中心部は壊滅した。46年ザクセン州の州都、52年以降は旧東ドイツのドレスデン県の県都、90年のドイツ再統一後、ザクセン州の州都となった。

[諸田 實]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドレスデン」の意味・わかりやすい解説

ドレスデン
Dresden

ドイツ東部,ザクセン州の州都。エルベ川沿いの河谷平野に位置する。1952年までは旧ザクセン州の州都。1952~90年ドレスデン県 (旧東ドイツ) の県都。初めスラブ人の村であったが,13世紀初頭にドイツ人によって植民集落がつくられ,1270年にマイセン辺境伯ハインリヒの居地となった。1403年に都市権を獲得。その後は,ザクセン選帝侯の居地として繁栄した。17世紀後半~18世紀に建設されたバロック様式およびロココ様式の建物が多く,一帯は 2004年世界遺産の文化遺産に登録された。しかし 2005年からエルベ川に橋をかける計画が進み,2009年,橋が景観を著しくそこねたとして登録を抹消された。第2次世界大戦前までは「エルベ河岸のフィレンツェ」と称される美しい都市であったが,大戦末期に徹底的に破壊された。そのため,ホーフ教会,クロイツ教会,ツウィンガー (旧城の付属施設,現在は博物館として使用。→ドレスデン磁器収集館) など,一部の建物は修復されたが,修復不能となったものも多い。世界的に知られた芸術収集品の多くも戦災で失われ,かつての君侯都市の栄光はいくぶん薄れたものの,伝統ある歌劇場,交響楽団などは健在。工業大学など教育機関も拡充され,依然として中央ヨーロッパにおける学問,芸術の一中心地となっている。大戦後は精密機器,光学機器,電気機器,医療機器,食品加工など各種の工業が発達し,市の縁辺に多数の工場が立地。東部ドイツの重要な工業都市の一つに数えられる。人口 51万7052(2010)。

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百科事典マイペディア 「ドレスデン」の意味・わかりやすい解説

ドレスデン

ドイツ東部,ザクセン州の州都。エルベ川の左右両岸にまたがる景勝の地。〈エルベのフィレンツェ〉と呼ばれ,ツウィンガー宮殿,カトリック宮廷聖堂をはじめバロックやロココの建築,芸術の宝庫(ドレスデン国立絵画館)であったが,1945年2月13日夜,英米空軍の大空襲で死者3万5000人以上に及ぶ大被害を受けた。現在は復興もなり,旧東独最大の工業大学があり,電子工業,精密機械工業の中心。古来,南東ヨーロッパとの交易の要路で,15世紀以後興隆した。またドイツ有数の芸術都市としても知られ,絵画では18世紀以降ドイツ・ロマン主義運動の中心の一つとなり,20世紀には〈ブリュッケ〉が結成されドイツ表現主義の中心となった。また,音楽でもドレスデン国立管弦楽団やドレスデン国立歌劇場があり,伝統を誇っている。そのすぐれた景観が評価されて2004年に世界文化遺産に登録されたものの,景観を損ねるとしてユネスコの世界遺産委員会から中止を求められていたエルベ川の架橋工事がスタートしたため,2009年にその登録が削除された。52万5105人(2012)。
→関連項目ペッペルマン

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世界大百科事典 第2版 「ドレスデン」の意味・わかりやすい解説

ドレスデン【Dresden】

ドイツ東部,ザクセン州の州都。人口47万4000(1995)。エルベ川に沿う。精密・光学機器製造や電機,機械,化学,織物工業などが行われる。16世紀以降芸術と文化の都となり,〈エルベのフィレンツェ〉と呼ばれる。19世紀に工業都市に発展し,1828年工業大学が設置された。第2次大戦末期に米英の大空襲を受けて壊滅し,3万5000とも13万5000ともいわれる死者を出した。戦後は,フラウエン教会の残骸を平和記念碑として残したほかは,ツウィンガー宮殿などの歴史的建造物や町並みが計画的に修復,再建されている。

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世界遺産情報 「ドレスデン」の解説

ドレスデン

ドレスデンはエルベ川沿いに広がるザクセン州の州都で、人口約50万です。エルベのフィレンツェと称えられた、ザクセン選帝候国の首都であったということでも分かるように、ドイツ宮廷文化の香り立つバロックの街です。数多くの美術品がヨーロッパ各地から集められ、芸術の都としても栄えました。夜ともなると、ツヴィンガー宮殿、宮廷教会などはライトアップされ、光に包まれたゼンパー・オペラ座なども幻想的な世界が広がります。また、日本を代表する文学者「森鴎外」が滞在したことでも有名です。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ドレスデン」の解説

ドレスデン
Dresden

ドイツ,ザクセン州の首都。もとザクセン王国の宮廷都市として繁栄し,その華麗なバロック建築と王室の美術品収集により「エルベ河畔のフィレンツェ」と呼ばれた。1945年2月13~14日の英米空軍の絨毯(じゅうたん)爆撃で都心は完全に破壊,6万人の犠牲者を出して「ドイツのヒロシマ」とも呼ばれる。

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