ニトロベンゼン(読み)にとろべんぜん(英語表記)nitrobenzene

精選版 日本国語大辞典 「ニトロベンゼン」の意味・読み・例文・類語

ニトロ‐ベンゼン

〘名〙 (nitrobenzene) ベンゼンニトロ化合物。化学式 C6H5NO2 無色、特異な香気のある液体。ベンゼンを硫酸硝酸混酸で処理してつくる。水には溶けにくいが大部分有機溶剤に溶ける。吸湿性が強く、水蒸気とともに蒸発する。蒸気は有毒。還元するとアニリンなどになる。アニリンの製造原料として重用されるほか染料中間体の原料、有機溶剤などに用いられる。ニトロベンゾール。ミルバン油。

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デジタル大辞泉 「ニトロベンゼン」の意味・読み・例文・類語

ニトロベンゼン(nitrobenzene)

ベンゼン硫酸硝酸・水の混合物で処理すると得られる、特異な香気がある無色の液体。有毒。アニリンの原料として重要。化学式C6H5NO2

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニトロベンゼン」の意味・わかりやすい解説

ニトロベンゼン
にとろべんぜん
nitrobenzene

芳香族ニトロ化合物の一つ。ニトロベンゾールともいう。アーモンドのような甘い香気をもつ淡黄色の液体で、水に難溶、有機溶媒可溶。過剰のベンゼンを混酸(硝酸28%、硫酸57%、水15%)と70℃以下で反応させれば得られる。毒性は高くはないが液体、蒸気ともに有毒で、貧血および神経系と肝臓の障害をおこす。ニトロベンゼンは発煙硝酸濃硫酸の混酸によってさらにニトロ化されてm(メタ)-ジニトロベンゼンを生ずる。また、ニトロベンゼンを酸性で還元すればアニリンを生じ、中性で還元すればフェニルヒドロキシルアミンを与えるので、有機合成中間体として重要な化合物である()。

[加治有恒・廣田 穰 2015年3月19日]


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化学辞典 第2版 「ニトロベンゼン」の解説

ニトロベンゼン
ニトロベンゼン
nitrobenzene

C6H5NO2(123.11).ベンゼンを混酸でニトロ化すると得られる.淡黄色の油.融点5.7 ℃,沸点210.9 ℃.1.20.1.55296.甘味のある香りをもつ.蒸気および液体はヒトに有毒で,チアノーゼを起こす.大部分の有機溶媒とまざるが,水に難溶.酸性および中性で還元すればアニリンが,アルカリ性で還元すればアゾキシベンゼン,アゾベンゼンを経てヒドラゾベンゼンが得られる.染料工業において,アニリンの原料として重要性をもつ.また,極性溶媒として,ときには穏やかな酸化剤として用いられることもある.皮膚からの吸収が速く,蒸気も毒性が強い.LD50 640 mg/kg(ラット,経口).[CAS 98-95-3]

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世界大百科事典 第2版 「ニトロベンゼン」の意味・わかりやすい解説

ニトロベンゼン【nitrobenzene】

ベンゼンを混酸(濃硫酸と濃硝酸の混合物)でニトロ化すると得られる芳香族ニトロ化合物。1834年にE.ミッチェルリヒによって初めて合成された。純粋なものは無色の液体で,独特の強い臭いがある。密度d420=1.2037,融点5.85℃,沸点211.03℃。水に難溶,大部分の有機溶媒に可溶。毒性が高いうえに皮膚から吸収されやすいので,蒸気の吸入,液体への接触のないよう注意が必要である。ニトロベンゼンを還元すると,図に示すような種々の芳香族窒素化合物を得ることができる。

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百科事典マイペディア 「ニトロベンゼン」の意味・わかりやすい解説

ニトロベンゼン

ベンゼン核のH原子一つをニトロ基に置換した形の芳香族ニトロ化合物。特有臭をもつ淡黄色の液体。融点5.85℃,沸点211.03℃。水に難溶,有機溶媒に可溶。有毒。アニリンをはじめ染料中間体の原料,溶剤として重要。ベンゼンを濃硝酸と濃硫酸の混酸でニトロ化してつくる。(図)
→関連項目工業中毒

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニトロベンゼン」の意味・わかりやすい解説

ニトロベンゼン
nitrobenzene

ベンゼンのニトロ化によって生じ,C6H5NO2 で表わされる化合物。無色の液体。沸点 210~211℃。アニリンを合成するときの原料として重要である。有機反応の溶媒としても使用される。有毒であり,しかも皮膚から吸収されやすいので,取扱いは注意を要する。

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