東南アジアの熱帯に産するトウダイグサ科の常緑亜高木。高さ2~7m。葉は互生し,長さ10cm内外,心臓形で青銅色を呈し,光沢がある。花期は不定。日本では4月あるいは9月に開花した記録がある。枝先に細長い穂状の花序が直立し,黄白色の小さな単性花(径6mm)を多数つける。雌花の花序の下部につく。果実は倒卵形の分果で,3種子を入れる。種子は長さ1.2~2cm。灰褐色の扁平な楕円体で,トウゴマの種子に似る。属名は種子の形がダニに似ているところから,ギリシア語のダニkrotōnに由来。種子からとれる巴豆油(はずゆ)は工業用として重用されるが,ラウリン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸などを含む。このほかフォルボールphorbolを含む有毒性樹脂分を含む。葉は殺虫剤あるいは湿疹などの治療薬として用いられる。材は緻密(ちみつ)で白色。スリランカ,ジャワ,中国南部,台湾などで広く栽培され,野生化している。日本ではわずかに九州南部に植栽されることがある。
ハズ属Crotonはアメリカ,アジアの熱帯に約500種あり,日本には沖縄にグミモドキC.cumingii Muell.Arg.が自生する。なお,観葉植物のクロトンはトウダイグサ科のクロトンノキ属Codiaeumの植物である。
執筆者:森田 竜義
種子を巴豆という。脂肪油を含み,他の生薬と配合して瀉下(しやげ)薬とするが,腹水がたまり腹部膨満を伴う場合,単独で用いて効がある。また,強い排膿作用があり,肺膿瘍などに他の排膿薬と併用される。さらに,おできなどに他の生薬と配合して外用し,解毒,止痛,止痒(ししよう)の効果がある。毒性タンパク質を含むので内服には注意を要する。
執筆者:新田 あや
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
トウダイグサ科(APG分類:トウダイグサ科)の常緑高木。中国南部、台湾以南の熱帯アジアに分布する。高さ6~10メートル。葉は互生し、長さ2~6センチメートルの柄をもつ。葉身は卵形または長卵円形で長さ8~12センチメートル、幅6センチメートル、先端は緩くとがり、葉柄の近くに2個の腺体(せんたい)がある。雌雄同株で、3月から5月にかけて長さ10~12センチメートルの総状花序を頂生するが、全部が雄花のものと、上部に雄花、下部に雌花をつけるものとがある。雄花は緑色で萼(がく)は5裂し、花弁5個をもつが、雌花には花弁がない。蒴果(さくか)は長円形ないし倒卵形で、三鈍角をなし、3個の種子をもつ。
果実は8月から9月にかけて成熟するが、裂開する前に採取し、取り出した種子を漢方では巴豆(はず)と称して峻下(しゅんげ)剤として使用する。巴豆を主薬とした処方では紫円(しえん)が有名である。また、種子を冷圧して得る脂肪油(30~45%)を巴豆油といい、皮膚に強い刺激を与えるので発疱(はっぽう)薬とするほか、峻下剤にも使用される。しかし、巴豆は毒性も作用も強いため、使用に際しては注意を要する。
[長沢元夫 2020年6月23日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…トウダイグサ科の低木で,変異を生じやすく,マレーシアを中心に,熱帯各地で多くの品種が栽培される。一般にクロトンcrotonと呼んでいるが,これは英名で,植物分類上のハズ属(クロトン属)Crotonとは異なる。クロトンノキ,ヘンヨウボク(変葉木)の和名がある。…
※「ハズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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